第2話

二度目


その日からは、床が落ちるかもしれないという恐怖をすっかり忘れぐっすり眠ることができるようになった。

でも、夜中に起きて羽織のほうを見ると時々だったが泣いているときがあった。初めてそれを目にした日は驚いて固まってしまった。朝になってから、僕が来ていたということを告げると羽織はそういうt機は一緒にいてほしいそうだ。だから、声をかけてほしいといわれ今では週一程度にこの夜がやってくるようになっていた。


ある日のことだった。羽織も安定しているようで僕もぐっすり眠っている夜だった。ガタッと音がした。そこまで気にならなかったので、そのまま寝ることにした。

その日の朝だった。いつも隣で寝ているはずの羽織がいない。羽織は僕より起きるのが絶対に遅い。たまたまなのかと、家じゅうを探し回ったがいなかった。はっと思い出し、原因はすぐに分かった。夜の「ガタッ」という音だ。どうしてあの時無視したのだろうと深く後悔した。試しに外に出て、ポストを開けると回覧板が入っていた。何もないのかと、期待こそしていなかったが、がっくりした。回覧板を持って家に戻ろうとしたとき回覧板の間から何か紙が落ちた。そこには印刷された美しい字でこう書いてあった。「羽織はあの路地の奥の小屋にいる」と。僕は気が気じゃなかった。お金とナイフを持った。家を出た。電車に飛び乗った。街を走り抜けた。路地に入った。

そこに羽織はいなかった。紙が一枚置いてあって、「奥にいる」とだけ。一瞬紙が、哂ったようにも見えたーーーーーー

僕はそっと奥へ歩いて行った。

奥へ行くと、恨んでも恨みきれないあいつらがいた。それに加えて、もっと質の悪そうなやつもいた。

「よぉ」

「……」

僕は何も言わないが、怒りで頭がおかしくなりそうだった。

「あれぇ?女の子だから、暗いところ怖いんでちゅか?w」

「……チッ」

「ああん?表出んのかあ??」

今度は横にいた、僕の知らない奴が突っかかってきた。

「別にいいけど…」

普段なら絶対逃げるのに、何故なんだと、自問自答を繰り返す。

「羽織は」

「じゃぁ~その子の頭を地面につけさせれば返してあげる」

ああ、と言い捨て路地の出口辺りまで連れてこさされた。ガラの悪いやつは言い放った。

「お嬢ちゃん、手加減しないからねえ」

「……」

彼は、僕に殴りかかってきた。ずっと、身体が小さいのでちょこまかと逃げ回っていたが流石に体力も悲鳴をあげ始めた頃だった。鞄で、彼を殴り金具が鼻に当たって隙が生まれた時のチャンスを捉えた、と思い鞄の中のナイフを出さうとした。上手く、鞄があかない、そこに後ろから足音が聞こえてきた。

「あれ、何取ろうとしてるのかなあ?」

そういった時、全身から何かが抜け落ちた感覚があった。それと同時に、痛みが駆け巡り倒れた。

「ざまあねえな、お前は生きてても意味ないんだよ。はっ」

倒れた衝撃で鞄は開き、朦朧とする意識の中、必死にナイフを探した。見つけたと思えば、

「さてと、こっちもお片付けね」

羽織に向かって、だった。僕は、残りの力を振り絞った。女の底力と言ったところだろうか、彼らの足にナイフを刺した。

「うわっ、痛っ。何すんだよてめえ」

「っ……羽織に手ぇだすなっ……うっ」

「チッ、これでも飲んどけ」

といいながら、羽織に何かをのました。

「何、飲ましてんだよ……っ」

「す、い、み、ん、や、く」

そう言った、彼とその仲間は消えていった。

「はおりぃ、ごめんねえ……ほんうに、ごめんねえ…家までくれたのにぃ、ぼくもう死んじゃうなあ……」

泣きながら呟いて這いずりで羽織の傍に行った。寝転んでいた羽織に抱きつくと深い眠りの沼に落ちていった。


ザアア

「うわ、雨降ってきたー」

「折りたたみ傘持ってる?」

女子高生の2人組。

「先輩、通り雨っすね」

「コンビニよろう」

サラリーマンの先輩と後輩。

「きゃああああああああああ」

一人の女性が悲鳴を上げた。

「大丈夫ですか?」

「わ、私は、でもこれ血ですよね…。私看護師なので、分かります。」

「奥から、雨で流れてきたんですかね」

悲鳴によって、数人の人が集まってきた。

「奥、行ってみましょうか」

「ええ」

大人達は、路地裏に入った。そこには普通信じられない状況があった。若い男女が抱き合っていて、しかも女の方は血を流しているだなんてー

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