第1章〜動き出す運命…

15話〜職業

 ブラット達は、あれから村を出てしばらく歩き、ラベンダー草原にいた。


 ここは名前の通りラベンダーの花が一年中咲き誇る不思議な場所だった。


 ブラット達はここでひとまず休憩をしていた。


 するとサアヤがある提案をしてきた。


「なぁ、お前たち。こんな所で、のんびりしてる場合じゃないだろう。それにこの辺の魔物なら、何とかレベル上げにはなるんじゃないのか?」


「確かにそうですね。しかしどうしましょう?私には正式な職業と言うものがありませんし。ましてやブラットも職業についてない筈です」


「そう言えば、確か俺も職業ついてなかった筈だけど?」


「んー、そうだなぁ。グレンちょっと私の前に立ってくれるか?」


「ああ、構わないが何をするんだ?」


「ああ、いいからこっちに来い!」


 グレンはしぶしぶサアヤの前に立った。


 サアヤはグレンの頭の上に手の平をおき目を閉じて一息つくと、グレンの頭の上に、


 ✴︎レベル1 飾り職人 武器:素手 防具:皮の服、皮のズボン、皮の帽子 アクセサリー:親からもらったお守り✴︎


 と表示された。


「皆にも見えるか?グレン、お前の頭の中に何かうかんでこないか?」


「レベル1の飾り職人って……」


「まぁ、とりあえず職があるだけでもいいとしないとな。それで、皆は見えてたよな?」


「なるほど、あれを使ったのですね。スカイネーブルの者でもそれを使いこなせるのは数少ないはず」


「ああ、流石はフェリア。そうこれは、直接脳に刺激を与え、その者の能力を測る。そして能力を引き出すのも可能だ!」


「じゃ、今やったことは、能力をは測っただけだよな?」


「ああ、そうだが?」


「じゃ、今度は能力引き出してくれないか?」


 サアヤは呆れた顔で、


「あのなぁ、そう簡単に能力は引き出せはしない。そんなに、今の飾り職人が嫌なら、次の街で職業変えたらいいだろう!?」


「はぁ、仕方ないか、分かったよ」


「まぁ、それでなんだが。ブラットにも、ちょっとやってみたいがいいか?」


「うん、いいけど。どうなんだろうなぁ」


 サアヤはグレンにしたと同じ事を、ブラットにもしてみた。


 ✴︎レベル1 遊び人 武器:(使えない)聖剣 防具:旅人の服、旅人のズボン、旅人の帽子 アクセサリー:無し✴︎


 と表示された。


「おい!?いくらなんでも遊び人はないだろう。てか、何か笑えるんだけど」


「まあ、こんなもんか。でも、一応これ職業なんだよな?」


「ああ、一応は職業なのだが。はて?遊び人とはなぁ。いや、もう一度ブラットやってみたい事があるが?」


「構わないけど、今度は何をするんだ?」


 サアヤはまたブラットの頭の上に手を乗せ今度は前よりも何かを念じているようだった。


 するとブラットは、「グアァー」と叫び頭を抱えその場に倒れた。


 サアヤとフェリアは、ブラットの目の前にきて、


「サアヤ、これはもしかして、あれをやったのですか?」


「ああ、ただこれは余りやりたくはなかったが、流石にあれは不味いだろう。これからもな」


「確かに、アレではこの先どうしようかと一瞬思いました」


「じゃ、早速起こすか。おい起きろ!!」


「うっ、何か頭が痛いんだけど」


「まぁ、痛いのは仕方ないが。とりあえず、もう一度、お前の能力見てみる」


 サアヤはブラットの頭の上に手を乗せ調べ始めた。


 ✴︎レベル1 遊び人→見習い魔導士 武器:(使えない)聖剣 防具:旅人の服、旅人のズボン、旅人の帽子、アクセサリー:無し✴︎


 と表示された。


「ふーん、見習い魔導士ねぇ。でもまあ、良かったよ。普通に能力が変えることができて」


「もしかして、今までこれ使って成功した事がないのですか?」


「まぁ、全く成功しなかった訳じゃないけどな。ははは……」


 サアヤは苦笑した。


「まぁ、とりあえずありがとうサアヤ。これで一応俺の職業が決まったし、後はレベル上げだよな」


「武器はどうする気だ?」


「あっ、そういえば魔導士の武器持ってなかった」


「私のでよければ、使ってない杖ならあるけど?」


「いいのか?」


「うん、どうせ捨てようと思ってたからタダでいいよ!」


「捨てるってどんな杖なんだ?まさか!?呪われた杖って言わないよなぁ?」


「あのねぇ。いくら私でも、そんな物騒な物は、その場で処分します!」


「あっ、ごめん喜んで使わせていただきます!」


 コトネは鞄の中から少し古ぼけた杖を取り出しブラットに渡した。


 ブラットはそれを受け取り、


「それにしても、この杖結構使い込んでるな」


「それね本当は、私が最初に自分のお小遣いで買った杖でね。なかなか捨てられなくて、とっておいた物なんだ」


「ちょっと待て、そんな思い入れのある大事な杖を、本当に、タダでもらっちゃってもいいのか?」


「そうだね。でもブラットが大事に使ってくれるならいいかなぁ」


 ブラットは自分の財布からお金を出して、


「いや、やっぱりただじゃ悪いから。これ……」


「コトネ。いい加減にしろ!?それと、ブラット。お前も人を少しは疑ってかかれ!そうでないと、コトネみたいのに引っかかって酷い目にあうぞ!!」


「じゃ、この杖って……」


「それは、恐らくその辺に落ちてたガラクタだろう。何の効力持たない筈だ。試しに使ってみろ!」


「分かった。それでどう使うんだ?」


「そうだった、お前は初心者中の初心者だったな」


 コトネがブラットに杖の使い方と使える呪文などを教えた。


 そしてブラットはコトネからもらった杖で、試そうとした。


「ごめん、やっぱり本当の事言うね。サアヤが言う様にそれは、その辺に落ちてたガラクタで……」


 コトネが最後まで言いきる前に、ブラットはその杖を使って。


 《ファイヤー ボール!!》


 呪文を唱えると、使えない筈の杖から何故か炎の玉が勢いよく放たれた。


 その炎の玉はグレンに当たりそうになり、


「……ブラットお前わざとじゃないよな?」


「それは……」


「おい、普通そこは否定する所だろうが⁉︎」


「ちょっと待て、この杖は何の効力もない筈なのに何故力が使えた?それに、何故あんなに威力が出たんだ?」


 フェリアが杖を持って見た。


 そしてフェリアは杖を持ち何かを感じサアヤに渡してみた。


 サアヤはやはりそれに気がつき、


「ブラット。ちょっと、気になることがあるんだが。その辺の、適当な枝を取って来てくれないか?」


 ブラットは近くに落ちていた枝を持って来た。


「ブラット、今からある実験をしたい。持って来た枝の両端を持って、いいと言うまで握っていてほしい」


 ブラットは頷きサアヤに言われた通りにやった。


 そして数分後ブラットはサアヤに言われ握っていた枝を渡した。


 そしてその枝をコトネに渡し杖のように使うように言った。


 コトネはしぶしぶ枝を使い、


 《サンダーボルト!!》


 と呪文を唱えた。


 すると枝から雷の魔法が放たれ、危うくフリックに当たりそうになった。


「お前のはわざとだよな。絶対!?」


「あっ、ごめんフリック。いやあ〜、今回のは本当に間違いだからね」


「やはりこれは……」


「フェリアもそう思うか?」


「あっ、そうそうこの枝どうしちゃったの?」


「あっ、これって?どういう事なんでしょう」


「ブラット。それは、何故かは分かりませんが。サアヤのおかげで、何も無い所から力を生み出す能力を手に入れたかも知れません」


 そう言われしばらく考えていたが、ブラットは馴れない力を何度も使用したせいか、急に体の力が抜け、その場に倒れこんでしまった。

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