ボクトワタシ
MW睦月
第1話
普通の人」と「普通ではない人」
この世の中の人間は大きく二つに分けられる。それは、生活環境がいい意味でも、悪い意味ででも、「普通な人」と、「普通でない人」だ。僕はどちらかというと、普通ではない。かといっても、親は普通に自分を養ってくれているし、これといった事件もない。強いて文句をいうならば、姉が遊んでばかりいることぐらいである。けれど、此の家が少し普通でない原因はおそらく僕にあるのだろう。だって僕は女のだから。
僕は、小学校から高校までいじめを受け、今現在大学ではいじめとまではいかないが、まわりから疎外されている。女子にはとても嫌がられ、男子には気持ち悪いと言われ続ける。別に、僕が「普通」であれば、こんなことは起こらなかったのだろう。なぜなら、特に目立つこともなく、特技と言われると絵が上手いとしか言いようがなかった。その絵も他人に見せることもない。でも、いじめが起こってしまうのは、さっきも言ったように、僕が女だから。僕が性同一性障害だからである。
いじめられていたと言っても友達がゼロ人だったわけではない。一人だけいた。小さい頃からの親友。夜神月(やがみづき) 羽織。神社の息子(ぼくも神社の息子であって僕の家、日神(ひがみ)家ととても仲がいい)。こいつに文句を言うとしたら、イケメンなところぐらいである。羽織は人気者。一緒に僕がいても、まわりはちらちらと、僕のことを見ながら羽織と話す。羽織は男であるが、ほかの男子とは違って僕のことを「普通」な男子としてみてくれている。
高校生と現在
ここで、高校生の時の話をしよう。その頃には羽織以外に少し仲の良かった人がいる。そいつは女子だった。成瀬 彩良(あや)。最初は、周りを気にしてなのかあまり話しかけてこなかった。けれど、ある日羽織と一緒に学食を食べているとこういった。
「ねぇ、風斗くんとなり座ってもいい?」
正直とても驚いた。なぜなら、女子たちは僕のことを毛嫌いすることが多いので、彼女もそう同じだと思い込んでいた。
「えっ、あっうん、いいよっ」
羽織以外の人と話すことが久しぶりすぎて、うまく返事ができなかった。羽織に目を向けると、「よかったな」という表情を向けてきた。女子だったけれど、羽織以外にも自分の存在を認めてくれる人がいてくれる、それがただただ嬉しかった。それから、僕と羽織、そして成瀬さんの三人でよく行動を共にすることが多くなっていた。それの影響があったのか、少しずつだったがクラスになじめるようになていった。楽しくなったきたと思ったのもつかの間、すぐさま嵐がやってくる。年度の終わり二月、感謝の気持ちを込めていつも渡している、チョコレート。毎年、風斗にしかあげていなかったが今年は成瀬さんにもあげることにしていた。クラスの人たちとかかわるきっかけを作ってくれたからだ。決して恋愛感情があったわけではない。朝、登校して先に来ていた羽織にすぐさま渡した。周りに人はいなかったので何も起こらなかった。しかし、成瀬さんに渡したときに事件が起こった。
「おはよう、成瀬さん。」
「あ、おはよ」😊
「いつもの感謝を込めて、どうぞ」
「義理チョコ?ありがとー」
「おいおい、義理チョコじゃないだろ」
所謂、クラス荒らしが余計なことを言ってくる。
「マジでー、うわーきっも、女が女好きなるとかないわー」
その取り巻きが無駄に乗る。どうしてそんなことをするのか。こういうことがあったら必ず、羽織が助けてくれる。けれど、今ここに羽織はいなかった。恐らく、他クラスに行っているのだろう。
「えっ、風斗君、私のこと好きだったの?」
そんなわけがない、と言おうとした時だった。あたりを見渡してから彼女は言い放つ
「そういうの迷惑だからやめてくんない?性別もよくわかんない野郎と一緒になんか居たくもないんですけど。」
成瀬さんは覚醒したかのように人を変えた。
「じゃあ…今迄のは何?」
周りがこそこそとなにかを言っているのが聞こえてくる。「口答えすんなし」と言っているのが。そんなことも気にせず彼女は続ける。
「はあ? いままでのだって?誰が好き好んでお前と話すんだよ、目的はお前なんかじゃねえよ、羽織だよ。ガードの堅い羽織に近づくためにはお前を利用するのが一番早いってな。」
ぼくは、成瀬さんたちに囲まれ殴られそうになった時ドアが開く。
ガラガラガラ
「なにやってんの…成瀬ちゃん…」
羽織が入ってきて僕に駆け寄る。倒された時の痛みでうまく建てないを僕を持ち上げると、こういった。
「よくわかんないけど、風斗を傷つける奴はいくら成瀬でも許さない。」
僕には、成瀬さんの顔した見えなかったけれどその反応を見て、羽織がどれだけ怖い顔をしているか分かった気がした。廊下に出ると、なぜか羽織にお姫様抱っこをっされ動揺したが、羽織の体温に安心感を持ち、小さな子狐のように眠りに落ちていった。
起きると夕方で、横には羽織がいた。が、羽織はベットの横で寝ていた。部屋から見て、ここが保健室だと行うことがわかり、羽織に布団をかけようとすると羽織が起きてきた。
「おはよう、羽織ありがとう。」
笑顔で伝えると、羽織も笑顔で応えてくれた。それから事の一部始終を話した。話しているうちに、自分の運命に耐え切れず、泣いてしまったが、羽織は優しく抱きしめてこう言ってくれた。
「誰も信じなくていいよ、俺以外は。おれはずっと、死ぬまで一生おまえの見方だよ、風斗。」
僕はその日をきっかけに、羽織以外の人とは必要最低限以上の会話をしなくなった。クラスの奴らの誤解を解く気にもなれなかったので、何も言わずにそういうことだ、としておいた。なるせさんの周りの人たちやクラス荒らしの人たち以外は割と普通に接してくれるようになり、別に不自由はなかった。けれど、成瀬さん一味にいじめられてしまうという現実には逆らえなかった。こうして時は過ぎていくのだ。
今
現在の大学ではさすがに、いじめは起こらない。少しは大人であることや他生の許容範囲の拡大に原因があるのかもしれない。友を作らず、羽織と過ごす日々。普通の人達よりは不自由でも、幸せだ。でも、僕は知っている。幸せを感じた時こそ、絶望がやってくるのだろうと。いまの僕にとっての絶望とは、それは羽織がいなくなることだ。羽織以外に頼れる人はいない。羽織が消えてしまっては死んだも同然。羽織が消えてしまわないかそれを恐れながら暮らすことはできないものか…。
大学
秋、大学にも慣れ、羽織と休み時間に喋っていた時のことだった。羽織が連れていかれる。
「おーい、羽織~ちょっと来てー」
「えー、やだし」
羽織は、覗くようにチラッと僕を見てから言う。
「今、風斗と休み時間を満喫してるの。邪魔しないでー。」
「おい、そんなこと言うなよ、」
さっきと雰囲気をずいぶんと変え、羽織を連れて行こうとする。が、羽織は「いやだ」と拒む。
「はあ?、来いよ」
羽織の腕を強くつかみ、連れていく。僕は唖然としてしまった、そして察するのだった。また自分がらみのことで羽織が連れていかれたしまったのだと。
結局、休み時間内に羽織は帰ってこなかったので、メールをし、その場を去った。その日からなるべく羽織に迷惑をかけるまいと、羽織と一緒にいる時間を減らし、自然と避けるようになってしまった。いつもいっしょにいてくれる友達だから。
羽織side
風斗と一緒にいたら無理矢理の連行。最初は普通に話しかけてきたのだが、俺が断ったら物凄い目で風斗を見た。それを見て気がついたのだ。嗚呼、こいつもだ。風斗を疎外している。嫌っているのだと、容姿のおかげもあってか、クラスでそこそこ人気者の俺、友達は多いが1番は風斗。あいつは俺がいなければとっくに壊れていたのだろう。けれども、俺が人気なせいでよく、こういう目に遭うが、俺が断れば皆諦める。けれど明らかに雰囲気が違い、危ない。とりあえずついて行く。建物の陰に連れていかれるかな。とても冷たく肌に刺さる風が吹いた後だった。
「何で、女とずっと一緒にいるのかよ、気持ちわりぃ。彼女かよwwwwwwwwww」
「あいつは男だ」
「じゃあホモかww」
こんなことなんて今まで、山ほどあった。慣れていたのに何故かいつも、言われる時とは違う気がした。
「人気者で優しくていいこちゃんは、性別もよくわかんないやつと仲良くやってますー。だから褒めてーーーってか?キモイ、人気者は嫌われちゃいけないんだよ。俺の友達がな、言ってたんだよ」
こいつ最悪だ。
「「羽織は風斗ちゃんwが1番で遊んでくれない、まじウザイw」ってな、もう一度言おうか人気者は嫌われちゃいけないんだよ。俺の大事なお友達と遊んでくれなきゃ、どうなるんだろうね」
言われなくてもわかる。遊びという名の金づる。そして、断れば風斗へ被害が行く。俺は断るという意志がある。けれど、風斗は錆びれてしまったのだから。
俺はこう言った。
「風斗に何もするな。俺をいじめろ。俺はいくら避けられたって構わない。」
「wwwwwwwwwwwwwwwwwwあっそ」
どうなるか
「いいわ、じゃ皆にそういうふうに通しとくわww学年一の人気者がどん底に落ちる様を見ますかwwwwwwwwwwwww」
よし、これでいいのだ。
避けて避けあって
僕は、数週間羽織を避けた。けれど流石に避け続けるのも良くないのかと、羽織に話しかけよとしたが逃げられてしまった。たまたまだと思い、後日近づいてみたが、本当に上手くかわされてしまった。僕は気がついた。「避けられている」と、嗚呼これはもう嫌になったのか。大学まで、付きまとわれてどれだけ周りから変な目で見られていたかに気がついたのか。
ただ、羽織という強靭なナイトが居なくなったのだから、僕はいじめられるのかと覚悟した。けれど、いつまで経ってもいじめられることは無かった。さらに、女子の一部の人からは話しかけられるようになったので少しづつだったが、羽織のいない生活になれはじめていたのだった。
羽織side
あの呼び出された日の後、心の痛みも感じながら避けていた。最初の数週間は、話しかけられることがなかったので疑問を持ちながらもよかったと思っていた。いじめの方は、かなり酷かった。暴言や避けるのは日常。それを、ものすごい人数でやってきた。そして奴らの気まぐれで、金づるにされ、気に食わないものを買ってくれば投げ捨てられ、ぐちゃぐちゃな無残な姿にされる。そして、俺もぐちゃぐちゃにされて行った。それでも、よかった。君が生きているなそれで良かった。でも、本当は2人で逃げ出したかった。叶わない夢を掲げたまま、殴られ、蹴られ、打たれ、放り投げられ、捨てられる。そして、暗い裏路地に置いていかれた。
見つけた。
羽織と一緒に歩かないようになってから、4ヶ月がたった頃に社会に出てけるようにバイトをすることにした。面接でしっかりせつめいしたので、合格することが出来た。僕は夜型なので、夜にパートをいれてもらった。それの方が人と会わないで済むからというのも半分くらい。
ある日のことだった。バイトの帰り道、街を歩いていると路地から脚が見えた。驚いて路地に入ってみるとそこには、ボロボロの羽織が居た。
「は、おり……!だっ大丈夫?」
「ん、……って風斗!?なんでここにっ」
羽織はあたりをキョロキョロしてから、近くのカラオケに入った。
「羽織っどうしたの?、変なやつに絡まれたのか?」
「えっと、その……」
何かを迷った様子だった。けれど、何かを決めたのか、話し出した。
「ちょっと前に、俺よびたされたでしょ。」
それから、今に至るまでを話してくれた。
「僕の為……」
「ああ」
「早く言ってくれよ。」
「ごめん、本当にごめんなさい…」
随分見ていなかった羽織の涙を見た。静かに、ただ泣いていた。僕はそっと羽織を抱きしめ、一緒に泣いた。それは、羽織の心が初めて、嘆いてたように見えた。
そのあと、そこら辺の安いビジネスホテルに泊まり、一夜を明かした。そして僕らは決意した。
強い意志
2人で迎えあた朝は、昨日の事がまるで夢とか、嘘っぱちとか、ドッキリだったのかというくらい快晴で、小鳥達の可愛い囀りも聞こえてきた。とりあえず、朝の身支度をしチェックアウトをした。外に出ると、快晴とは裏腹に、とても静かだった。鳥の鳴き声、車の音、風の囁き。周りの音が何よりも鮮明に僕の心に残される。僕達は、一部の人しか知らない、穴場スポットのような朝から開いている「ばいどず」というミニカフェに入った。僕らは、いじめっ子から逃げるためにここによく逃げ込んで、ご飯をもらっていた。だから、てんちょーとも仲がいい。(普段はますたぁと言っている)ちなみに、「ばいどず」というのは、ドイツ語で、「共に」という意味だそうだ。
カランカラ-ン
「いらっしゃい、羽織ちゃんに、風斗ちゃんじゃなぁい」
「お久しぶりです。ますたぁ、朝早くにすみません…、ちょっと色々あって、昨日夕飯食べてないんですよ。」
「あらあら、それはダメじゃない。じゃあ、サービスね、久しぶりの常連様のご来店だし、(´―`*)うふ」
これを断ると、男の作った料理は食べたくないのかって落ち込むので、何時も有難く頂いてしまっている。本当はお代ぐらい払いたいのだが。
「最近あってなかったけど、相も変わらずオネェだね、」
ますたぁはオネェだけどすごくいい人。
「ん、誰がオネェですって?ふ う と ちゃ ん ♡ ?」
「いやいや、ますたぁは、れっきとした乙女ですよ!(;^ω^)」
「ちょっと待っててね、今作ってくるから」
「「はーーい」」
「羽織、本当にいいの?」
「ああ、母さん達が心配しないように、ますたぁに頼もう。俺達は普通に楽しく大学に行っていますってさ」
「それはいいんだけどさ、お金とかどうするの」
「2人で店でも出すかっニカッ」
「それもいいねー、あはは」
昨日のことは嘘なのかとまたもや思ってしまうくらい、羽織は元気に笑う。
「羽織……」
「どした。ここにいたいか?なら俺もここに残るぞ」
「いや、それはここには居たくないなあ。でも、羽織僕のために無理しなくていいよ。」
「心配すんなや、無理なんてしてねえからさ」
其の笑った顔は、本心だと僕にはわかった。
しばらくして、ますたあが戻ってきた。
「あらあら、仲良く何を話しているのかしら。私も混ぜて混ぜて~」
「それより先に、ご飯を」
「あ〜そうね、はい」
「ありがとうございます。」
僕達は美味しい、ロールキャベツに手をつけ食べていた。が、本来ここに来た意味を忘れてはいなかった。
「ところでますたあ~」
「なあに?」
「俺達、明日からここを離れる。だから、母さん達に大学に行ってるよーって嘘言っといてくれないか、聞かれた時だけでいいから。大学のうちだけ、卒業する年になったら、本当の事言ってもいいから。」
ますたあは、どうして?とかそうねえとか、色々相槌を打つタイプの人だけれど、今は、何も言わずに聞いてくれた。
「そうねえ…いいんだけれど、どこに行くの?」
「遠く、ごめん詳しくは言えないや」
「わかったわ、任せなさい☆」
「「ありがとうございます!」」
ますたあに深々とお礼をしてから、ささっとご飯を食べ店を出た。出発は明日。2人は急いで家に帰り、荷物をまとめた。
出
次の日、日の出と共に二人は歩き出す。最寄りで乗ると、知り合いに会うかもしれない。歩いて、3つ先の駅から電車に乗った。僕らにお金はあった。バイトやら、貯金やら、なんやら。けれども、ずっとそれだけで暮らせるわけはない。だから稼がなければ…。ちなみに羽織の家は裕福だ。神社の中でも上の上。物凄い金持ち。だから、自分の土地をもう持っていた。まあ、いずれ別荘でも立てろ、と言っているようなかんじだ。取り敢えずそこに行くことにした。
着
出発から2時間、他愛のない話をしているうちに舞台は
静岡へと向かう。羽織の別荘は、静岡の小さな港町。人も少ないし、行ったこともないそうだ。
駅につき、新天地に足をつけると、ふわっと潮の匂いが優しく僕らを出迎えてくれる。本当に小さな、町だ。町というより、村……?
駅からバスに揺られて30分、そこから10分歩く。これが最短距離。そこには、1階建ての、ものすごくボロい、本当にぼろい、和式の家があった。ドアは、力ず良く開けないとあかない。かといって、強すぎるよ壊れそうだ。中は、木の優しい香りに包まれていたけれど、今にも壊れそう。
僕らは取り敢えず、近所へとの挨拶へ行った。
まずはお隣。
「どうも、今日隣の家に引っ越してきた、神々と夜神月です。どうぞよろしくお願いします。」
と、羽織が挨拶し僕が菓子を渡した。
「あらぁ、珍しいわねえこんな若い子がこの家の持ち主で、ここに住むなんて。みんな出ていっちゃうばっかだったのよ。嬉しいわ、私は、近藤よ。そこの青果店やってるのよろしくねヽ(*´∀`)ノ」
「そうなんですか~こちらこそよろしくお願いします!」
と羽織が元気に応えた。
「よ、よろしくお願いします…」
僕は、かなりの人見知りなので、羽織のようには応えられない。
「そっちの子は彼女?」
「あ、えっと……その、違います」
「ああ~、近藤さん…こいつは、男なんです。」
「え?」
近藤さんはとても驚いていた。
「性同一性障がい、なんです…」
「ああ、そういう事ね。心は男の子なのね、間違ってごめんなさいね。」
近藤さんは、にっこりと笑っていた。僕を嫌がる素振りなんて一つもなかった。
「ありがとうございますっ」
僕は反射的に大きな声を出してしまった。
「あらら、元気な子なのね。みんなに今連絡するわね、2人の歓迎会しなくちゃ!!!!!」
「えっありがとうございます(*`∀´*)」
ぱあてぃ
その日の夜、集まれる人を集めていただきボクらの歓迎会をしてもらった。皆さんの話によると、この村は97人しか居ないそうだ。駅のある街と合わせても、500人に行くか行かないかぐらいらしい。今日、集まったのは、43人だ。半分くらいの人が集まったという事だ。
歓迎会というより、街の寄り合い会で新しく来た人を紹介する。という形にしか見えないと、始まってから思う。女物の服が好きで、着ているせいか本当に女のように思われる。少し大変だったが、いる人に挨拶と、菓子折りを渡し、自分が男であることを説明した。
暮らす
歓迎会が終わって、新しい朝を迎える。
「おはよー、羽織」
「うん。ところで……この家ミシミシ言いすぎじゃね?」
「確かに……(´・ω・`)」
「\( •̀ω•́ )/直そう!」
「えっっっっっっ?」
「どうせ、やることもないんだし、さ」
いきなりの提案で、なにもリアクションを取れない。
だが、我ながら名案を思いついた。
「なら、本屋兼雑貨屋やろ?」
「ちょと待て待て…どうしてそうなる」
驚き。という顔をされた。
「だって、僕、小説書くの好きだし。羽織だって本好きだろ?」
僕と羽織は本好き。物凄い、ね。だから、本を売りたいし、書きたい。
「確かに……何もしないのも癪だし、やるかあー」
こんなにあっさりと決まっていいのか、展開が早すぎるのでないかと思った。早めに言えば皆さんに迷惑をかけることなんてなかったのだろうがこの時の僕はそれを知る由もなかった。
開始
曖昧な気待ちを、タイルとタイルの間に挟んだまま、日々は過ぎていった。取り敢えず、持ち前の画力や発想力を駆使して家を建て替える。ボロ屋では飯を食うのも、寝るのもままならなかった。お隣に事情を話して、リフォームの時は泊めさせてもらうということにした。
僕らは隣町のホームセンターに行って必要な道具を揃えた。今まで、見てきた地獄の世界と変わりすぎて、状況にまだ追いつけなかった。人を疑いすぎるのは良くないが、今までの事があって疑心暗鬼にはなってしまうものだ。羽織の早すぎる行動を見届けたまま、買い物は済んでいく。
買い物がおわって、僕らはボロ屋に帰った。
リフォームなんてよくわからなかったけど、ネットやら本やらいろんな物で調べながらやると、割りとサクサク進んだ。
羽織とリフォームを始めて2週間。ようやく、家はボロ家から古民家へと昇格した。
「まぁまぁ、住めるぐらいにはなったな」
「うん」
疲れたけれど、やることも特にないなか、羽織と二人で何かをやるというのは楽しい限りであった。
「それにしても滅茶苦茶疲れたね」
「まあな、お前が俺を見つけて町を出てこっちに来て家を直して、いろいろありすぎだよなぁ」
僕は今まで聞かずにいたあの事を聞けるチャンスが来たと思った。
「ねえ、こっちに来てからさなんでこんなに急いで家の修理に取り掛かったの?いくらやることないからってこんなに急ぐことだったの?」
ずっと気になっていたせいか、一気に色んなことを盛り込んでいってしまった。
「あ…えっと、い、嫌だったのか?」
羽織が困った顔をした。それを見て、僕は我に返った。
「ごめん、いろいろ言いすぎた。でも、嫌じゃないよ。むしろ楽しかったし」
「それならよかった…」
でもやはり気になった。
「あの、じゃあなんでこんなに急いだの?」
「いや、まだあいつらに見張られてるかもしれないと思うと怖くて何かをしていないと不安だったからさ…」
笑って見せていた、羽織だがその肩は震えていたあぁ…。僕のせいで羽織は一生治らないかもしれない心の傷を負ってしまったのか。とても申し訳ないという気持ちがこみあげて、羽織を直視できなかった。
「別にお前のせいじゃないって」
「っ…。ごめん」
「俺が勝手にやったことなんだからさ、そんなに気に病まないでくれ。」
そういわれて、顔を上げると羽織は小さく微笑んでいた。
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