大阪でぼったくりガールズバーに行った話。

 その日は、友人のTKさんと大阪ミナミで飲んでいた。二軒目は友人の十一十三(といちじゅうぞう)の店「VEGA」に行く約束になっていたので、宗右衛門町を目指して歩いていた。


 途中、キャッチ(客引き行為)に合う。確かに美しい女性だったが、条例で禁止されている以上に、キャッチに付いて行って良いことがあろうはずがない。


 TKさん「ジョージ、行こうや!ガールズバー」


 私「十三の店に行こうよ。胡散臭さしか感じないし」


 TKさん「ちょっとだけ行こうや。大丈夫大丈夫、任せてやっ」


 私「わかりましたよ」


 程なくして美人キャッチの案内でそのガールズバーに到着。道路に面した清潔な店内に客は疎ら。楽しそうな雰囲気は一切感じられない。私は、終始違和感しか覚えなかった。


 隣で一人飲む気の弱そうな青年、言われるがままに酒を振舞っている。こちらのTKさんもカウンター内の無愛想な女性に応じて快く酒を振舞う。


 しかし、冷静な私は女性用に注文したカクテルにアルコールを入れることもなく、ビールも足元のバケツに捨てているように確認出来た。


 私「TKさん、この店絶対ヤバいですよ。出ましょう」


 TKさん「大丈夫やから任せときって」


 全く楽しくない時間が30~40分過ぎて、TKさんが会計を頼んだ。


 出口付近で、女性店員から「8万円になります」と告げられる。


 私はもはや、俯瞰でしか状況を見られない。悪い癖かもしれないが、状況が悪化する程に何やら他人事に感じてしまうのだ。冷静に俯瞰、そして、他人事。


 TKさん「アホかっ!ガールズバー知っとんのかっ?何やその値段っ!責任者呼んで来いやっ!」


 私は瞬時に、屈強な男がやって来るだろうと思ったが、現れたのは貧弱な男だった。それにより、TKさんは過熱した。


 TKさん「おいっ、お前!ガールズバーの標準的な値段設定わかっとんのかっ!」と攻め寄る。


 貧弱な男は、明らかにぼったくり店だが、弱々しく反論する。


 TKさん「これでも払い過ぎやわっ!ジョージ、行くでっ」と言い放ち、1万円札を置いて店を出た。


 十三の店に向かう道すがら、TKさんは私に言った。


 TKさん「ジョージ、5千円なっ!」


 払ったけど・・・、割に合わない割り勘。


 後日、関西の人気漫才コンビ、メッセンジャーの黒田有さんが暴力事件を起こした店と知る。我々の後の話だ。


 隣にいた気の弱そうな青年は10万円単位でイカれただろうなと思いを馳せる。10年以上前の話。(2019.5.4)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る