第132話

今朝は考えてばかり、昼の食事にプラスチック容器のつめものとか、思考は理性を離れてままならない、まるで小動物の歯車のように、体調をキープする早寝のわりに、しつこく疲れが残っていることを怪しんでいる、単語の浮かぶテンポも遅れている、やはり休日がなくては、積もっていく。


ノベルゲームだったか、それともゲームノベルだったか、迷宮に入り込んだような読書を今している、アドリブで進んでいくようでも、あらかじめコンピューターに定められている、そんな人造のプログラムが生む小説ながら、何度惹かれて物語を進めただろうか、南米のアンソロジーに、数十年振りの回顧だ。


休日を休日と今日も感じていない、と言えば大仰とはいえ、朝から作業に追われる日常に区切りをつけたがっている自身がいる、これも飽きと言うのかもしれないが、そう思わせる肉体疲労もある、本当のところはそれほど疲れてはおらず、すこしだけ軌道を異にしたいのだと、羽目を外したがっている。


蛇口の水漏れに恐れを持つようになった、記憶にないほど気にしたことはないのに、わずかなゆるみでぽたぽたと垂れて、想像力が溢れ出す、いつかの冬も寒さが厳しくて春を待ち遠したが、凍てついた空気に故障する今期もそろそろ、ゆるみを欲しがり出している。


フランス映画を五日間連続観たならば、日常に気取りが表れる、というステレオタイプはさすがにないが、定まった一つの観点を得たようだ、どんな作品にもいえるバランスと完成度よりは、一つの優れた要素で存在を決定させる、目でも態度でも、魅力ある人間の真髄を斜めに見つめる。


臆見をひけらかすならば、あの壷は古拙と真逆の手法になっている、ナンセンスな発言だ、高校生の活け花にそんなアルカイックな構図など求められない、馬鹿笑いが寒い部屋をつんざいている、華やかな数日が雑念によって消え去っていく。


たった二日前の感想でさえ自分に他人を見つけて唖然とする、よくもこのような下手な文章を書けたものかと、制限時間に締めつけられたとはいえ、無駄なく濃密に表されるのではなく、何かに追われたように羅列され、切られている、しかしこれが時たま、いいねを勝ち得るのだ。


外にいられる気温にようやくたたずめる、二月を前に季節が緩んでいる、冬眠するにはあまりにも遅いが眠りを貪り、あかつきを覚えずに一晩を過ごした、今を生きるという台詞がふとよぎり、死後の先の先まで考えて、ゲームアプリを容赦する。


何事も翌日あたりにやってくる、寝溜めも寝不足も、飲んだ次の日に軽快な二日酔いが訪れる、頭痛を伴わない酩酊はいつも以上に自分勝手する、ラジオの笑いにいつもよりつられる、朝の余韻が明るい。


昼に作業を終えた肩は軽い、腰は重くならずに足取りものんびりとする、暇な時は暇らしく気怠く、だらしない体で周囲を見回す、慌てて得になる休暇はないように、余暇においては雰囲気に合わせて、落ち着かないと。


若い表現に技術力は基本かもしれない、肝心な点はその根幹にあるなどと言えない進歩と早さだ、走り込みが正しいと断言できない時代は全体を押し上げている、ところが物足りなく思うのはなぜだろう、デジタルが必ずしも良質とは限らない、欲しいのは三十五ミリの情感か。


三度の注意に対して直らない上司を持つことは、悲惨な事だ、その案件が段ボールを分ける際のカッターの刃の有無とあれば、些細な事だ、取るに足らない事を取らない相手に対して責任感を持つ事はない、ほとんど向こうが悪い場合もある、可哀想な事だ、情けない事だ、先のない人間だ。


元通る嗅覚もある、どのくらい見放されていただろうか、茶色に収められたアロマオイルは春を待たずに蓋が開けられる、スイッチは本の片づけだった、小箱におさめて植物を香らせて、体臭の及ばない区域を作る、小さい頃から臭いばかりで、蝶蝶と蛾が飛び交う。


殺伐とした面ばかり焦点する向きこそ、すべてを物語っているわけではない、豊富な表現の中からそこを抽出する姿勢こそ本人なのだ、社会背景と人種差別よりも、近視眼な男女のもつれを話題にする、しかしそのような描き方でもある、マスクとスマホばかり象徴化させて、批判したい心が我が身にある。


合理性を追求した食事が体を弱らせたから、おかずの準備に時間のかかることを無駄とは思わない、それを比較にしそうな頭の働きが休日に入ってより燃焼される、監視と追跡に告げ口だ、関心がないから黙っているのにどうしてかまってくるのか、阿呆らしい。


出発の時間配分を間違えたように、思考の対象を外している、昨日をそのまま淵に放り沈められない、いわば怪我だ、かさぶたをしようと理性は躍起になり、痛みが襲ってくることに苦笑する、考えることが多い、短編作品が何本描けるか。


眼鏡を忘れた、快晴に目を奪われていたのだ、昨日は劇場の開始を確認し忘れて遅刻だ、今日は目の置き場所を間違えて裸眼だ、吹き替えは望まなくとも、今日は目を凝らして字幕を読むことになる、物笑う他にあきらめはない。


スタジアムの羽が延びているのを目にして声が出る、独り言は多く自分もする、ただし誰かに聞かれない範囲内で、漏らすのはつぶやきもおならも同じに違いない、貧乏揺すりも似たこと、そういえば豆にそんな神を祓う発言もあった、鬼は飼い慣らす相手らしい、そう、自分自身だ。


そんなに過敏に反応しなくていいのに、小声は想像力を膨らませる、特に日頃の大声が反転すると、それでも頭は静かにたたずんでいて、明日の天気を考える目線もある、やはりたぶん暇だから、無聊は特段毒になる。


グーグルの履歴を公然と開くやり口は、アイデアに富んでいる、口で言えば良いことを告げ口から回される、そんなの気にしない、昨日の映画のタイトルは的を得ている、溜息が近寄ってくるのは亡霊のようだ、魂をどこへ落としてしまったのか、下ばかり向いている。

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