108話〜タツキとリッツ{☆}
ここは名もなき城の中庭が見える通路。タツキはドルマニールを倒すとシャナの方へと歩みよった。
「すまない。状況が少し変わった」
「それはどういう事なのですか?」
「時間がねぇから詳しく話す事は出来ねぇ。だがお前に渡したい物がある」
「私にですか?」
タツキはメニュー画面を開き、手紙がセットされているプリセットを選ぶと、忍者からソードマスターへと装備を替えた。
するとタツキは、2通の手紙を取りだしシャナに渡した。
「その手紙を、シャナとイワノフに渡して欲しいとユリーナに頼まれた」
「御母様が私とイワノフに……」
「ああ。って事で、俺はユウの所に行かなきゃならねぇ。後はお前たちだけでも、なんとかなるだろう」
そう言うとタツキは急ぎユウの所へと向かった。
その場にいたシャナとカルテットはタツキの勢いに圧倒され、その後なにも言えず、その場を立ち去るまで呆然と見ていた。
そしてミスティはドルマニールがやられた事により顔が青ざめ震えていた。
場所は移り、ここは名もなき城より西北西に位置する、辺境の地の近くのマインの森。
木々の合間に隠れ、ヒョウの獣人ハーフの男性が周りを気にしながら、黄色い魔石が設置されている小さな四角い箱を手にしていた。
(早くタツキに連絡しないと……)
このヒョウの獣人ハーフの男性はリッツ・ビーホルン、25歳。
2年前、辺境の地で魔獣に襲われている所をタツキに助けられた。
その数日後、マインの森で再び魔獣に襲われている所をタツキに助けられリッツは運命を感じ、しばらく一緒に旅をしていた。
そして現在リッツは、タツキの指示でシェルズ城に潜り込み調査をしている。
リッツはニヤニヤしながら、
(この魔石を押せば、数日ぶりにタツキと話せる……って、そんな場合じゃなかった!)
そう思いながら、リッツはその四角い箱を左手に持ち、右の人差し指で黄色い魔石に触れると、小声で呪文を唱えタツキの名前を言った。
すると魔石はそれに反応しひかりだした。
(急がないと……)
その頃タツキはユウのもとへ行こうとしていた。
だがその途中でタツキのバッグがブルブルと小刻み揺れ、慌てて近くの物陰に隠れた。
そしてバッグの中から青い魔石が設置されている小さな四角い箱を取りだすと、
(マジカルSフォーンの魔石が、黄色いひかりを放っているって事は、リッツか……)
そう思うとタツキは右の人差し指で魔石に触れ小声で話しだした。
「リッツ、何かあったのか?」
“うん!タツキ、大変なんだ”
「何があった?」
“えっと……あったというか。そうだ!タツキは今どこにいるの?”
「俺は今、儀式が行われるはずだった辺境の地の城の中にいる」
“それなら大丈夫かな?たださっき、そっちに向かえとニック様から指示が出たんだ”
「そうか。お前だけか?」
“ううん。もう1人いる。これからその人と合流する。さっき連絡しておいたから”
「なるほど。それにしても、だいぶそっちに馴染んだみたいだな」
“うん、なんとかね。それより、タツキこれからどうすればいいかな?”
「そうだな。まだお前にはやってもらいたい事がある。だが……こっちに来るとなると戦わないとならねぇ」
“そうなんだよなぁ。だからどうしようかと思って”
「ん〜……リッツ。そろそろ潮時かもな」
“どういう事?”
「まだやる事はある。だが、今ここにいる勇者側のメンバーは使える連中ばかりだ。そうなると、お前だけに負担をかけなくてすむようになるだろう」
“タツキ。僕は負担なんてそんな事は思った事ない。だけど……心配してくれてありがとう”
「ああ。……それでリッツ。とりあえず俺と合流するまでは、そいつを監視していてくれ」
“うん、分かった。タツキ気をつけてね”
「俺は大丈夫だが、お前こそ無理はするな」
“うん、ありがとう。じゃそろそろ来る頃だから”
そう言うとリッツからの通信が切れた。
「リッツ。アイツ本当に大丈夫なのか?」
そう言うとタツキはマジカルSフォーンをバッグにしまった。
そしてタツキはユウのもとへと駆けだした。
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