7話〜カジノでとんだ騒動《中編》

 ここはカジノ。クロノアはここに来ていた。


(とりあえずは、そうだなぁ……ポーカーでもやるかぁ)


 ポーカーのテーブルに座ろうとすると、クロノアの後ろの方で声がしてくる。


『ちょっと、どうするんだ? もう金が底をついたんだけど!』


 そう言われハウベルトは、ムッとした表情で応えた。


『ディアナが、みんな黒に賭けたからだろう!!』


 ハウベルトは怒鳴る。そして二人は、言い合いを始めた。


 それをみてクロノアは呆れ顔になる。


『もしかして二人共、所持金が全部なくなったなんて言わないわよね?』


 そうクロノアが問いかけるとディアナとハウベルトは、まずいと思い俯いた。


『ハァー……やっぱりかぁ。てかそもそも、なんでそこまでやるかなぁ』


 クロノアはそう言い頭を抱える。


『だけど、いくらなんでも……おかしい』


 ディアナはそう言い、ルーレットのテーブルに視線を向けた。


『ずっと黒に賭け続けてるのに、一度も勝てないのは絶対に変だ。クソッ! もう少しお金があれば』


 興奮気味にそう言いディアナは、ハウベルトを睨みみる。


『俺が言った通りやってれば、絶対に勝てた!!』


 そう言うとハウベルトは、チラッとクロノアをみた。


『えっとね……これは、飽くまでも運。流石に、深追いしない方がいいと思う。だけど、そうだなぁ。ディアナの言う通り、なんか変だね……私も気になる』


『ん? 確かに言われてみればそうだな』


 ハウベルトはそう言ったあと考える。


(これって、もしかしたら……)


 そうお思いクロノアは口を開いた。


『私がやってみようか? ちょっと、気になることがあるから』


『クロノア様が?』


『うん、ディアナ。ちょっと、試したいことがあるの。ただ、できるか分からないけどね』


 そう言うとクロノアは、ルーレットのテーブルに座る。そして赤に、半分の十枚を賭けた。


  『さて、赤でいいかな?』


 そうディーラーの男性に問われクロノアは頷く。


 それを確認したディーラーの男性はルーレットを回した。するとその結果は黒だ。


 その間クロノアは、ずっとディーラーの男の手元を観察していた。


(なるほどね。そういう事かぁ……)


 そして何かに気づき、軽く笑みを浮かべる。


『何か分かったの?』


『うん。まぁ、とりあえずみてて……もう一度やってみるね』


 そう言いクロノアは、左手をテーブルの下に翳して右手をテーブルの上に置いた。


『次は、そうだなぁ……また赤でお願い』


 クロノアは残りの十枚を賭ける。


 それを確認したディーラーの男はルーレットを回した。するとクロノアはテーブルの下の左手をそのまま動かさず……。


(《フリーズ!!》)


 と、唱えた。


 その後ルーレットが止まる間際、黒に入りそうになったのを視認する。


(《ブリーズ!!》)


 そう唱えると思惑の通り、赤に玉が転げ落ちた。


 それをみてディーラーの男は怒りを露わにする。


『お前、何をした!?』


『私は、何もしてないけど?』


 クロノアはそう言い恍ける。


『そんなはずはない! 何かしなければ……』


『なるほどね。私は、イカサマらしき装置が下にあったから凍らせただけなんだけど』


『イ、イカサマって……証拠があるなら言ってみろ!?』


 みえないようにディーラーの男は、左手でテーブルの下の装置らしき物を外して隠そうと手を伸ばした瞬間。


 《ウインドウ チェーン!!》


 と、クロノアは呪文を唱えた。


 ディーラーの男は、風の鎖で縛られて動けなくなる。


『なんのつもりだ!』


 クロノアはその場から、ディーラーの男の方へと歩み寄る。そして、テーブルの下にある物を外してみせた。


『これって何かなぁ……私、分かんないんだけど。教えてくれない?』


 そう言いクロノアは、ディーラーの男の前にあるテーブルへと装置をおく。


『……』


 ディーラーの男は無言のまま、その装置から目を逸らした。


『そうなんだぁ。飽くまでも、イカサマを否定するのね!』


 そう言うとクロノアは、ディーラーの男を睨みみる。


『これって、手の込んだ魔法道具じゃないのかな? 手を翳しただけで、動く的なやつだよね』


 ディーラーの男の顔色が変わった。すると、周りの従業員もグルだったらしくクロノアへと近づいてくる。


『フンッ、そこまで分かっていて……聞くとはな』


 そう言うとディーラーの男は、周りの従業員に指示を出した。


『なら悪いが、このことをその辺で言われても困る。お前と、そこの二人の仲間も……一緒にお寝んねしてもらおうか!』


 するとディーラーの男と従業員たちは、クロノア達に攻撃を仕掛ける。


 ディアナとハウベルトは、なんで巻き添えになっているんだと思った。だが、仕方なく攻撃体勢に入る。


 クロノアは、すかさず杖を翳した。


 《トゥー フリーズ!!》


 そう呪文を唱えると、青い光が放たれる。そしてディアナとハウベルト以外の者を、一瞬で凍結させた。


 それを確認するとクロノア達は、長居はまずいと思いこの場を離れようとする。


 だがその時、急に辺りが光だした。するとクロノア達の目の前に、黒いローブを纏った女が立っている。


 それをみてクロノア達は、身の危険を察知し身構えた。


『ほう……こっちは、かなり判断力があるらしい』


 そう言うと、不敵な笑みを浮かべる。


『それなら、そっちの二人には……少しお休みしていてもらう。それに後ろの連中も面倒なので、寝ててもらった方が良さそうだな』


 黒いローブの女は、両手を目の前に翳した。


 《スリープズ!!》


 そう呪文を唱えると、クロノア以外の者たちが眠りにつき始める。


(クッ、このままではクロノア様が……なんという事だ! アタシが、不甲斐ないせいで…………)


(クソッ! 俺はこの状況で、何もできないのか? このままだとクロノア様が……申し訳ない…………)


 そう思うも二人は、その場で倒れ眠ってしまった。

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