異世界に来た少女は体力が足りません!

𣜿葉みくり

第1話


 それは突然訪れた。

 小さい頃から体が弱く入退院を繰り返していた瀬戸川せとかわ波瑠はる は、先月ついに退院は難しいと医師に宣告を受けた。

 この春二十歳になったばかりの美羽。

「いつか」と思っていた色々な希望が途絶え、病室の窓から何とは無しに外を眺めていた。



 目も眩むような光。

 気づいたら見たこともない、病室とも違うだだっ広い部屋に横たわっていた。




「天国....?」


 最初に思ったのはそれだ。

 そう思うのも無理はない。

 目を開けて広がってたのは真っ白な部屋。キラキラと光に反射した繊細なステンドグラス。そして神官様のような格好をした数人の人だったからだ。




「せ、、、成功だ!!」

「皇太子殿下へ報告だ!」



 近くにいた神官様(仮)が声を上げるとバタバタと慌ただしくなる。その姿を目で追っていた波瑠だったが、近くにいた女性数人が体を起こしてくれた。

 金色の盃に入った液体が差し出される。「飲んでください」と声を掛けられてたためゆっくりとその液体に口をつけた。

 果汁水だったようで冷たくて美味しい。

 飲み終わり差し出してくれた女性に「ありがとう」と告げるとにこりと微笑んでくれた。




 そのあとの事はあまり覚えていない。

 気が緩んだのか意識をなくしてしまったからだ。

 再び目が覚めて気づいた時は教会内にある客間のベットに横たわっていた。



 目が醒めると部屋に神官が数人やってきた。

 そして大神官という方が今の現状を教えてくれた。

 ここはシーズル王国という。

 自然に囲まれた発展途上の中規模国だ。

 今いる場所はシーズル国で最も栄えた都の大聖堂。そしてこの国の王族御用達の場所だった。


 そう、ここは日本でも地球でも宇宙でもない、いわゆる"異世界"だった。

 さらにいうならここは魔法があるファンタジックな世界。

 国の事情もあり第1王子である皇太子さまの命により、神官たちの手によって波瑠は召喚されたらしい。その役割はこの国の聖女としてあらゆる災いから救うという事だった。



 正直、「何勝手な事を言っているんだ」という気持ちだし信じられない事もたくさんある。

 しかし、電気をつけるのにも指を一振りだし、何か呪文を言うだけで冷たかったお水を渡される。

 信じるしかない。

 そして、嬉しいことが1つ。

 元の世界では常に苦しかった胸が、今はスッキリとしている。

 喘鳴ぜんめいも起こらなければ、渇いた咳をする事も目眩も起こらない。

 どうやら異世界召喚時に悪いもの全部置いてきてくれたようだ。容姿は平々凡々の日本人(痩せ型)で変わらないが、健康体である事が何よりも嬉しかった。

 だから恩も感じるから、彼らの言う「聖女さま」に頑張ってなろうと思っていた。





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