112話〜その力。そして、新たな武器‥後編
ブラットは目の前で立て続けに起きた事に対し頭がついて行けず困惑していた。
(えっと……確か、マリアンヌさんの水晶で、俺の何かを調べようとしてた筈だよな。でも、何で杖に変わったんだ?それに、この杖っていったい何なんだ?)
ブラットは杖をじっと眺めていた。
(この杖って……そういえば、マリアンヌさん。この杖を触ろうとして弾き飛ばされたみたいだけど。)
ブラットは辺りをキョロキョロと見渡して見た。
マリアンヌは馬車の側にガルドとハングと一緒にいた。
(ふぅ、良かった。怪我してないみたいで。でも、この杖ってもしかして俺にしか使えないのかな。)
ブラットはまた杖を見ていたが、気になり右手を伸ばし杖を持った…瞬間…ブラットの身体に電気が走った。
「うわあああぁぁぁぁーーーーー。」
その衝撃と余りの痛さにブラットは叫んだ。
ガルド達は叫び声を聞き慌ててブラットの側に駆け寄った。
すると、ブラットは杖を右手に握ったまま、うずくまり涙を浮かべていた。
「ブラット。これは、何があったってんだ!?」
ガルドはブラットに触ろうとした。しかし、身体中に電気を帯びていた為、触る事が出来ず心配そうに見ていた。
「これは、どういう事なの?何があったっていうの?身体中に、これほどの電気を帯びているなんて……。」
マリアンヌは不思議そうにブラットを覗き込んだ。
「……ふぅ、今度は何なんだ?さっきは、杖を作り出したと思ったら、今度はその杖を握ったまま身体中に電気を帯びて倒れ込んでいるって……。」
ハングはそう言いながら覗き込み溜息をついた。
「何がブラットに起きたっていうの?」
ヴィオレはブラットを心配そうに覗き込んでいた。
「これは、どうしたというのじゃ。何故杖を握ったまま……うむ、この杖はいったい?だが、ブラットをこのままにしておく訳にもいかんじゃろう。しかし、この身体中に帯びている電気をどうにかせねば。うむ、どうしたもんかのぉ。」
ドルマノフは何か方法は無いかとブラットの身体を見回した。
「いったい。ブラットの身に何が……。」
サアヤはブラットを不思議そうに覗き、その後何が起きたのかと考えていた。
「ブラット。貴方の身に何が?この杖は……。」
フェリアはブラットの杖に右の掌を恐る恐る翳して見た。
するとフェリアの身体に電気が走った。
「ああぁぁぁーーーー。」
そのまま倒れ込むようにフェリアは気を失ってしまった。
ヴィオレは叫び声がした方を見た。
「あっ、フェリア!?」
フェリアは少しの間だけ身体中に電気を帯びていたが直ぐに消えた。
しかし、気を失ったまま起きなくなった。
「これは、どうなってんだ!?」
「何故、この人が気を失っているのでしょうか……。」
マリアンヌはフェリアを見た後ブラットを見た。
「これは……フェリアの影響なのでしょうか。まだブラットの身体中に電気は帯びていますが、先程よりは苦しんでいないようですが。それに、この人のように気を失っているようですね。」
「マリアンヌ様、これはいったい。次々と何が起きているというのですか?」
「ハング。それは、私にも分かりません。ただ言えるのは、この状況はただ事では無いという事だけです。」
「うむ、そうじゃな。この2人に何が起きたのか。我々はこのまま見守るしか無いかもしれんな。」
「はい。確かに私達では、何も出来ないかと。」
サアヤはフェリアとブラットを交互に見ながら考えていた。
ガルド達は少しの間考えていたが、2人に触る事が出来ず急遽ドルマノフが2人の周りに大人数でも入れるぐらいの大きさの濃い緑色の四角いテントを張った。
「とりあえず。少しの間は、これで何とかなるじゃろうが。さて、どうしたものか。」
そして、ガルド達はしばらくその場でどうしたら良いのか考えていた。
ここはブラットの夢の中。ほんの数分前の事。ブラットは杖を持ち身体中に電気を帯び気絶していた。
そして、自分の夢の中をブラットはさまよっていた。
……“ん?ここはどこだ。何か前にもここに来た事があるような気がするんだけど。”
ブラットは辺りを見渡してみるとそこは何処かの施設の何も無い真っ暗な部屋で何処にも扉や窓などは無かった。
そして、そこには1人の男の子が身体を震わせ泣いていた。
“あれはいったい。それに何なんだ。やっぱり、ここに来た事がある気がする。まさか、あの男の子って……。”
ブラットは近づいて行こうとしたが、そこに誰かと神らしき者が現れたので、そのまま様子を伺う事にした。
…『ゲリュウデス様。いよいよ、この力を手に入れる手段を見つける事が出来。首尾よくさらって来る事も出来ました。』…
…“うむ…ネリウス。だが、分かっていると思うが、ドルマノフが封印した為、その力を直ぐに手にする事が出来るかは分からん。”…
ネリウスとゲリュウデスはそう言いながら幼きブラットを別の場所に連れて行った。
“これって……これが、レオルドが言っていた事なのか……。”
ブラットは辺りを見渡した後、ネリウス達の後をつけその光景をしばらく見ていたが、急に意識が何処かに飛ばされた。
“ここはどこだ?”
そこは何処かで見た事がある森の中にブラットはいた。
“何か雰囲気は少し違うけど。ここってシェイナルズの洞窟がある森の中なのか。前に親父とその近くまで行った事があったけど……。”
ブラットは辺りを見渡していたが、そこに幼きブラットが1人で誰かと話しながら歩いているのが見えた。
“あれって、やっぱ俺だよな?でも誰と話してるんだ?”
しばらくその様子を見ていた。そしてブラットはドルマノフに聞いた真実を知った瞬間。また意識が何処かに飛ばされた。
“ん?今度は何処なんだ。俺の家?”
ブラットは辺りを見渡して見た。
…『カトレア。男の子だ……。』…
…『ええ、名前はもう決めているのですか?』…
…『ああ。決めたというよりも。グランワルズがな、良い名前を考えてくれた。』…
…『そうなのですね。それならば良い名前でしょうね。それでこの子の名前は?』…
…『ブラットだ。ブラット=フレイ。悪くねぇ名前だよなぁ。』…
…『確かに、良い名前ですね。ただ、名前負けしなければ良いのですが。』…
“俺の名前の名付け親って……親父と契約したっていう、グランワルズ様って事だよなぁ。だけど、何で自分の知らない過去を夢の中で見てるんだ?”
そう考えていると何処からともなくフェリアの声が聞こえて来た。
“……ラット……ブラット。聞こえますか?”
“フェリア。ここにいるけど、何で俺の夢の中に?”
“あっ、ここにいたのですね。その事については後で詳しく話しますが。ここはやはりブラットの夢の中なのですね。”
“ああ、そうみたいだけど。何でまたこんな夢を見てるのか不思議なんだ。”
“確かにそうですね。あっ!待って下さい。あれは……”
フェリアに言われブラットは、赤子のブラットの方を見た。
すると、赤子のブラットの頭上に黙々と黒い物体があり、その周りだけ結界が張られ、そこから数名の声が聞こえて来た。
…“なるほど。この赤子が、神王様が選んだ新しい国の王となる者という事か。”
…“そうみたいですね。ですが、やはり我々は、この者を新しい国の王とする事を認めたくはありません。”…
…“確かに我々は魔族が嫌いだ。それなのに何故だ!ガルドは魔族の元女王のカトレアと……。”…
…“そうだな。1番気になるのは、何故側にグランワルズがついていて、これを阻止出来なかったのか。”…
…“本当ですね。さて、どうしましょうか?”…
…“そうだな。我々の手で今のうちに始末といきたいが。流石にそれも出来ない。”…
…“それならば、我々の手を汚さずに、この者に術をかけてはどうでしょう。”…
…“うむ、なるほどな。だが、普通の術では直ぐに気づかれ解かれてしまうが。”…
…“それならば、我らの術を複数とその鍵となる者達にも術をかけてはいかがでしょうか。”…
…“なるほど、それはいい考えだが。我々では近づけない者もいる。そうなるとその親しい者の手を借り事を進めるとするか。”…
その数名の声が聞こえなくなり黒い物体も消えた。
“フェリア。今のって……。”
ブラットはフェリアを見ると一点を見つめ何かを考えていた。
“そ、そんな事が……複数の神が、この事に関わっていたなんて……でも、あの声は何処かで……。”
“フェリア。俺って何なのかな。今の話を聞いていて、本当は産まれて来るべきじゃなかったのかって思えて来たんだけど。”
“ブラット!貴方はこの事から逃げるのですか?”
“逃げる?でも、そう聞こえるって事はそうなんだろうな。”
“でも、貴方の気持ちも分からなくもありません。ですが、この事を乗り越えて行かなければならないのも事実なのです。”
“そうだな。多分、こんな弱音吐いたら親父に殴られるだろうしな。”
そう話をしているとブラットとフェリアの意識が急に意識の中から外にだされた。
……フェリアは目を覚まし起き上がり辺りを見渡すとそこにはガルド達が心配そうに見ていて横にブラットが寝ていた。
ブラットの身体に帯びていた電気は消えていた。
「大丈夫なのか?フェリア。」
「ええ、大丈夫ですが。ブラットは?」
「何とか、大丈夫そうだが。何があったんだ?」
フェリアはブラットの夢の中で見て来た事を事細やかに話した。
ガルド達はその話を食い入るように聞いていたのだった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます