第1話
「羊肉が銅貨2枚~安いよ~」
「小麦1袋銀貨1枚半!今日だけのお買い得だよ~」
「……ずいぶん賑やかな街ですね」
「お嬢様、あまり離れないようにお願いします」
「分かっています」
そんな会話をしているのは質の良い服を着た2人組だった。
少女の名アザリア。家名は持ってはいない。
10代半ばの少女で肩口の辺りまで伸ばされた赤い髪が特徴的で、それに対するような青い瞳はまるで宝石のような輝きを放っていて、幼さを感じるその容貌からは将来はかなり美人になることが予想できる外見だった。
もう1人はアルト・グレイ。
喧騒に包まれた人の往来を輝かしい目で見つめていた少女は年相応の笑顔をぶっきらぼうな表情に変え、足を止める。
「貴方は少し神経質過ぎるのです、私もそんな子どもではないのですから心配は無用です」
「しかし、私はお嬢様の護衛でございます。どうか聞き入れてはくれないですか?」
「まぁ、いいでしょう。ここでは貴方の言い分の方を聞き入れましょう」
その会話で満足したのか2人はまた歩を進める。
しかし少女の方は店にある商品が物珍しいのか、若しくは気になるのか、仕切りに目を配らせていた。
店には肉や魚といった食料品以外にも衣料品や薬、家具雑貨。それだけではなくなにやら良く分からないものを売っている者も居た。
宿のある小さな通りを2人は右に曲がって行く、すると―
―ぽふっ
前方に不注意だったのか前から歩いてきていた男性にぶつかってしまった。
男性は柔らかく受け止めてくれたので怪我の心配もないが、恥ずかしさ
「すまない、大丈夫か?」
「す、すみません私の不注意で…」
「いえ、こちらこそ申し訳ない」
ぶつかった男は10代後半、20代前半といった顔立ちでなんとなく特徴の捉えづらい容姿だった。服装も特徴はほとんどなく、全体的に黒っぽい服装をしていた。
「なにやってるんですかご主人、前方不注意で女の子と衝突ってラブコメでも始めるつもりですか?」
隣から声をかけてきたのは10代前半ともいうような幼い少女だった、外見はまだ汚れも知らない幼女といったようだがまとう雰囲気は子どもらしいそれではない変わった印象の子だ。
『ご主人』と言ったということは召し使いかなにかなのだろうか?
「違うぞ……行くぞ、クルシア」
「りょーかいですっ、すみませんお騒がせしました~」
そう言って2人はその場を立ち去っていった。
「「…」」
「何だったのでしょうか?…賑やかな方々でしたが」
「分かりません、ですが気に止めることほどもないと思います」
「そうですね、向かうとしましょう。先は長いのですから」
「かしこまりました。しかし、本当にあの情報は正しいものなのでしょうか」
「分からないわ、……でも行くしかない」
そもそもこの町に来たのはとある人物がこの町に居るという情報をつかんだからだ……しかしその人物は居たと言われていただけで今も居るという確証はない。だが、自らの目的を果たすためには必要な人間だった。
「本当にこの町にいらっしゃるのでしょうか……最強の召喚術士と呼ばれた方は」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます