63話〜記憶がない

 ここは名もなき城。クレイマルスとアキリシアは、シグマの部下達の攻撃を受けている内に、ユリナ達とはぐれた。


 その後クレイマルスとアキリシアは、シグマの部下達を倒したが、儀式が行われる中庭からかなり遠ざかり、今いる場所が何処なのか分からなくなってしまい仕方なくここで少し休む事にした。


 そして、クレイマルスは溜息をつきながら、


「はぁ。それにしても、このままではノエルさんを助ける事が出来ない。」


「クレイマルスはノエル様が好きなんだね。」


「ああ。一目惚れだった。あんなに可愛いらしい人は見たことがありません。」


「そっか、そんなに可愛いのかぁ。僕はまだ会った事がないからなぁ。」


 そう言うとクレイマルスは一点を見つめ、


「ノエルさん!俺は貴女を助けたい!!なのに……ク、クッソォ〜!?何で俺はこんな所で道に迷ってんだよ!」


 そう言いながら、右の拳を握り締め壁を思いっきり、ドンッ!っと叩いた。


「そうだね。確かに、いつまでもここにはいられないしね。それはそうとクレイマルス。この前から気になっていたんだけど?」


「何が気になるんですか?」


「クレイマルスって、何者なのかな?」


「ん?何者って言われても俺は俺だし。てか、アキリシア様、いったい何が言いたいんですか?」


「ん?ちょっと気になってね。確かクレイマルスは革命派のリーダーだったよね?そしてグロウディスは、革命派を作った創設者で間違いないかな?」


「ああ、間違いありませんが?」


「僕が気になっているのは、クレイマルス。君の生まれ育った国はどこなのか?それとね……。」


 そう言おうとしたが、クレイマルスが話し始めた。


「生まれ育った国かぁ……。」


 そう言うとクレイマルスは下を向き深く溜息をつきながら、


「実を言うと、1年前に記憶を無くしそれ以前の事は覚えていないんです。俺はブラックレギオンのアジト付近で、グロウディスに助けてもらいました。」


「き、記憶がないって!じゃ、今の名前は?」


「名前は、よく分かりませんが、目の前に不思議な画面が、チラついていて、そこに名前がクレイマルスと書いてありました。」


「ちょ、ちょっと待って!目の前に不思議な画面って、それ何なの?」


「さあ〜、何なのって言われても俺にも分からないんですが。」


 そして、クレイマルスとアキリシアは色々と考え話していると、誰かの足音が近づいて来ている事に気付き、警戒しつつ物陰から様子を伺った。

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