108話〜母の行方

 ここはマリアンヌの屋敷のテラス。


 ハングはあれから直ぐにマリアンヌの元に来ていた。


 そしてマリアンヌにドルマノフとレオルドに聞いた話を事細やかに話した。


「なるほど、そうだったのですね。ハング、その新しく作られたという城に、ブラットはレオルドと向かうと言っていたのですね。」


「はい、そう言っていました。」


「ハング……話は変わりますが。ガルドに会ったのですよね?」


 そう聞かれハングは下を向き、


「……はい。」


「何か言っていませんでしたか?」


「言っていたというか……歳と母の事を少し聞かれただけです。ただ、その後何かを言おうとしていたように感じましたが、黒龍の事もあり、その後も色々あった為、その事には触れる事はありませんでした。恐らくは、気づいたかと。」


「ふぅ、そうですね。昔からあの人は多くは語らず。本心を余り打ち明けず。1人で何でもこなしてしまうような人でしたが……そうなるとハング。ユリィナの事は、まだ伝えていないのですよね?」


「はい、話す機会を逃してしまい。」


「そうですか。ガルドは、その後ユリィナがどうなったのかを知りません。いえ、私はユリィナに口止めされていました。貴方の事も……。」


「マリアンヌ様。それで母の行方は未だに分からないのですか?」


「ええ、貴方を産み私に預け、ユリィナは賢者になる為に、いえガルドの力になりたく。スカイネーブルに向かい賢者になった。しかし、その後の足取りがつかめないのです。そういえばハング。レオルドがスカイネーブルから逃げて来たのは、今から約7年前でしたよね?」


「はい、そう聞きました。」


「ユリィナは賢者になる為、スカイネーブルに向かい賢者になり、しばらくはそこで仕事をしていたらしいのですが、足取りが全く分からなくなったのが、やはり今から約7年前。」


「それってまさか……。」


「レオルドとは直接関係ないかも知れませんが、何らかのトラブルに巻き込まれた可能性は高いと思うのです。ユリィナは昔から人が困っているのを見過ごす事が出来ない人でしたから……。」


「そうなのですね。じゃ、まだ生きているのか死んでいるのかも分からないと……。」


「そうなりますね。そうなるとガルドは貴方の事に気づいた。それならば、ユリィナの事をガルドに話すべきですね。それに、これはガルドにも。いえ英雄王ガルドに手伝ってもらわないとならないでしょうからね。」


「では、ここに連れて来た方がいいのですか?」


「いいえ、私が直接会いに行きたいと思います。」


 そう言うと奥の方からヴィオレが来て、


「奥様、私も行きたいのですが……。」


「傷は大丈夫なのですか?」


「はい、傷の方は大した事ありません。先程の話を聞いてしまったのですが。確かに、ハングが言った事が事実ならば、先程マリアンヌ様に話しましたが私はエリーゼに刺された直後、誰かが私に何らかの魔法をかけ助けてくれました。もしかするとエリーゼに気づかれないようにレオルドが私に魔法かけてくれたのかもしれません。」


「そうなのですね。近くにいて、エリーゼに気づかれずにそれが出来るとすれば賢者であるレオルドかもしれませんね。」


「それでは、そろそろ向かわれた方がいいのでは?」


 そうハングが言うとマリアンヌとヴィオレは頷いた。


 そして、マリアンヌとヴィオレは馬車に乗り、ハングが御者として操り、ブラット達がいる森の中の空き家に向かったのだった…。

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