幸の48 雪の降らないクリスマス


 結構な人で賑わう通りを歩いていく。

 普段のこの時間ならそれほど多くの人はいないのだが流石はクリスマスといったところか。


 特に行くあてもないため、冷やかし半分で店を覗きつつこれからどうするかを話す。と言っても俺にしろ言葉にしろそれほどどこかに行きたいという希望もないわけで。


「これといって目的もないんだよな」

「そうね、部屋でいても変わらなかったわね」

「何か適当に買って帰るか?」

「夜食に?」

「まぁそうなるかな」

 結局歩いてきた通りを戻りコンビニへと向かう。

 駅前辺りのコンビニも結構な人の入りだったため、もう少し家に近い方へと行ってみる。

 幸いこちらはいつもと変わらない感じだった。


「ちょっと外れると静かなんだけどな」

「お店とかがないからかしらね」

「ああ、そうかもしれないな。この辺りは食べ物屋もあんまりないからな」


 デザートコーナーで2人して何にするかを悩む。

「来るたびに新しいデザートが出てるのよね」

「飽きられたら死活問題だからな、コンビニは」

 毎週のように新商品が発売されるから知らないうちに食べ逃しているのもあるかもしれない。


「あれ?もしかして柊さん?」

 ロールケーキとワッフルを俺のカゴに入れていた言葉に女の子が声を掛けてくる。

「あら、こんばんは」

 余所行きの笑顔で挨拶を返す言葉。

 多分、学校の友人なのだろう。とっさに繋いだ手を離しかけたが、言葉はぎゅっと力を入れて離さない。


「えっと・・・」

 しっかりと繋いだ手を見て女の子は何て言えばいいのか迷っているみたいだ。

「あの、彼氏さん?」

「さあ?ご想像にお任せするわ」

 にっこりと笑いかける言葉とまずいものを見たって顔の女の子。

「じゃあまた学校で」

「あ、ええ」

 そう言って俺の手を取ったままレジへと向かう言葉。

「よかったのか?あれ」

 仲良くレジに並んでいる俺たちをちょっと離れたところから見ている女の子について聞いてみる。

「構わないわよ、そのうちバレるんだから」

「身もふたもない言い方だな」

「まぁあの様子だと俺が誰かってのもわかってないみたいだしな」

「そもそも文系棟と理系棟が別だから初めからわからないわよ」


 会計を済ませてコンビニを出るときにすれ違った女の子に言葉はいつもの笑顔で会釈をしていた。

 もっとも相手の女の子はどう返事をしていいのかわからないって顔をしていたが。


 部屋へと帰る道、つい先日雪の日に歩いた道だ。


「こんな日に雪が降ればよかったんだがな」

「そうタイミングよくいかないわよ」

「それもそうか」

 見上げる空は綺麗な星空が広がっていて雪の降る気配は微塵もなかった。

「まぁこれだけ綺麗な星空が見れただけでよしとするか」


 コンビニの買い物袋をぶら下げて2人して夜空を見上げながら歩く帰り道。

 隣で空を見上げる言葉の横顔につい見惚れそうになり苦笑する俺。


 やれやれ、いつぞやの話じゃないけどいい加減に自覚するよなぁ。


 そう思い繋いだ手をコートのポケットに入れると、何も言わずに寄り添ってくる言葉。


 部屋までもっと遠ければいいのになと思いつつも足取りは軽かった。


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