史官の闘い その1
斉の国に崔杼という重臣がいた。斉は封神演技で有名な太公望が建国した国である。崔杼は、眉目秀麗で才知があり、主君の覚えもめでたいという妬まれる要素充分な人間であった。実際一度地位を逐われた事もあり(その後復帰)、再度主君が崩御した時には、廃嫡されかけた太子を担ぎ上げ、ちゃっかり地位を上げるという、抜け目が無さすぎる男でもあった。しかし、担ぎ上げた太子が主君となると、崔杼と馴れすぎたせいか、皮肉なことに横暴さがまし、崔杼の妻を犯し寝とろうとした(こんなことまで史書には記載されている)。これに激怒した崔杼は、主君の殺害を計画。こんな男の計画に疎漏はなく、殺害は成功する。
その後政庁に参内した彼を待っていたものは、次の文言が記入された木簡であった。「
「自分は家にいた不審者を殺害しただけだ。これは
当時主君殺しは大罪である。これは法律的な問題ではなく、政治家生命や死後の審判等の霊的な問題による(この時代も貴族は法で罰せられない)。結果的に史官は処刑されてしまった。
翌日参内した彼が見たものは「崔杼弑其君」と書かれた木簡であった。これは前日処刑された史官の弟が書いた物であり、これを見た崔杼は弟も処刑した。その翌日参内した彼が見たものは、「崔杼弑其君」の木簡だった。それを見た時の気持ちはいかばかりであったろうか。それを書いたのは、史官のそのまた弟だった。崔杼はその史官の処刑を行わなかった。
この話の更に凄まじい所は、史官の部下が同じ木簡を持って参内しようとしていた事である。部下は、史官のそのまた弟が処刑されると思い、駆けつけたのだ。なんという執念。ここまでくれば、もう狂であると思う。この話を初めて知ったとき、私の感想は「すげー」という、呆れと尊敬が入り交じった物だった事を覚えている。
ちなみに崔杼の最後は悲劇的である。一族同士で塵のうえに、妻は死に自分も自殺するという当時最悪に近い最後であった。天上に唾したものは、罰を受けたのであろうか…。
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