164話〜南側の祭壇〜チェンジ〜
ここは南側の祭壇。周囲の揺れは衰えることもなく、一層激しさが増し今にも城が崩れそうだ。
ノエルの目の前では、既にガインが能力にのまれそうになっていた。
そんな中ノエルは、誰もあてにならないと思い急に恐ろしくなり涙ぐむ。
(どうしよう。私……ヒクッ、このままじゃ……)
そう思った瞬間__ノエルの足元が光る。と同時に、一枚のアイテムカードが現れた。
それに気づきノエルは、そのアイテムカードを拾いみやる。
(これって……)
カードに記された文字を読もうとしたその時、ノエルのカードを持つ手元が激しく閃光した。するとノエルは、光と共にその場から消える。
その後ハクリュウがノエルと入れ替わり現れた。
そうハクリュウは、予め何かあった時の保険に、チェンジのカードをノエルの足元付近に飛ばしていたのである。
時は少し遡り__ここは、南側の祭壇より北西側。
あれからハクリュウは、聖龍の装備に着替えたあとノエルの方をみながら自問自答していた。
(やっぱ、あのカード使うしかないかぁ。恐らく、今のノエルの心境じゃ。いつもの力が使えないかもしれない)
そう思いハクリュウは、ノエルの方に飛ばしたカードと同様のもう一枚をメニュー画面から持ち出す。
__このアイテムカードは【配置チェンジ】と言い、アイテムカードをセットした対象物と入れ替えられる。まぁそのままの意味なのだが……__
その後ハクリュウは、メモ用紙を取り出し書き込んだ。それからそのメモをバルムに渡した。__そのメモには、ノエルのことと、これからの行動について記されている。
バルムはそのメモを受け取り目を通すと『分かった』と頷いた。
それをみてハクリュウは、ノエルの方に視線を向ける。そしてノエルがカードを持ったことを視認すると同時に、自分のカードをノエルの方に翳した。
《ポジションチェンジっ!!》
そう言い放つとハクリュウのカードが眩く発光する。するとハクリュウは消えノエルが現れた。
そして時は戻り__ハクリュウは、ムッとした面持ちでガインに視線を向けた。
(バルムのことを全部信じたわけじゃない。だけど、さっき言ってたことは本心だと思う。……だから、あの手紙の中身をみれば大丈夫なはず。……多分、な……)
少し気になりノエルとバルムの方をチラッとみる。
するとノエルは、バルムと何か言い合いをしてるようだ。
(……うん、今は放っておこう。……恐らくあっちはなんとかなる、だろう……)
ハクリュウは、ノエルとバルムの言い合いが気になった。だけど、こっちが優先だと思いガインの方を向く。
次いでハクリュウは、ガインの状況をみながらラミアスのサインを待っていた。
一方ノエルは、バルムからハクリュウのメモを受け取る。その後、そのメモの内容を読みハクリュウの元に行くと言い出した。だがそれを、バルムは阻止する。
「はにゃしてっ! にゃんで……ハクリュウ、さっきまでにゃにもしにゃいで動かにゃかったのに……。急に場所を交換って……」
泣きながらノエルは、バルムの手を振り払った。
「フゥ〜、女とはいえ……流石、異世界の勇者だ。俺の手を容易く振り解くとはな」
そう言いバルムは、口角を上げ笑みを浮かべる。
「だがなぁ。今お前が
「それは、そうだけど。でも場所を交換したって、この状況が変わるとは思えにゃいんだけど」
「メモをちゃんと読んだのか? 俺も別のメモを読んだが、多分お前のと記されている中身は異なっているはずだ」
そう言われノエルは、
(ここに書かれてること……)
メモを再確認した。
__【--女神ラミアスの合図を待って行動するから、ノエルはバルムと城の外で待機してて欲しい。だけど多分、お前はこれさえも拒絶するだろうな。
でも、今のお前の心境だといつもの力が出せないはずだ。だから、頼むこの城から脱出してくれ--】__
そう記されている。
全て読み終えるとノエルは、冷静さを取り戻しハクリュウの方を向いた。
(あのねぇ。ハァ、相変わらずにゃんだよにゃぁ。いつも変にゃとこでカッコつけて、ギリギリまで耐えて本当の力を解放する。まぁ今回は、違うみたいだけどね。
だから……大丈夫だよね? ……分かったよ。じゃ、城の外で待ってる)
そう思いバルムの方を向くと、コクリと頷き口を開く。
「そっちのメモに、どう書いてあるか分からにゃいけど。ここにいると危険みたいだから、城の外に脱出する」
「……どうにか、冷静になったみてぇだな。そんなら、行くかっ!」
そしてその後ノエルとバルムは、南西側の出入口から脱出したのだった。
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