遊戯王カード

 身辺整理をしていたら、昔よく遊んでいた遊戯王カードが入っている箱を見つけた。中には、自分が今まで集めていたカードが所狭しに詰まっていた。何の装飾もない普通のカードから、ギラギラとホログラフィックが施されているカードまで、かっこいい絵柄のカードから、かわいらしい絵柄のカードまで、種々様々ある。中にはきわどい服を着ているお姉さんが描かれているカードもあった。

 

 遊戯王にハマっていたころ、自分は特に『ドラゴン』が好きで、攻撃力の強いドラゴンをひたすらに集めていた。絵がださいとか、レア度が高いとかはどうでもよく、ただ、一番力を持ったやつが欲しかった。


 遊戯王はただカードを集めるだけではない。集めたカードで誰かと勝負をする。いわゆるデュエルというものだ。デュエルで勝敗を決める。


 アニメ版遊戯王では、闇のデュエルといって、負けた方は魂を吸い取られるという恐ろしい設定もあった。もちろん、現実世界ではデュエルに負けたところで死ぬわけではない。ただ、子どもの世界はシビアで、遊戯王の強さが、友だち同士のカーストを決めることもある。だから、遊戯王はある意味、ババ抜きやUNOとは違う、もっと冷酷で、し烈なカードゲームなのだ。


 ちょうど、パソコンのキーボードくらいの面積、それが二つ分用意できる場所であれば、どこでもデュエルはできた。部屋の床はもちろんのこと、公園に設置された木のテーブルの上や、ザラザラしたアスファルトの上だって例外ではない。二人がカードを置いた瞬間に、そこは決闘場となるのだった。


 カードを置いたり、めくったり、裏返したり。たったそれだけの行為で、子どもの頃の私はすでにデュエルの中に入りこんでいた。弱いカードを犠牲に強大な力を持つドラゴンを召喚し、そのドラゴンが灼熱の炎を噴き出して相手のモンスターを殲滅する。耳を劈くような咆哮と轟くほどの地響きが伝わる。そんなドラゴンも相手の一撃で無惨にも倒されることもある。そんな情景が、頭の中を満たしていた。たくさんのデュエルを通してボロボロに擦り切れた切り札が、今か今かと召喚されるのを待ちわびていた。


 いつしか、遊戯王はやらなくなっていた。この日を境に遊戯王とは決別だ、と宣言した覚えもない。気づけば箱にすべて入れられて、部屋の隅でほこりをかぶっていた。


 今も、遊戯王は現役である。最近では、特殊なホログラム機能によって、カードをセットすると、画面上で実際にモンスターが飛び出してくるんだとか。羨ましいし、さぞかっこいいことだろう。技術の進歩は目覚ましい。


 でも、そんな特殊機能がなくても。使い古されて、四隅が丸まったカードだって、自分にとってはれっきとした遊戯王カードなのだ。


 「これ、集めるのに一苦労したんだよな。今だったらネットで簡単に買えるんだろうけど。いくらくらいなんだろ」

 

 そう思いながら、自分が持っているカードに誇りを持ちながら、ときおり、ネットで相場を確かめたりするのだった。


 「え、こんなに高く売れるの。お金が足りなくなったら……」

 「(おい)」

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