えっ?童貞処女には感染しないゾンビウイルスが蔓延しちゃったかんじですか?

@SunMon

プロローグ、性交未経験者

 世の中には、2種類の人間がいる。

 それは、性交を経験したことのある人間と、そうではない人間だ。

 性交未経験者、つまり童貞と処女。

 彼らは現代日本において、無条件に虐げられる敗北者であることは疑いない。


 果たして、性交渉という行為に人生においてどれほどの価値があるのだろうか。

 しかし、ただ一度も異性との粘膜の接触をしたことがないというただそれだけの理由で、彼らは負け組のレッテルを貼られ蔑まれる。

 生まれてきた時には、皆そろって童貞処女であったということは微塵も頭に残らない。

 否、皆初めは性交未経験者であったからこそ、それを卒業した後には、まだ卒業できていないものを容赦なく下に見ることができるのだろう。

 その圧倒的な優越性は現代において、揺るぐことがない。

 たとえ玄奘三蔵や宮沢賢治やニュートンが生涯童貞だったからといって、性交経験者と未経験者とのその絶望的な上下関係に変化が起こることはないのである。

 なぜなら、生殖とは、子孫を残すという生命の根源の目的に不可欠なものであるからだ。

 子孫を作る、そのきっかけすら手に入れることができないということは、生物として劣等と看做みなされても仕方ないと言えよう。


 しかし、どうだろう?

 もしも、性交未経験者にだけ圧倒的に有利な状況が新たに生まれたら……。

 世界は、既存の価値観を変革し、新たな秩序を生み出すだろうか。

 果たして、人類はそれを許容し得るだろうか?


 その新秩序の種は、遠い南米の奥地で生まれて、今日まで誰の目にも触れることなく眠り続けていた。

 しかし、ある日、目を覚ましたそれは、瞬く間に世界中へ自らの分身を拡散させたのだった。

 そして、その悪魔は日本へもゆっくりと、しかし確実に、その矛先を向けていた。

 この時点で、すでに童貞と処女以外の人類に残された時間は僅かしかなかったのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る