死と人間

 

 死と人間

 

 死ねば人はどうなるのか

 生まれる前に戻るのだろうか

 誰も生まれる前のことなどわからないように

 死んだ後のことなどわからない

 自分の存在が消えてしまうからだ

 存在する前、非存在に戻る

 

 死を恐れる者の多くは

 死それ自体を恐れているのではなく

 生きることに未練があり

 死に至るまでの苦痛を恐れている

 

 もし死に苦痛がないならば

 未練を捨てた者は次々と命を絶つだろう

 

 情は捨てようと思えば簡単に捨てられる

 これからの人生とか残してきた家族とか

 諦めてしまった者は

 未練が少ない分死ぬ踏み切る決断は早い

 

 自分から死に向かっていくことは

 容易なことではない

 死なざるを得ないから死ぬのである

 ベルトコンベアに固定されて 

 死へと運ばれていくのが人生だ

 自ら固定器具を外して逃げることはできない

 だが自ら死に向かっていくことはできる

 

 死を受け入れるか

 覚悟を決める前に命を全うするか

 

 いずれにしろ人はいずれ死ぬ

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