62話〜刀と銃と優しさ

 ここは名もなき城の中庭付近。その頃、ハクリュウはライロスと、ハウベルトとラシェルはライロスの部下達と戦っていた。


 ラシェルは自分に結界を張り、ライロスの部下達の攻撃をかわしていた。だが、結界の効力が弱まり歪みができ、ライロスの部下の1人がそれに気づき、ナイフで斬りつけようとした。


 それに気づいたハウベルトは、ラシェルに駆け寄りライロスの部下目掛け、すかさず剣を抜き斬りつけラシェルを助けた。


「ラシェル様。お怪我などはありませんか?」


「はい。何とか大丈夫です。ハウベルト、助けてくれて、ありがとうございます。華麗な剣さばき見事でした。」


 ラシェルは微笑みながらそう言うと、ハウベルトは少し照れ気味に、


「あ〜いえ。それほどでもありませんが。でも、よかった怪我がなくて。」


 そう言っていると、休む間もなくライロスの部下達がまた襲ってきた。


 ハウベルトはラシェルを守りながら何とか回避し攻撃をしていた。


 ハクリュウはハウベルトとラシェルの様子を確認しながらライロスと戦っていたが、


「おい!よそ見とは随分と余裕じゃないか。」


「そう見えるか。」


「ああ。なんかお前を見ているとムカつく。特にその余裕な表情が気にいらねぇ。それにお前、何で本気で戦わないんだ?それとも、俺を馬鹿にしているのか?」


「ライロス。俺は別にお前を馬鹿にしている訳じゃない!それに、俺はこれでも本気で戦ってる。ただ無駄に力を使いたくないだけだ!」


「そうか、なるほどな。だが、どうしてもお前が本気を出している様には見えない!俺がその余裕ぶった表情を歪めてやるよ。」


「クッ、仕方ないか。本当は余り力を使いたくなかったけど。やるしかないみたいだな!」


 ハクリュウがそう言うと、ライロスはさっきまで両手にナイフを持っていたが銃に持ち替えた。


 そして、ハクリュウは深呼吸をした後、剣をしまい柄に龍の飾りが施された細身の刀を取り出し身構えた。


 するとライロスはそれを見てハクリュウとの間合いを取り狙いを定めると、


 《バレット シューティング サンダー!!》


 両銃からビリビリと音を立て放つ電流を纏った弾丸を交互に連射させた。


 ハクリュウは瞬時に、その弾丸の軌道を読み素早く避けた。


「なるほどな。そういう事か、短剣使いにしてはやけに使い方が荒いと思ってたけど。ライロス、お前は銃の方が得意って事か。」


「フッ、そういうお前もさっきの剣より、その刀の方が動きがいいように見えるが。」


「ああ、そうだな。この刀は確かに軽くて1番使いやすい。だけど、普段は使わないようにしてる。本当に、必要な時にしか……それにこの刀の威力が、余りにもありすぎるから普段は封印しているんだ。」


 そう言いながらハクリュウは身構えた。


「なるほど。そうなると少しは本気を出してくれたって事かな?」


 ライロスはそう言いながら、それを見て両手に銃を構えた。


 ハクリュウはライロスが銃を構えたと同時に、素早く懐に入り瞬時に刀を抜き、


 《極刀秘剣 蒼風刀斬殺!!》


 刃に風を纏わせると蒼く光りを発した。すかさず刀を一閃すると鋭く重い刃がライロスを襲い斬りつけた。


 ライロスはその攻撃をかわそうとしたが、余りにもその攻撃が速く威力があり逃げ場を失い、左側の下腹部辺りを斬りつけられた。


 ライロスは傷口を抑えながら、


「クッ、やっぱりお前は気にいらねぇ。まだ余裕な顔をしてるみたいだが、それが本気か?はぁはぁ、お前まだ、手加減してるよな。ク、クソォッ〜!!」


 そう言うとライロスは、ハクリュウに左手に持っている銃を向けた。


「いい加減こんな事は止めないか。俺は出来れば無駄な事をしたくない。」


「はあ?ハクリュウ。お前は何を言っているか分かってるのか。」


「分かっているつもりだけど。ただ俺は出来る事なら誰も殺したくないと思っているだけだ。」


「はははは……。こりゃ、笑えるねぇ。これが、勇者、か。なぁお前、そんな事を言っていると。その内自分が死ぬ羽目になるぞ。」


「そうかもな。でも、そうならないように努力して強くなれば良いだけの事だと思うんだけどな。」


「はぁ?お前と話してると頭がおかしくなりそうだ。それに、この傷のせいで体が思うように動かせねぇ。」


「だろうな。じゃ、ライロス。これ以上怪我人を増やしたくないから、とりあえずは、そこで休んでてもらえるかな?」


 そう言うとハクリュウはバックの中から眠りの粉が入った小袋をライロスにかけた。


「はあ!?お、お前。やっぱり、気に、いらねぇ。こ、殺………。」


 ライロスは最後まで言えないまま眠ってしまった。


 その後ハクリュウはハウベルトとラシェルを助けた後、ラシェルに頼みライロスの傷口を治してもらった。


「ん〜、敵を助けるなんて普通はしないと思うんだが?何故ハクリュウ様は、ライロスを助けたのですか?」


「ハウベルト。何故と言われてもなぁ。ただ、このまま放っておいたら死んじゃうかもしれないだろう?」


「確かに、そうかもしれませんが。ライロスが目を覚まし、また襲って来るかもしれないのですよ?」


「そうかもな。でも、まぁ、その時はまた、戦えば良いだけだしな。」


 ハクリュウがそう言うと、ハウベルトとラシェルは溜息をついた。


 そしてハクリュウ達は少し休んだ後、儀式が行われる中庭に向かった。

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