11話〜旅立ち前夜の晩餐

 家の中では、ブラットとコトネは何故か一緒に食事をしていた。


 サアヤ達が扉を開け中に入り、その光景を見るなり、


「お前は一体何をしているんだ?」


「あっ、サアヤこれはね。お腹が空いたってブラットに言ったら作ってくれたんだよ」


「たく!!お前は、緊張感ってものが無さ過ぎだ」


「もし、良ければ食べないか?皆の分もあるから」


「あのなぁブラット。お前は分かってるのか?」


「……何が?」


「お前なぁ。自分が狙われてる、この最中にだ!のんびり食事してるっておかしいだろう」


「だけど、お腹空いてたし。コトネもお腹空いていたみたいだから」


「まぁ確かに、お前達が食べているのを見ていたらお腹が空いてきた」


 すると、グレンのお腹がなった。


「ほほう…お前の腹の辺りから、何か聞こえたような気がするんだが?」


「うっ、確かに腹は空いてるみたいだな」


「ふふ、ではこうしましょう。今の所は大丈夫そうですし、色々と話もありますので、お食事をしながらでも」


 サアヤ達は頷き席についた。


 ブラット達は食卓を囲みながら話を始めた。


「そうそう、自己紹介がまだだったな。私は、サアヤ=ワーズ。そしてこいつが」


「俺は、フリック=マグナだ!」


「私達2人は、今は訳あって傭兵ギルドで働いているが、本当は神々の住む国に1番近いと言われている神秘の都スカイネーブルで聖剣士をしていた」


「だから、彼の事も、そして私が何者かも、気がついたという事なのですね」


「なになに、なんのこと?あっ、そうだ私はコトネ=ハープです!冒険者ギルドに所属してま〜す」


「相変わらず、お前は空気が読めないみたいだな」


「だって、自己紹介してなかったんだもん」


「こいつに、空気が読める訳がねぇだろう」


 フリックがそう言うとグレンはブラットをみて、


「空気が読めない奴なら、ここにもいるぜ。なぁブラット!」


「俺がか?」


「ああ、お前以外誰がいる!」


「そうなのか。自分では気がつかないもんだなぁ」


「おいっ!?何でお前は、そこで納得するんだ?そこは普通否定する所だろが」


「そっか、なるほど」


 ブラットがそう言うと皆は呆れた顔になった。


「まぁ、それはいいとして。私達がここに来たわけなんだが、フェリア貴方に聞きたい事がある」


「聞きたい事とは、スカイネーブルで起きた異変の事ですね」


「ああ、そうなんだが。その事とフェリアが人間の姿になっている事と関係があるのか?」


「関係あると言えばあるのでしょうが、直接は関係はないのです。これはブラットの為に、人間の姿になったまでの事ですから」


「ブラット、お前は一体何者なんだ?」


「何者って、言われてもなぁ。自分でさえ納得してないんだよねぇ」


「サアヤは、ブラットの事が気になるのですか?」


「ああ、気にならない方がおかしいだろ!城下街で起きたあの件、コトネはそれを見ていた。そしてフェリアが直々にブラットにつくって事は、普通の奴ならありえない事だ!!」


「そうですね。貴方達になら事実を話しても問題はないでしょうが、コトネ貴方に聞きます。回答次第では、貴方の記憶を消さなければなりませんので」


「この前の事なら、誰にも話すつもりはないけど」


「その事もですが。今から話す事も、誰にも言わないと誓って下さい」


 そう言われコトネは頷き、フェリアは今起きている事をサアヤ達に話した。


「なるほど。ブラットお前がなぁ」


「そうなると、最終的にはスカイネーブルに行かないといけないな」


「そうなりますね。しかし、ブラットの今のレベルではまだ無理なのです。その為私が人間の姿で守護しないと」


「そう言う事か、そうなると他にも助っ人が必要じゃないのか?」


「確かに多い方が助かりますが」


「それなら、私達が護衛するがどうだ?まぁ、流石にタダとはいかないがな!」


「俺は、構わないが」


「ふぅ〜ん、私はお金いらないけど、楽しそうだからついて行ってもいいかな?」


「大丈夫だと思いますよ」


「やったー、あっそうだった。私頼みたい事があったんだよね」


「頼みとは?」


「この前、ギルドの依頼で洞窟に仲間と行ったんだけどね。洞窟の中を歩いていたら、仲間が1人2人と消えて、まるで生きてる様な洞窟だったんだよね」


「本当に、そんな摩訶不思議な洞窟が存在するのか?」


「本当なんだから、行ってみると分るよ」


 話していると扉が開き誰かが入ってきた。


「ほう。歪みの洞窟が、この辺りにも出現したとはな」


「親父、もういいのか城の方は?それより、歪みの洞窟ってなんだ?」


「歪みの洞窟とは、異次元から現れると言われている洞窟です」


「ああそうだ。流石はフェリアだ。まさか、こんな近くに、それも、被害者が出てるとはな」


「確か以前出現した時には、ガルド、貴方が全部封印したのではなかったのですか?」


「確かにそうなんだがなぁ……」


「貴方は、もしや、英雄王ガルド様では?」


「ほお、まさか、俺の事を知ってる奴が、他にもいるとはな」


「光栄です!まさか、こんな所で会えるなんて、俺達の街では、ガルド様の活躍が伝説になっているんです!」


「なるほど、そう言う事か。そうなると、お前達2人はスカイネーブルの出身って事だな?」


「はい、そうです。そして、今スカイネーブルでは異変が起きているのです!」


「異変だと?やはり、フェリアが言っていた運命が狂っている事と関係がありそうだな」


「ええ、関係していると見て間違いないと思われます」


「じゃ、俺が早く強くならないと不味いよな?」


「そういう事になりますね。ガルド、貴方に頼みたい事があります。その洞窟に行き封印をお願いしたいのですが?」


「そうだな。あの洞窟は、あのまま放置しておくと多くの犠牲者が出る。明日の朝、お前達がここを出て行った後、俺はそこに行くとしよう」


「ありがとうございます。では私は、この辺で明日の為に、休みたいと思います」


 フェリアは奥の部屋に入って行った。


「ねぇ、フェリアって女神様なんだよね?」


「ああ、そうだが?」


「女神様でも、眠るのかな?」


「どうなんだろうな?」


「恐らくは、人間の姿になってるせいじゃねぇのか?」


「なるほど、そういう事なんだね」


 コトネは納得しサアヤ達はその場で解散した。


 そして、外の傭兵の群勢は、ここに来る前にガルドが皆片付けたとのことだった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る