161話〜呪解と妬みと戸惑いと〜

 ここは東側の広い通路。激しい揺れは城の全域に渡っていた。


 チビ悪魔が一箇所に集まっていく。そして、徐々に大きくなりデブピエロ悪魔へと姿を変えていた。


 その側では、未だにディアナが眠ったままだ。



 あのあとクルフは、ここを離れたくなかったがクロノアに説得され渋々城の外に避難した。



 タツキ達は急ぎブラグジオスを戻すための準備をする。


 ブラグジオスは、所定の位置、クルフが破壊した広い通路側に移動した。



 まだ外は暗く、ビューっと風が吹き抜けていく。



 ブラグジオスが定位置に着いたことを確認すると、クレイは数百メートル離れた場所に向かい待機。



 そうブラグジオスが元の姿に戻った時のことを考え距離をとったのだ。


 因みにディアナは眠っていて動かせないので、クロノアが球体の結界を張った。



 クレイの近くに、クロノアとタツキも移動する。


 それを確認するとクレイは、メニュー画面を開きブラグジオスに照準を合わせるためターゲットボタンを押す。


 すると画面とは別に、半透明なパネルが現れ照準線が表示される。


 そして照準をブラグジオスに合わせた。するとブラグジオスに赤いマーカーが記される。


 それを視認すると、聖天闇冥せいてんあんめいの鎌を持ち直しブラグジオスの方に向けた。


 クレイは真剣な表情で半透明なパネルの照準線の中心部に表示された赤い点をみる。


(まさかこんなとこで、ターゲットパネルが役に立つとはな)


 そう思い即座に一対の鎌聖天闇冥の鎌を十字に交差させた。


 《天冥の逆転 解呪っ!!》


 そう叫ぶとその一対の鎌をブラグジオスに向ける。と同時に、両方の鎌に装飾されている黒色と金色の石が眩い光を放った。


 その放たれた黒と金の光は螺旋を描きながらブラグジオスに向かう。____黒と金の光がブラグジオスに当たると二色の魔法陣が描かれ展開していく。


 魔法陣が展開し終えるとブラグジオスの頭上に動き移る。その後、スッと真下にブラグジオスを覆うように移動した。


 すると魔法陣から、目も眩むような黒と金の光が放たれる。その後、二色の光が無数に現れ上に向かいブラグジオスを包み込む。


 それと同時に、ブラグジオスから眩い光と共に途轍もない威圧が放たれる。



 __ゴオォォォォーーーーっ!! ……__と城だけではなく大地をも揺らす程の地響き。


 それと共に「グオォォォォーーーーッ!!」と咆哮を上げる。



 ブラグジオスは黒龍へと姿を変えて、その体がみるみる大きくなっていく。


 それをクロノアとタツキとクレイは、色々なことを思い見守っていた。




 場所は移り、ここは中庭の南にある祭壇より北側。未だにガインの能力により辺りは激しく揺れている。


 ユウはダリアと共に南側の祭壇に向かっていた。


(この揺れのせいか思ったより前に進めない……ん?)


 ふと懐が重いことに気づく。


(これって魔神の水晶。でもなんで? もし間違って懐に入れたとしても、プリセットで着替えてるから持ってるはずないと思うんだけど)


 左手で魔神の水晶を持ち覗きながらそう不思議に思った。



 なぜ魔神の水晶がユウの懐に入っていたのか……。そうそれは、オルドパルスが魔法を使いユウの元へ魔神の水晶を転移させたからである。


 だがなぜ魔神の水晶を転移させたのか……。



 ユウは魔神の水晶を覗きながらひたすら走った。


「ユウ、それ以上進むな、止まるのだ」


 魔神の水晶からディスペアーの声がしユウは静止する。


 それをみてダリアはユウに近づいていく。


「ユウ様、どうされました。何か、」


 そう問われユウは、右手をダリアに向け「待って、ちょっと黙っててくれ」と言い魔神の水晶をみやる。


 ダリアはそう言われたので黙ってユウの様子をみることにした。


 魔神の水晶にユウは話しかける。


「ディスペアー。なんで進んじゃいけない?」


「皆までは話せぬが。とある神からの言葉を伝えるため、お前の元に飛ばしてもらった」


「とある神? って、」


 ユウは不思議に思い問いかけた。


「それは、口止めされていて言えぬ」


「なるほど……言えないんじゃ……しょうがない。じゃあ……俺はノエルを助ける。だから……お前の言うことなんか聞かないっ!」


「待てっ! 教えたいが、あの女神に逆らうとあとが怖い。すまんが頼む、伝言だけでも聞いてくれぬか?」


 そう言われユウは悩んだ。


(わざわざ伝言を……ってことは、本当に重要なことなのかも。まあ、それに話を聞くだけなら、)


 そう考えが纏まると魔神の水晶に視線を向けた。


「分かった。……ただ、大したことじゃなかったら……水晶を置いてノエルの所に……向かうからな」


「ああ、それでいい。女神からの伝言、それはな……」


 そう言うとディスペアーは、とある女神……いや、女神ラミアスの伝言を伝える。


 それをユウは聞いていた。だがユウの表情は、難しい顔へと段々に変化していく。


 近くで聞いていたダリアは、心配そうにユウをみやる。


 その後ユウは、ディスペアーから聞いたことを脳内で纏めてみた。


(……はあ? 俺がハクリュウの妹を連れてこの城を離脱。……って、なんでそうなるっ! 

 ノエルなら分かる。なんでアイツの妹なんだ。それになんでこの城を離れなきゃならないっ!!)


 そう思いハクリュウの方に視線を向けると、キッと睨んだ。


「なぁ……ディスペアー。なんで俺が……この城をでなきゃならない。そもそも、なぜお前たちの言うことを、」


 その様子をみたダリアはユウの話に割って入る。


「ユウ様、待ってください。もしこの水晶から聞こえてくる者のいう事が正しければ、何か考えがあってのことかと」


「そうかもしれない。だとしても、」


「妹君が心配なのは分かる。だが、この場から離れろと女神は言っている。だから、心配ないと思うのだが。それに、恩を売っておいてもいいんじゃないのかと」


 そうダリアに言われユウは、確かに恩を売っておいても損はないかもしれないと思った。


「そうだな。……それも悪くない」


 そう言いディスペアーに「分かった」と伝える。


 その後ユウは魔神の水晶を懐に入れると、ダリアと共にミリアの元へと向かったのだった。

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