喜の17 言葉の晩御飯とスイーツと


あれから駿と沙織、詩織に散々聞かれたが期待したことにはならなかったと説明しておいた。


「それでミント、嶺岸さんに告白されたんじゃないの?」

「まぁそんなところだったけど断った」

「好みじゃないって本当なのね。彼女美人なのに」


今日も例によって言葉は俺の家で晩御飯を作ってくれている。

今日の献立は2人キムチ鍋だ。なんでも知り合いからキムチを大量にもらったそうでキムチ満載のキムチ鍋だ。


「彼女大丈夫だった?」

「何がだ?」

「あら?ミントならわからないわけないでしょ?」

はふはふとキムチを食べながら言葉は、さも見ていたように言う。

「お前、見てたのか?」

「そんなわけないじゃない。知ってるだけよ。彼女の性癖」

「性癖って、まぁそのまんまだな。知ってるなら言ってくれても良かったんじゃないか?」

「いやよ、めんどくさい」

「なんでお前が知ってるんだ?友達でもないんだろ?」

「以前ね、ちょっと彼女と言い合ったことがあったのよ。ほら私って感情がないじゃない、だから無表情で言い負かしてあげたのよ」

「ああ、何となく想像できるわ」

多分言葉に言い負かされてゾクゾクしちゃったんだろうな。

「その後つきまとわれて大変だったんだから」

「へ〜その割にこないだはそんな風には見えなかったけどな」


しかし言葉の料理は美味いな。ただのキムチ鍋なのにな。


「彼女スイッチが入らないとあんな感じよ。普段は真面目な優等生ですもの」

「ドMスイッチか?また厄介なヤツだな」

「事故だと思って諦めなさい」

「お前、事故って大事故だぞ」

多分だけどきっとアイツ諦めてないよな。


「付き合ってあげたらいいじゃない。尽くしてくれるわよ彼女」

「勘弁してくれよ、マジで」

2人でキムチ鍋をつつきながらそんな会話をする。


当然食後にはいつものロールケーキだ。

「お前よく飽きないな?たまには他のにするか?」

「あら、他にもあるのかしら?」

「そりゃコンビニだからな、それなりに色々あるぞ」

いつものようにお互いに食べさせ合いながら次回のスイーツについて話し合う。

相変わらずなんと色気のない"あ〜ん"だろうか。


紅茶を飲みながら言葉は何か考えている。

「なら今からいきましょう」

「は?今からか?」

「ええ、あなたに任せておくときっと今度も同じのを買ってくる気がするから」

「ぐっ否定できん」


結局俺と言葉は俺のバイト先のコンビニに行くことになったのだか。


「なぁ手は繋がなくていいんじゃないか?」

「いやよ、一緒に歩くときはこうするって決めたんだから」

「いや、でもなぁ」

「時間も時間だから大丈夫よ、さあいきましょう」


家を出て夜道を歩く。

「そういや、こうして夜一緒に歩くって今までなかったよな」

「そうね。これはこれで新鮮でいいんじゃない?」


そうして歩くこと10分少々。

「いらっしゃいませ〜ってミントくん?」

「店長、こんばんは」

「どうしたんだい?忘れ物か何か・・」

店長はそこまで言って俺の少し後ろにいる言葉に気がついた。もちろん繋いだ手にも。


「ああ〜なるほど」

店長はニヤリと笑って奥に引っ込んでしまった。


はぁ今度バイト来たら色々聞かれるんだろうな。

「ほら、スイーツ、スイーツ」

「はい、はい」

2人してスイーツを物色する。

「コンビニってあんまり来ないんだけど沢山あるのね」

「そうだな、最近はどこもスイーツコーナーは充実してるぞ」

「そうなのね、ふ〜ん」

言葉はどうやらフルーツ系のスイーツがお好みらしい。


「ミントくん、ちょっとちょっと」

「はい?」

呼ばれて振り返ってみると店長がレジのところで手招きしていた。

「言葉、ちょっと選んどいてくれ。店長が呼んでるから行ってくる」

「ええ、わかったわ」

繋いだ手を離すと言葉は少し悲しそうな顔をした。

おいおい、そんな顔するなって。


「ミントくん、えらい可愛い彼女じゃないか?」

「まぁ彼女じゃないんですけどね」

「しっかり手も繋いでるのに?こんな時間に2人で買い物にくるのに?」

「はぁ、まぁいいじゃないですか。で、どうしたんです?」

「ほら、これ持っていきな。新作スイーツ」

「えっ?いいんですか?こないだ貰ったばかりですよ」

「いいからいいから、彼女と甘〜い夜を過ごしてきなさい、おっとお客さんだな。じゃあまたなミントくん」

店長は俺に袋に入ったスイーツを押し付けてレジを打ちに行ってしまった。


「ありがとうございます、店長」

店長がレジで手をヒラヒラと振ってくれる。


「言葉、何かいいのあったか?」

「ええ、でも迷うわね、これもあれも食べてみたいわ」

「なら、今日はこれにしないか?店長がくれたんだけど」

「あら、随分気前のいい店長さんね?」

「言葉がいるからだな」

「私がいると何か違うの?」

「可愛い彼女と食べれってさ」

「ああ、そういうこと」

「ほら、そろそろ帰ろぜ、遅くなるぞ」

俺たちはまた手を繋いでコンビニを出ていく。


「店長、ありがとうございます」

「気をつけてな。彼女さんも」

「ええ、ありがとう」

言葉はいつもの笑顔で店長に礼を言う。

当然店長がそんな言葉に見惚れているのは言うまでもないことだ。


さて、帰るか。

俺たちはコンビニの袋片手にのんびりと家に帰った。





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