第2話【アイツにお願いというよりはおねだり】
この大陸の東に位置する風見の森の中にでっかくそびえ立つ円形でドーム状の建物がカモフラージュとして鎮座しているところにアイツは存在する。
七曜神の末端でありながら唯一の男神というヤツ。
悪く言えば……その、下品でワイルドだが裏を返して良く言えば豪快で力持ちで頼れるヤツなんだ。
なっ……なに、顔が紅いだと!?
みっ、見るな……、誰がアノ男の事なんか。
「あっ、見えてきたわっ!! ほらほらながらパソコンやってないでさっさと行くわよっ!!」
本当に元気がよろしくて結構なことだ。
自慢というよりは自分で忌み嫌う能力というべきか、命の輝きというものや生命の力強さを見ると【死】という概念を司る私にはそれが羨ましく思えてしまう。
思えば結愛は小学2年生程度の小さな女の子だ、元気があり余らない訳がない。
まあ、先程いた桃子も結愛とは同じ背丈の小さな娘だが、元が元で無口で体力無しだから今回は途中でリタイアしてついては来なかったが。
私は同一の存在であっても背丈や見た目は高校生の……、普通の女子高生と何ら変わりはないと思う。
たぶんな。
「よーし、入館よっ!!」
我が物顔で大きな建物に入る。
まあ、この土地は私のものってどこぞの豚大猩々ニズムだろうか。
読めなくたって問題ない、忘れてくれ……、むしろ聞かなかったことにしてくれ。
【風見自然開発センター】というのは七刻大陸に自生する自然を研究する機関であるが、それはバックヤードの頭がカチカチの人たちの仕事。
表向きは超巨大な八百屋という認識だけでオッケーだろう。
「ここに来るとついつい野菜を買いに来た気分になるな、今日はレタスが安いから後で……って、言ったそばからだな。」
「あっ、玄弥がいたわっ!! おーい。」
「あん? おぉ、結愛と冥綾じゃねぇかよ。 ほら見てけよ……、今日はレタスが安いんだぜ?」
緑色の長髪をポニーテールとして結った男、【木曜神の元木 玄弥】だ。
それと私の目がおかしいのだろうか、彼が持ってるのはレタスじゃなくてバナナ。
思いきり矛盾したギャグか何かだろうか、正直つまらないから早速無視して本題にでも参ろうか。
「玄弥、た……大切なお話があるんだ。 ち、違っ……そういう意味の大切じゃなくて、あぁっもう知らん!!」
「冥綾大丈夫か? 顔が紅いぜ……、風邪か?」
違う、そんなんじゃない。
相変わらずお前は……、まあいい。
「えーっとね、急な用件だしお話しする場所を選ばなくて悪いんだけどさー、今度七刻に旅行客を招待したいから港の整備として男手が欲しいのよね。 お願い……、できるかしら?」
ポカーンとした表情だし無理もない、アポ無しで突然そんなことを言われたら誰だって困惑するだろうから。
「へへっ、日曜大工にはもってこいだな。 よっし、最近は暇もて余してるから協力してやっても良いぜ?」
日曜大工と日曜の港を掛け合わせたつもりだろうか、これに関しては正直上手いと思った。
「やってくれるのね!! さっすがぁ玄弥。」
なんともまぁ安請け合いだろうか、それとも結愛のカリスマに惹かれたのかどちらにせよ了承が得られたのはとても大きいしこれが無ければ始めの一歩としても何も進まないだろう。
とりあえず私も胸を撫で下ろすばかりだ。
いや、胸に関しては平均より少し小さいだけで撫で下ろせるほど平坦じゃない!!
「冥綾本当に大丈夫か? やっぱり医務室に……。」
玄弥に医務室に行こうと連れていかんばかりか腕を掴まれた。
悪くない、悪くないが……、今はプロジェクトを進めなくてはいけないから惜しいが断らせてもらうぞ。
さて、役者も揃ったことだし次の行き先はあそこだ。
やれやれ、本来私はこんなことをしている場合じゃないんだがなぁ。
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