転生勇者と転移少女
真兎颯也
本編
第1話 恋する少女は後悔する
私――
「いい? 道端で倒れている人がいたとかならしょうがないけど、生死に関わりそうなこと以外には首を突っ込んじゃダメだからね!」
私の目の前では、幼馴染の少年が漫画を読んでいる。
彼は私が話しかけているにも関わらず、漫画から目を離さなかった。
「ちょっと、聞いてるの?」
「聞いてるって。てか、そんな何度も言わなくてもわかってるよ」
「私が何度言っても勇輝が一人で登校すると遅刻してくるから言ってるんじゃない!」
目の前の少年――
「別にガキじゃねーんだから、一人で登校するくらいできるって」
「そう言って、去年一人で登校した日に遅刻してきたの知ってるから」
私が睨むと、彼は「うっ」と声を漏らした。
「いや、だって、おばあさんがいっぱい荷物抱えてて大変そうだったから……」
「それ以前に遅刻ギリギリだったんでしょう? 早く起きてればそんなことも無かったのよ」
「……ごもっともで」
「私、明日は委員会のあいさつ運動に参加しなくちゃいけないの。だから、あんた一人で登校しなくちゃいけないのよ」
私が所属する中学校の委員会には、あいさつ運動という活動があった。
他の生徒が来るよりも早く登校し、玄関先で登校してきた子達に挨拶するというものだ。
勇輝は起きるのがそこまで遅いわけではないのだけど、どうも人が困っているのを見ると手を貸したくなるらしい。
そのおかげで、私が引っ張ってでも連れていかないと色んなことに首を突っ込んでいき、結果的に遅刻してしまうのだ。
「あんたが早く起きてくれるなら話は別だけど……」
「いや、無理。俺、あんまり朝早いと午後の授業で絶対寝るもん」
「そんな堂々と言うセリフじゃないでしょ」
私は長いため息をついた。
「じゃあ、一人で遅刻しないで登校しなさいよ?」
「わーってるって。別に毎朝助けを求める人がいるわけじゃないし、遅刻なんてしねーよ」
そう言って、彼はまた漫画を読み始めた。
私の忠告を聞いてくれているのかよくわからない態度だけど、これはいつもの事だった。
だから、私は「遅刻しないでよ」と念を押すと、そのまま自宅へと帰った。
――今思えば、この時に早く起きて一緒に登校して欲しいと懇願すれば良かった。
何だかんだ押しに弱い彼なら、約束してくれただろうし、ちゃんとそれを守ってくれたはずだ。
でも、結果的にそうはならず、私は次の日、彼を置いて先に登校した。
彼が事故にあったと聞いたのは、あいさつ運動を終えた後のホームルームでのことだった。
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