或る賢者の日常
モギハラ
まえがき はじまりの神話
遥か昔、神々はある目的の為、地上に塔を作った。
何よりも高くそびえ、天界にまで突き刺さる、決して倒れぬ塔を。
その塔を見事登りきった者は、見合った責と引き換えに、その望みを聞き入れられるという。
それを探した者は多く居た。それを見つけた者は僅かだった。
そして、それに挑んだ者は更に少なく、実際に登りきった者は数人だけだった。
塔には姿無き番人が居り、知を求めた一人の人間はひとつ、番人と約束をしたという。
そして塔を登りきったその人間は、この世の全てを記憶する力と同時に、その責を負った。
以来、その人間と、その役目を継ぐものを、人々は“賢者”と呼んだ。
賢者は自身が歴史書であり、優れた導師である以外は、他と変らぬ一人の人間だった。
しかし、その魂は盟約に縛られ、転生をしても責から逃れることは出来ない。
番人との約束が何だったのかは、どこにも記されていない。
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