93話〜変転

 ここはシェルズ城結界の城の地下にある部屋。ニックはミスティから聞いた事をアルフレッドに伝えた。


「……なるほどな。だが、ミスティとドルマニールが緑の髪の女の方に行かないのであれば、他の者を向かわせなければならないが。ニックあの城に配置したのはあの2人だけなのか?」


「いいえ。流石にあの2人だけでは心配でしたので、ゲネス・ビート、キース・エフド、クルフ・シナモンを、既に中庭付近に配置させており、先程緑の髪の女の方に向かうように指示を出しておきました。」


「そうか。それなら良いのだが。もしこれが失敗するような事になれば更なる策を練らねばならぬ。」


「確かに……そう言えばリリアス様は遅いですね。何かあったのでしょうか?」


「そう言えば遅いな。それに予定ではリリアスが、あの女を連れてここに来るはずなのだが。」


「アルフレッド様、如何いたしましょう。このままではこちらの儀式を始める事が出来ませんが。」


「うむ。ニックどう考えてもおかしい。リリアスがあの女を連れて来れないはずがない。それにあの女は我々に逆らう事が出来ないはず。」


「ええ、そのはず。あの女の妹を人質に取っていますのでそれはあり得ないかと。」


「なら、何故リリアスとあの女がここに来ない。」


「そう言われましても……そうですね。では、直ぐにリリアス様に連絡をしたいと思います。」


 ニックは通信用の巻物を広げリリアスに連絡をした。だがしかし、何故か応答が無かった。


「……アルフレッド様。やはりリリアス様に何かあったのでしょうか?」


「ニックどうしたのだ?」


「リリアス様の持たれている巻物と繋がっているはずなのですが応答がありません!」


「な、なんだと!?いったい何が城で起きていると言うのだ!このままでは我々の計画が……もう既に始まっていると言うのに……。」


 そう言うとアルフレッドは魔法陣の前でうな垂れ膝をついた。


 そして、ニックはリリアスと連絡が取れない為、城を巡回している警備兵達に連絡を取るが何の応答もなかった。


(いったい城で何が起きている?警備兵までもが応答しないのはおかしい。まさか……。)


 ニックはアルフレッドにもしかしたらこの城に侵入して来た者がいるかもしれないと言った。そして、儀式を中断する訳にも行かないという事で、ニックは中庭で何かあった時の為、アルフレッドに通信用の巻物を渡すと様子を見る為に上に向かった。



 場所は移り、ここは名もなき城の中庭。クレイ達は緑の髪の女の方に向かっていた。


 すると、急にグロウディスは立ち止まりポケットの中の物を覗いていた。


 クレイ達はそれに気付かず緑の女の元に向かっていた。


 グロウディスはそれを確認した後、近くの物陰に隠れポケットの中の物を取り出した。


 それは小さな四角い箱のような物で、ブルブルと小刻みに動いていた。


「クレイ達は行ったようだな。だが、このタイミングで……ん?バイブと言ったか、このブルブルするやつは。うむ、使い方を教わったが、確かここを押せば良かったんだよな。」


 グロウディスはその小さな四角い箱に設置されている魔石を右の人差し指で触ると、そこから声が聞こえてきた。


 “……グロウディス!聞こえるか?”


「ああ、聞こえる。そっちはどうだったんだ?」


 “とりあえず、2人を連れシェルズ城からは脱出する事は出来た。だが、バレるのも時間の問題だろう。それでそっちはどうなんだ?”


「……ああ、思っていたより、状況が変わってきている。だが、お前が俺の許婚のセレスティナとその妹リムティナをシェルズ城から連れ出した事で向こうの儀式自体不可能になったはず。」


 “ああ、そうだが。油断は出来ない。相手が相手だけにな。だが……まさかまたここに来る事になるとは思わなかった……。”


「ん?今何て言ったんだ。」


 “あっ、大した事じゃない。それでそっちの状況を教えてくれないか?それと召喚された奴らの事もな。”


 そう言われグロウディスは今の城の状況と召喚された者達の名前と城にいる人数など色々と話した。


「……どうする?俺はこのままクレイ達と何気なく合流するつもりだが。」


 “まさか……クレイがここに……それにアイツらも……。”


(恐らく会ったとしても俺が誰か分からないとは思うが……ただ、若干2名、獣のように勘が鋭い奴がいるからな。……。)


「……おい!聞いてるのか?」


 “ん?ああ聞いてる。”


「お前さっきからどうしたんだ?クレイ達の事を話した途端、急に話が途切れるようだが。知っているのか?」


 “さぁな。知ってるような知らないような。……それより2人をどうするんだ?今は何とか隠れてはいるが。”


「そうだな。奴らも馬鹿じゃないだろうからな。そうなるとお前が2人から離れるのは無理だろう。だが、この儀式が失敗に終わったとしても奴らは間違いなくこの城に数名監視を付けている。」


 “ああ、そうだろな。さてどうする?……ふぅ、考えてても仕方ないか。時間も無くなるしな。とりあえず持ってるアイテムと自分のスキルで何とか奴らの手の届かないような所に転移する。その後そっちに向かうが間に合うとは限らない。クレイ達には儀式が失敗した時点でこの城から離れろと伝えて欲しい。”


「分かった。そう伝えるが、この後何が起きるか分からない。なるべく間に合わせてくれ。」


 “……そうだな。だが、恐らく俺がいなくても。そのメンバーなら大丈夫だろうがな。”


 そう言うと魔石の色が赤から白に変わり通信が切れた。


「……やはり、何か知ってるみたいだな。俺が召喚した時にあの祭壇を見てあからさまに驚いていた。あの特別に作られた祭壇の事を知ってる者は数少ないはず。それに何故かこの世界の地形を把握していた。……だが、まさかな。だとしても今は奴を信じるしかないだろう。」


 グロウディスは物陰から警戒しながら中庭を見渡した後、クレイ達を追い緑の髪の女の元へと向かった。



 ここはシェルズ城に近い森の中。


(さて、ここからどう逃げる?)


 そう言うと魔石がはめられた小さな箱でグロウディスと話をしていた男はセレスティナとリムティナを連れアイテムを使いテレポートで森から移動した。

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