わたしの地球滅亡

まりる*まりら

第1世界 ナメクジ

 雨が降っていた。

 ふと窓の外を見た。

 すぐそこのブロック塀に一匹のナメクジが這っている。

 雨の滴が、ナメクジのやわらかそうな背中をたたく。しばらくの間、それを見ていた。

 あんまりじっと見ていたのですぐには気が付かなかったのだが、それは少し大きくなったようだった。

 なおも、見つめていた。

 ナメクジは、大きくなっていた。あんまり水を吸ったのでふやけてしまったのかもしれない。手のひらくらいの大きさにはなっていた。

 雨はやみそうにない。気になるので見続けた。

 どれくらいたっただろう。やっぱりこれでもナメクジなのか。1メートルくらいはありそうだ。

 窓ガラスに密着していく。

 気持ち悪い。

 わたしはカーテンをひいた。その部屋を出る。

 これは夢かもしれない。

 数時間がたった。

 ぼんやりテレビを見ていたわたしは、家がミシミシと音を立てるのを聞いた。

 まさか、あのナメクジ……

 雨はまだ降っていた。

 わたしは傘をさすと、表へ出た。

 家は、巨大なナメクジに覆われようとしていた。隣の家も。

 このままでは家が潰されてしまう、と思っている間に、みるみるうちに家はナメクジの下敷きになって潰れた。

 ああ、お母さんがまだ中にいるのに!

 ナメクジはまだ大きくなっている。

 わたしは、逃げた。

 巨大化はだんだん早くなっているようだった。わたしもいつか飲み込まれてしまう。どうすればいいのだろう。

 わたしは走った。後ろで次々と家が潰れていく。誰も騒ぎ出さない。

 どうして?! 気が付かないはずはないのに!

 わたしは走って走って、小高い丘の上に登った。

 ナメクジは波打ちながら、大きくなってゆく。すぐにここまで来てしまうだろう。

 もしかすると、このナメクジは、町を飲み込み、日本を飲み込み、そのうち地球はすっかり覆われてしまうのではないだろうか。

 それなら、逃げても無駄である。

 雨は降り続く。

 わたしは壁のようにそびえるナメクジの体を目の前に見て、そこから先は知らない。

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