れもん

朱の名を持つ青い夏空

100パーセントの黄色が映えて

指先でつまめるくらい

おやゆび姫の買い物かごには入らない


レモンイエローの正体は

傷んだ筆をダンボールに

錆びの季節に描いた柑橘

一晩後には代価の穴が空けられて

その葉は落ちることがない


照りつける陽射しの中の

ぽつんと置かれたお弁当箱

箱の中身は爆弾みたい

お昼までには誰かの死体が

詰め込まれるようなロッカーで


みんな寝落ちた祭りの夜は

世界がとろけて拡がっていく

そんな明け方、お菓子の匂いにつられることは

手をつないで、クッキーをつまみ食いした


淡い空へと飛び出すようで

おやつのひとつもないけれど

持っていけるのはあなただけ

そんなふうに

身体をとかして

わたしもきれいになりたいな


うらやましいよ

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