かつてキミと見上げたソラを征服したり

珠響夢色

-1.前置き

 君のソラは何色だ?




 悪意の種がひっそりと起床するこの国の夜。

 その喧騒が届かないほどに分厚い壁の中、無機質な独房で一人、彼はペンを持っていた。



 この文章が世に出ている頃には、私はもう死んでいるのだろう──。

 なんていう、ありふれた書き出しで始めることに対して、これまでことごとく世界に対して反抗を続けていた私は、とてもやるせない気持ちになるが、しかしそれでも許してほしい。

 結局これはありふれた反逆テロリズムでしかなく、所詮は革命シンギュラリティではなかったということなのだから──。

 後悔はしていない、

 反省はしていない、

 満足もしていない、

 私のしてきたことは何一つとして間違ってはいなかったのだ。だけど、失敗した。何が悪かったのか依然として分からないままだけれど、世界が悪いということを言う気にもなれやしない。 悪とは何だったのか。

 何も悪くはないなら、正義とは何をすればよいのだろうか。

 確かに腐敗したこの国の実情を見て、何かが悪いと、何かがいけないのだと、漠然とした強い感情に動かされてきた。

 この国は悪い。

 それは確かな事だったはずなのに、まったくどうして、何が悪いのだろうか? 原因は、首謀者は、悪意の源となったきっかけはどこにあった。

 何を変えればよいのだろうか? あるいはよかったのだろうか。こうして強制的に白紙の時間を与えられてもなお、その問いの答えは分からない。やはり私ごときの頭には到底解けない問題なのだろう。彼女なら、あるいは彼女なら。それに比べて私には何もなかった。何もないなりに不格好な信念を突き進めて来た結果がこれだ。

 私は何のためにこと成してきたのか、また成そうとしてきたのか、地図がなくて方位磁針だけを持っているような気分だ。その方位磁針すらも、私は最後に失ったようなものだろうが──。

 ここに書き留めておくのはそんな私の人生。

 もうすぐ終わる私の人生。

 私の正義の物語──。

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