年明け

冴音

副題 親友

『あけおめ。』 


ぽん、と存在が鳴った。


飾り気のない一言に、二分迷って返す。


『あけおめことよろ』


たった八文字に込めた重さ。それでも親友になら届くと思うのは、都合が良すぎるだろうか?


既読が付いて数分、しばらく意味もなく眺めていた画面。


不意に色が現れた。


……缶ビール。


呑もうぜ!ということらしい。

時計は深夜を過ぎた。普段こんな時間に呑んだりはしないが、親友とならバチは当たらないだろう。新年のめでたさに押し付けて、冷蔵庫から取り出したビールを撮る。



既読はついたが返事は来ない。

でもそれでいい。




  『あけましておめでとう』



言わなくてもわかるだろ?お前だし。


缶を掲げて煽る。




  『今年もよろしく』




黒くなった画面の向こうで、アイツが笑った気がした。

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年明け 冴音 @kako_saeto

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