哀の8 見上げた空には



入学してからはや一か月が過ぎた。

四月末には、実力試験があったので今日は試験結果が張り出される日だ。


文系と理系は選択教科が違うので別々に張り出される。

あと専門学科は名の通り専門知識を優先して授業が行われているため今回の試験はない。



「ミントは何位くらいだと思うの?」

「そうだな、手応え的には結構出来た感があったから割といいんじゃないかと思ってるぜ」


「えっ?ミントって頭いいの?」

「あのなぁ、人を見かけで判断するなよな。一応中学の時はいつもトップテンには入ってたんだぞ」

「ええ〜〜!てっきりお仲間だとばかり」

「姉さんのお仲間がそうそういるわけないじゃないですか」

「ちっ、駿あんたはどうだったの?」

沙織は詩織にダメ出しされて矛先を駿にむける。


「少なくとも沙織ちゃんよりかは上だと思うよ」

駿も相変わらず沙織の扱いが雑だな。


俺たちは結果が張り出されているボードへとやってきた。

ボード周辺は結果を見に来た学生達でごった返している。


右が理系、左が文系だ。


「ほほう、どれどれ?」

俺は背伸びをしてボードに名前を探す。

文系、理系共に8クラス約350人程だ。


「え〜っと、おっ詩織発見、駿もあったぞ」

「えっミント、私は何位でした?」

「僕は?僕は?」

「詩織が88番で駿が201番だな」

詩織はやっぱ頭いいんだな。

駿と沙織はどっこいどっこいかと思ったけど。


「ミント!私は?」

「あ〜沙織な、おお!いたいた!おめでとう、333番だ」

「・・・後ろに数えるくらいしかいないじゃない」

沙織はがっくりと項垂れた。


「沙織ちゃんて・・・よく入れたね?」

おい。駿、それトドメだからな。


で肝心の俺はというと。


「まあ妥当なとこか」

12番。ちょっと頑張ればトップテンには入れそうだな。


「ミントって本当に頭良かったんだ」

「うわぁミントすごいね!見た目とは全然違うんだね」

沙織はいいとして、駿って結構抉る感があるな。


「当然だな、諸君達とは出来が違うのだよ」

はっはっはと笑ってやった。


そういやあいつは何位なんだ?

俺は、文系のボードに目をやる。

柊言葉。探すまでもなかった。


「ぶっちぎりのトップじゃねえか。マジかよ」

2位以下を大きく引き離しのトップだった。


「へ〜やっぱりすごいんだね、あの子」

「ダントツじゃない!私に100点くらいくれないかな」

「新入生代表挨拶するくらいだからな。これくらい当然なんじゃないか?」


あと沙織は、詩織に教えてもらえ。進級出来なくなるぞ、双子で学年違うって笑い話にもならん。



「お前って本当に頭良かったんだな。流石に驚いたわ」

「当たり前でしょ?何の問題もないわね。それよりもあなたの方が驚かれたんじゃない?」

「確かにな。そんなにアホそうに見えるか?俺は」

「そういうわけじゃないけど・・・軽薄そうには見えるわね」


俺と言葉はいつものように放課後の鉄塔にいる。

この時間になると屋上にも人はほとんどいないので誰かに見られることもない。


「俺的には普通だと思うんだがな」

「あなたの普通の基準がわからないわね」

別にいいんだが、そんなものなのか?


「試験も終わったことだし、次の休みにでも約束通りどっかに遊びに行くか?」

「そうね。どこに連れて行ってくれるかはあなたが決めてね。いかがわしい所じゃなかったらいいのだけど」

「お前は、俺を何だと思ってるんだ?」

「冗談よ。わかるでしょ?」

わかるわけねーだろ?そもそも無表情なんだから本気にしか聞こえん。


「冗談言う時だけでいいから笑ってくれ」

「いやよ。めんどくさい」


はぁ、と大きなため息をついて天を仰ぐ。


「なぁ」

「何?」

「空見上げるとな、この時間なら星が薄っすらと出てるんだな」

俺が空を見上げて言うと、言葉も同じように空を見上げる。


「そうね。何?星座でも教えてほしいの?」

「何でだよ。いや、こうやって空を見上げててもお前は、綺麗って思わないんだなって思ってな」

「・・・私にとっては、ただの空よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

「そっか」

「ええ」


2人で薄っすらと出ている星を見上げて、俺はいつかこいつにもこんな景色が美しいと感じれるようになればな、と思っていた。





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