第22話 集会 其の壱
「 おまたせ 少し手間取っちゃってごめんなさい 」
刀を手にした
「 車を手配出来ないかしら 」
「 車って もしかして店長がケガしたの 」
ユキの言葉に思わず動揺してしまう、一緒に戻って来たものとばかりに思ったのにいっこうに姿を見せない悠吏に不安を感じてたのだ。
「 大丈夫よ ツクさん あれしきで遅れをとるような人じゃないわ 運びたい荷物があるの 店長はまだそこにいるわ 」
「 なら車田に連絡しよう コンテナ置き場に向かったはずなんだが 」
「 ああ おじさまにわ合ったわ 警察と政府軍が来たから後始末をお願いしたの 反政府組織が暴れたことにするって言ってたわよ しばらくは動きがとれないでしょうね 」
「 そうか 合流出来たか なら そうだ海乃を向かわせよう あいつの事すっかり忘れてたがツクのマンションの前に待たせてるんだった ヤツならユウリ店長と面識もある 」
「 お願いします マップをツクさんにメールするわ 私は2階でシャワーを浴びてくるわね 」
本当はユキに今すぐ聞きたい事が山ほどあるのだが、彼女の傷んだ姿を見たら言葉が出ない、彼女の話し振りから店長は大丈夫そうなので 今はそれで良しとしよう。
それよりもユキが普通に2階の悠吏の居住スペースにシャワーを浴びると言って消えて行った事に動揺する。いったい2人はどう言う関係なんだろうか、ユキはメチャクチャ可愛いし以前から店長とは私の知らない特別な間柄だとは気づいていたが付き合ってはなかったはずだ。ただユキが店長を意識してるのは一目瞭然だった。私にとっては、ついこの前の事でも 実際には6ヵ月という時間が経過しているのだ。あの2人が付き合っていても何ら不思議は無い事なんだろう。
こんな事を考えている自分が嫌になる、私は悠吏の恋人でもなんでも無いのに、自分からその座を放棄しておいて嫉妬するなんて、本当にタチの悪い女だ。
ユキが戻ってから30分ほどして悠吏が海乃と一緒に帰って来た。2人が運んできた荷物とはガチガチに拘束されたコンテナ置き場の男女であった。2人ともボロボロで特に男性の方は見るからに痛々しい状態だ。
「 ユウリさん こいつらどうします 」
「 とりあえず椅子に手足を拘束しよう 海乃君 手伝ってくれ 」
「 了解っス 」
それから海乃と悠吏で2人を椅子に座らせナイロン製の大型の結束帯で手足を固定した。
「 あら 戻ったの 」
シャワーを浴びて小ざっぱりしたユキも髪を濡らしたまま上がって来た。あきらかにサイズの合ってない男物の黒のパーカースエットを着用している。
「 こらユキ ズルイぞ 何自分だけシャワー浴びてんだ それにまた勝手に僕の服着て 」
「 しょうがないじゃない さすがにこのメンバーの前で下着でうろつく訳にはいかないでしょ それより店長もシャワー浴びなさい 匂うわよ 日本に戻ってまだシャワー浴びてないでしょ せっかく再開できたのにまたツクさんに嫌われちゃうわよ 」
「 大至急シャワーしてくる ユキはみんなの飲み物と食べ物適当に店から持ってきて 」
「 わかったから早く行きなさいよ 」
それから10分ほどしてシャワーを浴びユキと同じようなスエットを来た悠吏が戻って来た、てか、この人は基本同じような服しか持っていないのだ。女性としてはもう少しオシャレに気を使って欲しいのだが。
コンビニセブンスマートのあるビルの3階のコンクリート打ちっ放しの広いスペースにある異質な存在。その黒い鳥居を構える黒い社の前で私達はパイプ椅子に着いて輪になった。
「 三刀小夜さん あなたがこの中では1番まともな人間に思える 任せたいんだが 」
「 まともな人間だなんて言われたのは初めてだぞ ユウリ店長 」
「 そんだけポンコツの集まりってことですよ 」
悠吏の言葉に異議のある人間はこの場にはいないだろう。
「 わかった 自信は無いが引き受けよう 」
「 こいつらどうします 」
悠吏が拘束した2人を見遣る。
「 聞きたいことがある 喋れるようにして欲しいんだが 」
「 了解 」
悠吏がワザと勢いよく2人の口を塞いであったガムテープを引き剥がす。
「 ブッ殺ス 」
男が口に溜まった血を吐き出し喚く。
「 屈辱だわ 早くレイプして殺しなさい 」
女がとんでもないことを口走る。
「 店長 斬ってもいいですか 」
刀を手にしたユキが柄に手をかける。
なんだこれ。いきなり先が思いやられる幕開けだ。
「 まず呼び名が聞きたいんだが 」
「 あんたたちに名乗る名なんてないわ 」
小夜の問いに女が吐き捨てる。
「 ミノムシとゴミムシでいいんじゃないか 」
「 ダニとホコリで十分よ 」
悠吏とユキはこの2人には容赦が無いようだ。
「 私らは別にお前たちともお前たちの国とも敵対する気は無いんだ ただツクのことを最優先に考えるだけだ できればちゃんと話しがしたい 」
「 …… わかったわ 私は石黒ありさ こいつはトーマス冬馬グレース 三代に渡りこの国に根をはる特殊諜報員よ 」
「 エリートスパイの家系っスか 」
海乃が目を輝かせながら食いつく。
「 私らのことはもう知ってるんだろうが 私は三刀小夜 オカルト誌の副編集長と記者をやっている 鳥迫月夜とはこいつが生まれた時からの付き合いだ 月夜は葛籠の持ち主だったトリオイ製薬会長鳥迫秀一の孫で葛籠の相続人だ こっちの海乃大洋は単なるウチのカメラマンだ 」
単なるカメラマンと紹介された海乃が少しむくれる。
「 知ってるわ あなたたちのことは調べ上げてある で そっちの刀の2人はなんなの この国の機関の人間 2人とも妙な動きをするわ マシンガンの弾を刀で弾き落とすんですからね 人間の反射速度を超えてる 特に女の方は瞬間移動的な動きを何回かしたわ あなたたちエスパーなの ガーディアンズなるこの国のエスパー部隊の存在は確認しているわ 」
「 あんなゴミクズと一緒にしないで 」
「 僕たちは無所属だしエスパーでもない ほんの少しだけ時間を有効活用してるだけだ 僕はウチのバイトの月夜君に危害を加えるものを雇用主として完全に殲滅排除する ただそれだけだ 」
「 愛するツクさんにカッコイイとこ見せたいって素直に言えばいいじゃない 」
「 あの ユキ君 ちょっと黙っててもらえるかな 」
「 私は店長の愛玩奴隷…… じゃなくって愛弟子よ それ以上でも以下でもないわ マナデシってなんかエロいわね 私は店長にマナされていたのね 」
「 あの ユキ君…… 」
「 で 結局あんたたち誰なのよ 」
「 バカとアホでいいんじゃねェか 」
トーマがさっきの仕返しをする。
「 えっとぉ 私がバイトするコンビニの店長の悠吏店長とバイト仲間の八島ユキちゃんです 」
私はたまらず口を挟んだ、あまり悠吏とユキには話させない方がいいような気がしてきた。私まで巻き添えで大火傷しそうで気が気じゃ無い。
「 私ら自身 彼らはまったく葛籠の件には関わりが無いと認識していたんだが 」
「 それで正しいですよ小夜さん 僕たちはまったくの部外者だ 月夜君が意識不明になってさすがに我慢できずに勝手に首を突っ込んだだけだ 何か目的や思惑がある訳ではない 」
「 私たちはツクさんをマナしてるだけなのよ 」
「 だから僕たちは1番事情がわかってない ほとんど知らないと言っていいだろう だからちゃんと説明して欲しい 説明してくれないのならこのスパイどもを拷問してでも聞きだす 」
「 わかった 説明する そのかわり ユウリ店長にも聞きたい事はある ちゃんと話してもらえるか 」
「 約束する 」
「 なら少し長くなるが始めから全部説明させてもらう ありさ君とトーマ君も付き合ってくれ 」
「 いいわよ三刀小夜 それは私たちが聞きたい話しでもあるわ 」
そして、この異様な場所で、異様な人々による、異様な集会が始まるのであった。
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