132話〜ハクリュウとバルム〜牽制〜{★}
一方その頃ハクリュウは、レオンと共にノエルがいるほうへ向かっていた。
(どういう事なんだ? ユリナがミリアになった。……って、まさか! いや、でも。……あり得ない話じゃない。
実際ネットだと、相手の顔が見えないのがあたりまえだ。そのことを確認したいけど、今はこんな状況だし余裕がない。
そうなると、ここが片付いたら、とことん問い詰めないとな)
片やレオンは、ハクリュウのあとを追い走りながら、心配でラシェルのほうに視線を向ける。
するとラシェルがマキシムとローレンスと共に、中庭から出入口のほうへ向かっているのが見えた。それを確認しレオンは、ホッと胸を撫で下ろす。
お互いそうこう思い考えながら南側の祭壇へと向かっていると、いきなりハクリュウの目の前にバルムが現れた。
ハクリュウはバルムが現れる寸前、今まで感じたこともないとてつもない重圧感を覚える。
するとハクリュウは今のままじゃ勝てないと咄嗟に思い、中レベル位のプリセットに変更し臨戦態勢を整え待ち構えた。
「ほう。こりゃいい。かなり、やるようだな」
バルムは思っていたよりも、ハクリュウの動きがいいことに対し喜んでいた。
「お前、今までの連中よりかなり強いみたいだな」
ハクリュウは、バルムを鋭い眼光で睨んだ。
「なるほど。お前は、この俺の強さが分かるってわけか」
「分かるっていうよりも、そう感じるだけだ」
そう言いハクリュウは不敵な笑みを浮かべる。
「フッ、その程度かまぁいい。俺は、ただ楽しめればいいからな」
「……。楽しめれば、って。死ぬかも知れない戦いでか?」
ハクリュウは、バルムの発した言葉があまりにも軽く聞こえいかりが込み上げてきた。
「ああ、当然だ。特に、強い相手を負かすのは気持ちいいしな」
「そうか。そう言うってことは……。お前は、俺に勝てると思ってるわけか」
「そう言うことになる。まぁ、直ぐにくたばらねぇようにしてくれよな」
そう言いバルムは、異空間から大きなバトルアックスを取り出し身構える。
それを見たハクリュウは、腰に差している刀に右手を添えると、いつでも動けるようにバルムの手元をみていた。
レオンは2人のその様子を見ていたが、自分がこの場にいると邪魔になると思った。
(申し訳ない。僕がここにいても邪魔になるだけだ)
そう思いレオンは、ハクリュウに視線を送ると南側の祭壇を指さした。
ハクリュウは、それに気づき軽く頷いた。
それを確認するとレオンは、南側の祭壇を目指し走りだす。
バルムはそれに気づき、手下に合図を出しレオンのあとを追いかけさせる。
ハクリュウは、レオンが危ういと思ったが追わなかった。
いや追わなかったのではなくハクリュウは、このエルフの男が自分のことをどこまでも追いかけてくると思い、この場を動けなかったのだ。
(クソッ! このままじゃ、レオンを助けられない)
「どうした? 悔しいと顔に出てるぞ!」
「うるさい! お前に、そんなことを言われる筋合いはない」
そう言われハクリュウは、動揺し怒りを露わにする。
するとバルムは、口角をあげバトルアックスを構え直した。
(ふん。この程度で、動揺し怒りだすとはな。うむ。だが、さっき遠くから強さを見た時よりも多少は強さを感じる。
それでも能力的には、たいしたことはなさそうだ)
バルムは、これなら勝てると確信する。だがしかし、ハクリュウがまだ強くなれるとは思ってもおらず完全に見誤っていた。
そしてその後、どう動くかお互いに牽制し合い、辺りには緊迫感が漂っていたのだった。
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