第10話 めげぬ竹橋 ! スナック探険隊
…堂ヶ島観光を終えた私たちは、またてぷてぷ歩いて民宿に戻りました。
今日一日、列車やバスに乗り、露天風呂に浸かって遊覧船に揺られてきた男たちはすっかり腹ぺこ状態です。
宿にはちょっぴりワガママを言って早目の夕食をお願いしたら、さすがに西伊豆の漁港集落の民宿は海の幸がどっさりの大漁御飯が出て来ました。
その磯料理の数々はみんな美味しくて、生ビールも飲みつつ男たちは幸せいっぱいです。
「良いっスねぇ!西伊豆 !! 」
「凄いですよ、料理が !! 」
竹橋君も湯野木さんもたちまちゴキゲンになりました。
…大満足の食事の後、部屋でひと息入れて寛ぐと、竹橋君が
「まだまだ寝るには早いし、スナック行って盛り上がりましょうよ!」
とテンション高らかに言いました。
「スナック?…隣の松崎町に行けば何軒か在るけど…若い娘のいる店が、う~ん…どうだろう?」
…宿のおかみさんに訊くとそんな返事でしたが、めげぬ竹橋君は力強く、
「とりあえず行きましょう!」
とやる気満々に言うので、3人で宿の近くの停留所からバスに乗り、海岸沿いに約4キロ離れた松崎町へ行きました。
「…まずは僕がめぼしいスナックを見つけたら扉を開けて中を覗いて見ます!…良さそうなお姉さんが居たら入りましょう!…でもちょっとウヘ~ !?な感じだったらスイマセン ! で逃げますからね!」
竹橋君は私と湯野木さんにそう告げると松崎町の街中の通りをずんずんと歩き始めました。
…3人で少し行くと、ボヤンとした小さな看板の最初のスナックを発見!…さっそく竹橋君が扉を半分開けて中を覗きます。
「…あら、いらっしゃい ! 」
と店内から声が聞こえた瞬間、竹橋君はダッシュで通りへ走り出し、私たち2人に
「逃げます!」
と叫びました。
「ええっ !? 」
仕方なく私と湯野木さんも彼に続いて通りを走って街角を曲がったところで息を切らして止まり、身を隠すようにしゃがみこんだのでした。
「ハァハァ ! …良さそうな娘はいなかったんだね?…」
「ハァハァ ! …ママさんが1人で…かなり年配でした…」
「ハァハァ ! …アラフォー?それ以上か… !? 」
「ハァハァ ! …いや、アラ還でした…」
「ハァハァ ! …確かにアラ還はキツイな…」
「ハァハァ ! …次また頑張ります!…」
…潮風薫る松崎の街を3人でさらにさまよい、次の店を見つけては竹橋君がまた顔を突っ込んでみましたが結果は同様で、私たちはまるで悪いことをした犯罪者のようにまたまた通りを走って逃げたのでした。
「ハァハァ ! …竹橋君の頑張りは良く分かるけど、いい加減もうキツイので次の店で落ち着こうよ!…」
「ハァハァ ! …分かりました ! …」
という訳で私たちは結局松崎の街中をほぼ走って縦断し、バス停から一番遠い最後のスナックに3人揃って入ったのでした。
「いらっしゃ~い !! 」
…ところが店内で待っていたのは30代半ばくらいの割と色っぽいお姉さんだったのです。
「おぉっ !! 」
さまよい男たちは安堵と感動で胸が震える思いがしました。
「走って来て良かった!」
「今までの苦労が報われたぁ… ! 」
そして3人は渡されたおしぼりで顔を拭いながらようやくテーブルに腰を落ち着けたのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます