私【短編】
八重子
私
卒業式は眠かった。
いつもは短い校長先生の話が今日はやたらと長かったからだろうか。
話の内容がありふれすぎていたからだろうか。
どちらにせよ、感動とか、寂しさなんて可愛いげのある感情はまったくもってなかった。
教室の外でも中でも、泣いている女の子を見た。
ああ、彼女は思い入れがあったんだろう。
そういう風に涙を流せることが美しく思える。
特別楽しかったわけでも、悲惨だったわけでもない。
そんな私の平坦な日常は形だけはしっかりと保った【卒業】によって溶かされていった。
女子高生というものだった私は一体何者になるのだろう。
これからは自分の足で歩いて生きていかなければ。
希望なんてきらびやかな言葉とは程遠く、
不安や憂いが私を呑み込む。
だけど、人生の時間はまだあまりすぎている。
だから私は今日もまた、不安と手を繋いで歩いていくのだ。
私【短編】 八重子 @yaeko_kaku
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