君のこころに咲かせる華はどんな色がいいですか?

揣 仁希(低浮上)

プロローグ



 彼女に初めて出逢ったのは、中学3年の夏祭りの夜だった。

 友人達と、遊びに出かけていた俺は高台から打ち上がる花火を見ていた。


 幾重にも重なる夜空の華を見上げ、友人達と盛り上がっていた。


 そんなとき、ふと俺はもう一段上の高台に人影を見つけた。


 花火に照らされたその少女の姿は今もはっきりと、鮮明に覚えている。

 薄い桃色の浴衣を着てどこか寂しそうな表情を浮かべて花火を見る横顔は、俺が目を逸らすことを許さなかった。


 一際大きな花火が夜空に咲いた瞬間、彼女は僕に気がつき驚いた表情を一瞬見せたが、夜空の華に負けないような笑顔を投げかけてくれた。


 心臓が高鳴るのを感じて目を逸らして、次に見上げたときには彼女の姿はもうなかった。


 友人達と一緒だったことや、中学生の男子特有の照れ臭さもあり、彼女を探すことはなかった。


 やがて俺は中学を卒業し、親元を離れた。中学の頃からそれなりに頭は良かったので親の期待もあって県下でも有数の進学校に通うことになった。


 そこで俺は、あの時の彼女と2回目の出逢いをする。


 あの夜とは違い、制服姿だったが見間違うことはなかった。存在感とでもいうのだろうか?その憂いをたたえた美貌もあり彼女は一際目立っていた。


 俺は、遠くからそんな彼女を見ていることしかできなかった。優しげな表情で周りと談笑している彼女の周りには多くの男女が集まっていたから。

 その後、新入生代表挨拶で俺は彼女の名前を知ることができた。


 柊言葉ひいらぎ ことのはそれが彼女の名前らしい。


「柊言葉・・・」


 これが俺と言葉の3年間の始まりだった。






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