幸の50 同じことを考えたなら
ピンポーン。
ピンポーン。
「ん・・・・?」
ピンポンピンポン。
ピポピポピポピンポーン。
「はあ、なんのいたずらだよ?」
枕元に置いてある時計を見ると時刻はまだ朝の6時にもなっていない。
隣では言葉が可愛い寝息をたて眠っている。
ピンポーン。
「ったく、誰だ?こんな朝っぱらから」
はいはい、と玄関を開けてみれば。
「やあやあ、おはようじゃないか!ミントくん」
「おはよ〜!」
ミドリンと沙織のバカップルが満面の笑みを浮かべて立っていた。
「なんだよ?こんな朝っぱらからお前らは」
「いやあ、さっきまでカラオケで盛り上がってたらさ、朝になってたからちょっと顔でもだそうかな〜なんて」
「はあ・・・じゃあもういいだろ?おやすみ」
ドアを閉めようとする俺。
「ちょっと待ちたまえ、せっかく来たんだぞ?少しくらいは構いたまえ」
「いや、知らんから。それに・・・」
「ん?何か用事でもあるの?」
「用事というか、何というか」
「どうしたの?こんな早くから」
玄関先でそうして話をしていれば当然のことながら、言葉は起きてくるだろうとは思ったが早すぎだろうよ。
「ああっ!言葉!」
「ひ、柊くん?」
ペタペタと素足で玄関まで来る言葉。
それはまあいいとしても、その格好が・・・
「お前な、せめてもうちょっと考えてから来いよな」
寝るときに暖房をつけたからか、夜のうちに服を脱いだらしい言葉は下着に俺のシャツを羽織っただけの・・・つまりはいつもの格好だ。
「え?あ、別に減るものでもないじゃない」
「あ〜あ〜2人はもうそういう関係だったんだ〜」
「み、ミントくん・・・おめでとう」
「何がおめでとうだよ?ほれ、言葉も起きたし上がっていけよ」
来たのがミドリンと沙織だからいいようなものの他の誰かだったらどうするつもりだったんだろうか?
仕方なくお茶を出してやり久しぶりのバカップルの話を聞く。ちなみに言葉は着替えて俺の隣に座っている。
「え?じゃあ言葉はしょっちゅう泊まってるわけ?」
「ええ」
「それで何もないの?」
「ええ」
ジトッとした目を俺に向ける沙織。
「おい、何だよ?その目は」
「ミント、あんたもしかして……あっちの人?」
「違うわっ!」
「それじゃ・・・ダメな人?」
「あのなあ・・・」
「だってこんな美少女が隣で寝てるのよ?普通に考えて色々あるでしょ?ねえ?ミドリン」
「それはそうだね、ちょっと異常だね。ああ、それと僕は沙織くんにしか興味がないから大丈夫だけどね」
フォローになってもなければする気もないよな、こいつ。
いやんミドリンてば、ははは当たり前じゃないか、とバカップル丸出しでイチャイチャしだすアホ2人。
「じゃあ本当に何もないんだ?」
「当たり前だ、お前らとは違うんだって」
「僕達も清い交際だぞ、なぁ沙織くん」
「そうよ!」
「ふ〜ん」
「な、何よ?」
俺はじっとミドリンを見て一言だけ言ってやる。
「なぁミドリン、ここんとこに口紅ついてるぞ」
と、唇のちょっと横を指差してやる。
「!!!」
「まっ、別にいいけどな」
昼過ぎまでそんな感じで話をして、また年末か正月くらいに会うことを約束して2人は帰っていった。
「やかましいやつらだな」
「楽しそうね」
「まあな、あれはあれで気を使ってくれてたりするからな」
キッチンで昼ごはんを作ってくれている言葉にそう声をかけてから俺は、ある事を思い出した。
昨日、こいつ寝ちゃったから渡しそびれてるんだよな。
ベッドの脇に置いてある鞄をそっと引き寄せて中から小さな箱を取り出す。テーブルの下で言葉からは見えない様に。
渡すタイミングを逸したプレゼントはどことなく居心地悪そうにテーブルの下に収まる。
「で、今日はどこか行くのか?」
「そうね・・・」
昼ごはんをテーブルに並べながら少しの間考える言葉。
変な時間から2人が来たので朝を抜いたのでテーブルには白米と味噌汁に卵焼きと朝食べるはずだったメニューが並んでいる。
「特に行きたいところもないし、部屋でゆっくりしててもいいわよ」
卵焼きをつまんで俺の口元に持ってきつつそう答える。
「そっか、じゃあのんびりと昼寝でもするか」
「よくそれだけ寝れるわね」
はむっ、うん、相変わらず美味いな。
お返しに俺も卵焼きをつまんで言葉の口元へ。
「晩御飯の買い物に行くくらいしか用事がないからな」
「ちょっと塩味がきつかったかしら」
「ん?そうか?いつも通り美味いけど」
上品にもぐもぐと食べる言葉。
昼ごはんも終わり宣言通り昼寝をしようと横になると言葉がふと思い出したように鞄をごそごそとしだした。
「はい、クリスマスプレゼント。渡し損ねたわね」
「あ、おう、うん。サンキューな」
俺が用意したのと同じようなサイズの小箱。
「あ〜、俺も渡し損ねたんだよな」
昼寝をやめてテーブルの下から箱を出して言葉の手にのせる。
「・・・ありがと」
顔を見合わせてなんと言えない空気が流れる。
「えっと・・・開けてもいいか?」
「ええ、どうぞ。私も開けていい?」
「お、おう」
どちらともなくそう言ってお互いの箱を開ける。
俺が言葉に送ったのはシルバーのリング。
言葉が俺にくれたのもシルバーのリング。
再度顔を見合わせて・・・笑いがこみ上げる。
「どうして指輪なの?」
「そりゃあんだけ手を繋いでたら大体サイズもわかるだろ?お前は何でだよ?」
「・・・あなたと同じよ」
はははと笑う俺と、柔らかくクスリと笑う言葉。
俺から指輪を受け取って、俺の
考えたこともどうやら同じだったらしい。
「・・・昼寝・・・しようかな」
「そ、そうね」
初めて見た耳まで真っ赤になった言葉をまともに見れずゴロンと横になる。
間違いなく俺も同じようなものなのだろうけどそれを確認する心の余裕はなかった。
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