楽の34 浜辺でバーベキューと醜い争い(笑)
夕方買い物に出かけていたミドリンが帰って来て俺の部屋のドアを開けてしばらく固まって、そっとドアを閉めて戻っていったらしい。
俺は言葉の膝枕で熟睡中で、当の言葉も俺に覆い被さるようにして寝ていたらしい。
らしい、らしいと言うのは俺も言葉もアリサと沙織が部屋に突入してくるまで仲良く眠りこけていたからなんだが。
アリサが勢いよく俺を言葉から引き剥がして言葉に詰め寄っていたのや、沙織がやれやれといった顔で俺たちを見ていたのもボンヤリとは覚えているのだが、いかんせん寝起きだったこともあり、らしい。としか言い様がない。
その後リビングでみんなから散々からかわれヤジられたのは言うまでもない。
・・・で、今はというと男子で砂浜でバーベキューの準備をしているところだ。
「全くまさかここに来てまで2人で仲良く部屋にいるとは流石の僕も予想していなかったよ」
「僕もびっくりしたよ」
身振り手振り大げさにそう言うミドリンと心なしかやつれて見える駿。
「仕方ないだろ?みんな出かけていないし眠かったんだからさ」
「ほ〜ほ〜それで膝枕なわけかい?というか抱き合って寝てと様にしか見えなかったがね〜」
「ミントくん・・・」
「まぁその、以後気をつけます。はい」
俺たちが砂浜にいるころ女子たちは材料を切ったりして別荘のキッチンにいる。
言葉もアリサや沙織に色々言われていそうだが・・・まぁあいつのことだから問題なくあしらってるだろう。
「そういえば、駿はえらく疲れた顔してないか?なんかやつれて見えるぞ」
「ふふふ、ミントくんが柊さんと仲良くおやすみの間、僕はアリサさんに散々連れ回されてたんだよ・・・詩織ちゃんも見て見ぬふりだったし・・・ふふふ」
駿が海の方を遠い目で見ながらコンロの火をカチカチとしてるのを俺とミドリンはそれこそ見て見ぬふりをした。
「ふふふふ・・・」
トラウマにならないといいなぁ〜。
あたりが暗くなりつつある頃に女子たちが材料を持って砂浜にやってくる。
「流石はミドリンよね〜お肉がいいヤツなのよ〜」
「そうですね、ちょっと普段なら買えないようなお肉ですよ」
「ふははは、そうだろう?ちょっとばかりワガママを言わせてもらってね、奮発してもらったのさっ!」
砂浜でJO○O立ちのミドリンが言うだけあって用意された肉は驚くほど偉そうだった。
当然野菜もきっと無農薬野菜とかそんななんだろう。
そんな感じでバーベキューは始まったのだが・・・
「にくぅ〜!!」
「甘いわぁ!!!」
「ああ〜それ僕が焼いていたのに〜」
「油断するほうが悪いのよっ!!」
「買ってきたのは僕だぞ!少しは遠慮したまえ!」
「あんたは毎日でも食べれるでしょ!!」
「あら、丁度いい具合に焼けてるわ」
「詩織〜!それあたしの〜!」
「おほほほ〜」
阿鼻叫喚ってこういうのをいうんだろうなぁ。
「あそこまでしなくちゃならないのかしら?」
「頼むからお前まで参加するなよ」
「私はああはなりたくないから・・・」
言葉の指す方では一枚の肉をアリサと沙織が箸で引っ張りあいをしている。
「醜いな・・・」
「ええ、醜いわね」
俺も言葉も肉にはそれほど興味がなくどちらかといえば野菜のほうが好きなのでナスやピーマン、トウモロコシに玉ねぎとこっちは好きに焼いて食べている。
「ちょっと!!そこの2人!何まったりと野菜ばっかり食べてるのよ!肉食いなさい!肉!」
「いや・・・お前らの醜い争いには入りたくなくてな」
「そんなこと言ってるとすぐなくなるわよ!にく〜」
「沙織って色気より食気の人なのね」
「みたいだな」
一瞬だけこっちに気を配った沙織だったがすぐに元のバーベキューコンロへと向き合って再び醜い争いを繰り広げている。
「あれって詩織が一番上手く立ち回ってるんだよな」
「そうね、上手く周りを捌きながらいいとこだけとってる感じね」
おほほほと上品に笑いつつもさり気なく肉を確保している詩織のひとり勝ちのようにみえる。
「ま、こっちはこっちでのんびりしとくか」
「そうね。はい、焼けたわよ」
「さんきゅ」
いつものような言葉が焼けた玉ねぎを俺の口に運んでくれる。
「お、結構甘いな。美味い、ほらお前も食ってみ」
「あら、ほんと。美味しいわね」
俺も当然ひょいと言葉の口に玉ねぎを放り込んでやる。
「ん?」
ふと静かになったことに気づきミドリンたちの方を見ると全員箸を止めてこちらを見ていた。
「どうかしたか?」
「いや、はぁ〜。何て言うかあんたたちはもういいわ」
「僕も同意見だね。あまりに普通すぎて逆に僕がおかしいのかと思ってしまうよ」
「・・・恋人の定義ってなんなんでしょうね・・」
「詩織ちゃん、深く考えないほうがいいよ」
なんだか酷い言われようだったが言葉は全く気にする素振りもなく平然としている。
まぁ俺も慣れたから何ともないんだけど。
そこから後はまた肉争奪戦が始まりみんな腹一杯になるまで食べて騒いでこの日は初日ということもあり日付が変わる頃にはみんなそれぞれの部屋へと戻っていった。
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