第2章 人物紹介&用語解説
■人物紹介
●魔女
・
加賀見市立加賀見高等学校の三年生。十八歳。金盛 正の姉。
アリスたち三人とは中学校からの付き合い。
竹を割ったようなさっぱりとした性格で、わかりやすくはっきりとした少女。
落ち着いた色の茶髪を少し長めに伸ばし、下の方でゆるくまとめたおさげの髪型。
元来の快活さと正しさに目を向ける生真面目さが相まって、その顔立ちはとても凛々しい。
弟の正がトラブルを起こしたり他人に迷惑をかけた時のアフターフォローをよくして回っている。
正義感が強く、自分が正しいと判断したことに対しては突き進む意思を持っており、困った人は助けずにはいられない。
五年前の夏、中学一年生の夏休みに魔女たちが起こした騒動に巻き込まれ、自身も魔女になる。
その事件の際親友である真奈実を失い、もう間違ったりしないように、正しい道を進むことを決意した。
自分を騒動に巻き込み、そして真奈実を殺したと思っていたレイに強い執念を持っていた。
光の魔法を得意とする魔女。
●ワルプルギスの魔女
・レイ
突然アリスの前に現れたワルプルギスに所属する魔女。
黒いニット帽に黒いブルゾン。そして黒いジーンズを着た黒づくめの出で立ち。見た目はアリスと同年代。
とても綺麗な顔立ちで、男女の区別のつかない中性的な麗人。さらりとした黒髪のショートヘアも相まって、見かけでは全く判断がつかない。
性格はのらりくらりとしていて、その真意は全く掴めない。常に爽やかで優しい笑みを浮かべてアリスに接する。
少しキザったらしい一面もあるが、その言葉一つひとつはまるで愛を囁くように甘く、人の心に漬け込む響きを持つ。
アリスを迎えに来たと言うが、決して強引にではなくあくまでその意思を尊重する態度を見せる。
ワルプルギスの目的とは別に、個人的にアリスを我が物にしたいという願望を胸に抱く。
故に『寵愛』が既に他人の手に渡っていたことに不満を覚えていた。
善子曰く、魅惑と幻惑の魔法を得意とする魔女。
・アゲハ
レイと共にこちらの世界に訪れているワルプルギスの魔女。
二十代前半ごろの派手なギャルスタイルの女性。
プラチナブロンドの髪を短く切りそろえ、いかなる時も化粧を万全に整えている。
胸元の大きく開いた丈の短いヘソ出しの服や、極端に短いショートパンツなど露出度の高い服装で、その上から真紅のレザージャケットを羽織っている。
胸元と右の太腿には大きな蝶のタトゥーが彫られている。
見かけ通りの派手な性格で、お調子者で大雑把。短気で物事を急く傾向がある。難しいことは苦手。
・クロア
レイと共にこちらの世界に訪れているワルプルギスの魔女。
二十代後半ごろの落ち着いて大人びた雰囲気を持つ女性。
ゴシックな真っ黒のドレスに身を包み、黒いグローブをしていることで、顔と指先以外の肌は見て取れない。唯一見て取れるその肌は蒼白といってもいいほどに白い。
墨のように重い黒の髪をくるくると巻いており、夜でも外出時は黒い日傘をさしている。
三人の中では一番落ち着きを持っており、その佇まいからは気品を感じさせる。
物腰柔らかく丁寧な話し方をする、淑女を思わせる女性。
・ホワイト(真奈実)
ワルプルギスのリーダーを務める魔女。
元々は善子の同級生であり親友だった。五年前の騒動の折死亡したと思われていたが、生存しあちらの世界にいた。十八歳。
日本古来の豪華絢爛な純白の和装に身を包む。一国一城の姫を思わせる華美な出で立ち。
対照的に艶やかな黒髪をまっすぐに伸ばし、それは地につくほど。過去からやってきたと思うほどの典型的な和風美人。その仕草、言葉遣い、全てをとっても優美で雅で荘厳な女性。
元々超がつくほど生真面目な性格で、曲がったことは許せない正義の権化のような少女だった。
その正しさは今もなお遺憾無く発揮されており、彼女が掲げる正義がワルプルギスの基盤になっている。
現在の彼女は自身が掲げる正義を絶対のものと確信しており、それ以外のものはいかなるものも正義に非ずと断ずる思想を貫いている。
その正義のためならばかつての親友に対しても冷遇するなど、彼女の在り方は自身の正義ある使命に徹底している。
光の魔法を得意とする魔女。善子に光の魔法を教えたのは彼女。
●魔法使い
・
姫君抹殺の命を受けてやってきた魔女狩り。
銀色の長髪で、軟派な気取った態度の若い男。
軽薄な態度で口調は軽く言葉遣いも悪い。しかし思慮は深く想いの強い心の持ち主。
傀儡の魔法を得意とする魔法使いで、アリスに対し黒い感情を抱いていた正に目をつけ、僅かな魔法を行使可能にするイヤリングを与えけしかけた。その後は神秘保全のため殺すつもりだったが、敗北のため断念。
クリスティーンと呼ぶ可憐な女性の人形を側に侍らせ、常に言葉を掛け愛を囁き慈しんでいる。
その人形はかつて歌姫として生きていたクリスティーンという女性の亡骸に補強と傀儡の魔法を施して作り上げた生き人形だった。その体内には魔力で活動を継続させた彼女の心臓が動いている。
彼女の死をきっかけに彼は魔法使いの道を歩み、ロード・デュークスの元で魔女狩りになった。
死した体を抱き続けるその様は側から見れば狂気に満ちているが、しかし彼らの間には確かにお互いを想い合う心が通っている。その在り方をどう定義するかは、誰にも決めることはできない。
・ロード・ケイン
魔女狩りを統べる四人の
黒い癖毛を悪戯っぽく伸ばし、しかし清潔感のある洒落気を感じさせる。
緩やかに着崩した服装や、適度に生やした髭はダンディズムを感じさせる色気がある。
真面目さとは正反対の軽快で軟派な性格の持ち主。常にニコニコと気の良い笑みを浮かべるその姿からは威厳は感じられない。
同じく
しかし生真面目で堅苦しく厳格なデュークスと、戯けた態度の軽薄は彼とでは一見そりが合わないように見える。実際デュークスは彼を疎ましく思うことも多いが、腐れ縁は切れることがなかった。
気の抜けた態度からはその思惑は見て取れないが、デュークスの独断をそれとなく窘め、他人との橋渡しを図るなど強かな一面を持つ。
●その他
『お姫様』
花園 アリスがかつて『魔法使いの国』においてお姫様と呼ばれていた頃の、記憶と力を引き剥がした部分の存在。アリスがお姫様と呼ばれる部分そのもの。
アリスが心の中に落ちた際、その中にある巨大な森の中でもう一人の自分のような形で対面した。
その姿はアリスと瓜二つで、アリスそのもの。白いワンピースを着て三つ編みは解いている。それ以外の見た目は全く同じだが、どこか幼さを感じさせる。話し方もどこか幼げ。
何者かによってアリスの当時の記憶と力が引き剥がされ隔離されたことで生まれた存在であり、隔離と同時にアリス本人への干渉を大幅に制限されたため今までアリスは思い出すことも気づくこともなかった。
しかしアリスが魔法に触れ、そして自身の過去の事実を知り、その力を強く求めたことで、一時的に僅かに接触できるようになった。
しかし制限自体は存在するため、過去の出来事を伝えることはできない。またその力も一部を一時的に貸し与えるという形を取るほかない。
城での戦いの折、アリスの体を動かし剣と力を振るったのは彼女だった。
彼女はかつての『お姫様』のアリスであるが、当時の記憶や想いよりも、そこから今まで抱いてきた想いを大切にすべきだと、今のアリスの気持ちに添うと断言した。
■用語解説
・『まほうつかいの国』
異世界に存在する魔法使いたちが統べる国。住人全てが魔法使いというわけではなく、魔法使いが統べている国。
魔法使いは一般的にその家系の中で生まれるものだが、まれに一般の家系の中から素養を持つものが生まれる場合もある。
かつて国はとある女王が治めており、それは大層な悪政であった。そんな悪しき女王を打ち倒した者こそがかつてのアリスであり、その功績と絶大な力を称え、魔法使いたちは彼女を姫君に据えた。
現在その玉座は空席のままとなっている。
・救国の姫君
『まほうつかいの国』における魔法使いたちのアリスへの呼称。
かつて『まほうつかいの国』に『大いなる力』を持った少女が迷い込み、凶悪な女王の魔法を物ともせず、『真理』を下してそれを打ち滅ぼした。人々は歓喜し、彼女を救国の姫君と崇めた。
姫君は『真理の
・ワルプルギス
『まほうつかいの国』において、魔法使いに叛旗を翻す魔女のレジスタンス集団。各地で小競り合いを起こす過激な集団。
その実態は姫君を崇め奉り信奉する者たち。アリスを希望の姫君と呼び、本来は自分たちのものだったと主張する。
魔法使いに仇をなし、滅ぼさんとすることは手段の一つ、過程に過ぎない。その本来の目的は、姫君が本来の力を取り戻して帰還し、姫君と魔女が住み良い世界に戻すこと。
あくまで姫君を信奉する者であるため、基本方針はアリスの妨げではなく静観。アリスが自ら力を取り戻し、そして自分の意思で帰還することを望み、その過程を見守るためにレイたち三人が遣わされた。
リーダーであるホワイトは敵対の意思を見せないが、彼女の正義の頑なさはアリスの意思を受け入れているとは言い難かった。
・『奉仕と還元』の力
お姫様が持つ力の一つ。魔女と心を通わせることで発現する力。
『奉仕』とは魔女からの力の献上。本来お姫様であるアリスは魔法を扱う者でないが、魔女と心を通わせることでその力を借り受け行使することができる。
アリスを守った氷の華や、一時的にお姫様の力を借りた時に使った魔法がこれにあたる。
『還元』とはお姫様から魔女たちへ贈られる力の恩恵。扱う力の強化と魔女としての実力の底上げをする。
お姫様と『奉仕と還元』の関係になることを『庇護』を受けるという。又は『庇護下』に入る。
『庇護』を受けた魔女の中でも、お姫様からより強い想いを寄せられた者には最上級の恩恵である『寵愛』が与えられ、より強い強化と結びつきを得る。
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