第1章 これが剣ですか?
第2話①
2045年3月30日(木)
ウエポン・クリエイト・システム-Weapon・create・system(通称wcs)
人々は一度だけwcsを使用して自分だけの武器を造る権利が与えられる。
その為、誰もが一番悩む瞬間でもある。
造り出す武器によってはその人の人生を大きく変わる。
ここに居る少年ー日下正宗ひのしたまさむねも現在頭を抱え、悩んでいた。
正宗に与えられているランクはGランクに振り分けられている。上からS、A、B、C、D、E、F、Gと分けられる。
Gランクに振り分けられている正宗は最下層に居る事を示す。
正宗は一週前に武器管理所からwcsに必要な魔法石を与えられた。
この石はその人間の思いに答えるとされる石で、この石を使えば何でも武器に変換出来るとされている。
そんな石を手に入れた正宗は自身の部屋を眺める。
ベッド、時計、机等幾つもの物があるが決められずに居た。
正宗はベッドに寝転びながらスマホで検索するもこれと言って目を引く物とは出会えずに居た。
武器探しと気分転換も兼ねて正宗はジャージ姿のまま外に出かける。
髪もボサボサで直そうともしない。
そんな正宗は外に出て直ぐに上を見上げる。
空が見えるのは勿論だが、それ以外にも幻想的なビル、建物が昼間にも関わらず光輝いてにそこにあった。
正宗は手を空に掲げる。
「俺もいつかあの場所に……」
Gランクの正宗は行ける場所が極端に狭い。人々はランク事に行ける場所が決まる。正宗が住まうここはGランクが好んで住まう場所だ。
そんな場所は重々しい空気が流れる辛気くさい場所だ。
武器使用主義が認められている為、正宗ジャージのポケットには拳銃と警棒が入れてある。それは正宗だけで無く、正宗の目の前を通り過ぎていくスーツ姿の男やセーラー服に身を包んだ少女も当たり前の様に持つ歩いている物で珍しい物では無い。
正宗は道端を歩くも武器にしたいと思う物は発見出来ずに居た。
ボーッと歩く正宗の前に警備が立ち塞がる。
警備達は正宗を見下す様に見つめる。
(……そうか、ここから先はCランクだった)
正宗はこの場所から出られない事を思い返し、来た道を引き返す。
正宗は暗い路地の奥に光を見る。
(なんだ?)
正宗は引き寄せられる様にその場所に向かう。
飲食店等の間を入っていく正宗。
掃除はされている様子は無く、ポケットに入れていた拳銃、警棒が壁に体に擦れるのを感じて、正宗は歩き続ける。
誰も来ないようなこんな場所で店がある事に驚く正宗は手に持っているスマホで[wcsーあなたが望む武器を造ります]と検索をする。
結果は予想道理で最悪なものだった。
訳の分からない事を言われた。店内には武器一つ置いて無かった。等マイナスなコメントが多く。プラスなコメントは店の店員が可愛い位しか無かった。
正宗は武器の事は諦め、コメントに書かれた可愛い店員を見るべく、店の扉を開ける。
店の中は狭く、コメントに書かれた通り武器等は一切無い。
何の為にこの店が立って居るのか分からない。そんな正宗の前に店員の少女が現れる。
(……あれ?今何処から出てきた?)
狭く、隠れる場所も無いこの店で店員の少女はいきなり現れる。
どれだけ考えても正宗には分からなかった。
色白で、腰まで伸びた金髪の少女はコメントに書かれた通り可愛い。
正宗はコメントに書くとしたらどう表現したら良いか分からない可愛さ。書くとしたら可愛い以外の表現方法が分からない店員の少女は正宗を見つめると笑顔で微笑むと正宗に近づいて来る。
可愛い少女の接近に正宗は思わず心踊らせる。
「何をお求めですか?」
店員の少女の声は美しい。
丸で男が求める全てが詰まった少女。
そんな少女がこんな店に居る事が不思議で仕方ない位だ。
店員の少女の問いに正宗は正直に可愛いと噂の店員に会いに来たとは答えられる筈も無く、違った回答をする。
「wcsで変換出来る物を……」
まともに目を見ることも出来ずに答える正宗に店員の少女は首を傾げながら接客を始める。
「どんな性能を求めますか?」
正宗は再び店の中を見渡す。
やはり、武器は一切無い。店員の少女に何を言っても用意出来るとは思えない。
「性能にはこだわりは無いのですが……これっと言った物と出会えず……」
「例えば持ち運びが楽とか、単純に強いとかは無いのですか?」
「う~ん」
唸る正宗は店員の少女は笑顔を絶す事無く正宗の答えを待つ。
正宗は手っ取り早い方法で済ませる事にした。
「では……オススメで」
正宗はこう言えばオススメの物を出す筈だ。そう考えた。出された物を気に居ればwcsの魔法石を使い武器に変換すれば良いし、気に入らなければ、断れる。しかし、店員の少女が告げたものは正宗が予想して居なかった答えだった。
「オススメは……私です」
「……はぁ?」
意味が理解出来なかった。
wcsは物に対して発動出来る武器変換能力であり、人間に対して使う事は出来ない。その為、店員の少女に対して使える筈も無い。
しかし、店員の少女は笑顔で正宗の返事を待つ。
正宗は対象法が分からないまま立ち尽くす。
「オススメは私です」
店員の少女は右手を胸に当てて誇らしげな表情正宗に再び告げる。
(聞こえなかった訳じゃないんだけど……)
更に分からないもしかしたら、電波系の女の子なのではと考える正宗に対して店員の少女は何も答えない正宗に不思議そうな表情を向ける。
「もう一度良いですか?」
「オススメは私です」
三度目聞いたが店員の少女の言葉に理解が出来ずに居た。
店員の少女は笑顔のままだ。
正宗はため息を一つ吐き出すとポケットから拳銃を避けて魔法石を取り出す。
「じゃあやってみても?」
(出来る訳も無いけど……)
wcsのシステムが組み込まれた魔法石は生物に対して効果を発動出来ない。
詰まりは正宗の目の前に立つ店員の少女を武器に変換する事は出来ない事を意味している。
しかし、店員の少女が武器変換に進めて来たのは自分自身。正宗はそれが出来ない事を示す為、見せる事にした。
店員の少女は正宗が取り出した魔法石を見つめる。
「この魔法石は思いの力を素材にします。考えて下さい。貴方が望む力を」
一応、正宗は店員の少女の言う通りに目を閉じて考え込む。
目を閉じていても分かる程の光が射し込む。
正宗はゆっくりと目を開ける。
光の正体は分からない。しかし、分かる事がある。
(……嘘だろ?)
正宗は握られた手をゆっくりと開く。魔法石は消えている。
店員の少女は正宗が目をつぶっている間、適当な物を差し出した可能性を考える。
「逃げたか……」
正宗は肩を落とす。
下をすると一本の剣が落ちていた。
wcsによって変換された剣なのかと直ぐに理解し、正宗は落ちている剣を拾い上げる。
その剣は普通の日本刀と分からない様に見える。
その剣には鞘が無い。刃を剥き出しにして歩ける筈も無く、正宗は店の中を探す為、剣を床に置き、探し始める。
やはり無い。元々分かっていたが無い。
「何を探しているんですか?」
正宗は背後から聞こえた声に耳を疑った。
間違えなく、この声は店員の少女の声だ。聞き間違える訳が無い。
正宗はゆっくりと振り返る。
そこには店員の少女が立ち尽くしていた。
「……人生で一度しか無いチャンスを無駄に……」
怒りを露あらわにするも直ぐに止まる。
店員の少女が現れたが、それと同時に落ちていた日本刀が無くなっていた。
「wcsで武器に変換されたのか?」
正宗は疑問を店員の少女にぶつける。
「はい」
店員の少女は真っ直ぐな瞳で一言。
しかし、正宗はまだ疑っている。
そんな正宗に店員の少女は見せる事にした。
店員の少女の体は薄くなり、緑の数式となり、凝縮させていく。
その直ぐの事だ。少女は日本刀に変換された。間違い無く、wcsによって変換されている事を初めて理解する正宗。
日本刀は刀の形から緑色の数式となり、店員の少女の姿に戻る。
正宗は目の前に立つ店員の少女に恐怖を覚え始める。
wcsを使い武器に変換出来たと言う事は目の前に立つ店員の少女は人間では無いことを示している。
正宗は目の前に居る店員の少女について考えるが大した事は思い付かない。
一つだけ心当たりがあった。店員の少女は突然ここに現れた。つまりそれが意味するのは……
「お前……幽霊だろう」
正宗は店員の少女を指差し、ドヤ顔で自信満々で告げる。
そんな正宗に対して店員の少女は笑顔を向け続ける。
「幽霊がこんなにはっきりと見えると思いますか?」
「見たこと無いからな……幽霊じゃ無いの?」
「違いますよ」
自信満々で告げた事を後悔しながら指をゆっくりと下げる。
しかし、幽霊が違うとなると正宗にはもう分からない。
その答えは目の前に居る店員の少女は話始めた。
「私はホログラムです」
「……えっ?」
戸惑いながらも正宗は理解する。
ホログラムなら壁をすり抜けてこの店にいきなり現れる事が出来る。
そして、正宗は人生で一度しか使用出来ないwcsの対象をホログラムに対して使用した現実に正解だったのか、間違いだったのか、分からなかった。
一つ分かるのはホログラムにwcsを使用した者を正宗は聞いた事は無かった。
目の前に居る店員の少女はこれから正宗の武器となる訳だが、使用方法はいまいち分からない。
「えっと……名前は?」
とりあえず、これから長い付き合いになるため名前の確認を行う。
「私には名前はつけられていません」
「……なるほど」
正宗は店員の少女ーホログラムの少女を見渡す。
正宗が今まで見てきたホログラムと違って透けてもいないし、声も音声で造られた物では無い様に感じる。それがあったからこそ正宗はホログラムの少女を人間と勘違いしていた理由でもあった。
「名前なら……剣の状態なら雷影神剣(デジタル・ブレイド)と呼んで頂けると嬉しいです」
「雷影神剣(デジタル・ブレイド)?……うん。分かった」
戸惑いながらもとりあえず頷きながら正宗は答える。
「それでこれからどうします?」
「これから……う~ん」
これからの事を全く考えて無かった正宗にとってその答えは直ぐに出せるものでは無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます