第83話

扱いを開始して三年に気づく画面がある、横線一本の標識のよう、モノクロでもわかる点滅がある、消えた四つのつぶやきと、三十分の再作業に頭は沸騰したものの、今後は恐れず使えるとはいえ、普段見ているようで見ていないらしい。


仕事の典範を机に考えようとしていると、学歴と費用に関する小話を耳にする、するともう頭は違う向きへ、嘆きもそくざに歓喜となる笑いの壷を押された、この振幅を午前に持てたなら、消えた紙切れ一枚に憤慨することもなかった。


バランス良い生活を送っている、運動と頭脳が共に働き、酒は夜に一杯蒸留酒だけ、食事もほどほど外食はなく、縛られた日常が腹も少しずつ噴火を抑えている、夜の映画にその感想と、三十分でも踏み外せば全体がずれると、心得てすべてを引き締めている。


ハイヒールにロングでないスカートを見かける、数年前に願った事象だろうか、膝丈で絞られた尻のラインも同様に、目が勝手に肥えたか飢えてきたか、小さい頃は腕や足を見て喜ぶ大人をわからなかったが、いつのまにやらそうなったか。


恋をしない者がいないだろうか、答えのはっきりしたような考えが浮かぶ作品に接して、夢を見ない人もいるかもしれないと思う、衝動は瞬時に訪れ、一気呵成に突っ込んでいく、とは限らない、じわりじわり分析できない心と向き合って、次第に発見していかないなどと、朝に頭を巡らす。


いつもの土曜日とは違っている、我慢の力量が磁場を支えている、いとまがあらゆるとどこおりを現前させていても、それが適合だと事態は動いている、常にこの状態を保てるならば、頭は思う通りに体に預けてくれるだろうに。


浪費と自己犠牲によって与える他人こそ、自身に大いなる喜びと永遠に近づく法悦がある、なんて最近一つの考えを知ったが、今は倹約によって身内は整えられている、いわば意志の強化というか、忍耐を改めて持ったことで一週間の労働の後でも、にわかに外さない、おそらく、突き詰める所は同じだろう。


頭に猫の耳飾り、すこし暖かい今日は上着を腕に持つ、垂れるフードにモーブの羽根飾り、元にはスパンコールのあめあられ、クッキーを口に含んですぐ気づいた、今日はさぬきうどんにもハロウィンのかまぼこサービスだったと、すっかり定着した仮装行事に、今はグリーンのスカーフが首にさがる。


店のサービスと客の効率思考がぶつかる、順番の案内に対して一人者は空いたカウンター席を見つける、二人を用意する間に通せばいいのに、しかしあくまで来た順に席へ座らされる、その結果狙いの窓側に着けず、だったら別の店へと、そんな子供じみたわがままも時には許されると、映画のあとの自分気分。


珍しく力の持続する日曜日だ、朝の予定後に昼の推敲も、目はしぼむことなく頭と働いてくれる、それもこれも制限のおかげだ、年末の恐れが身を引き締めて、金だけでなく文章も節約されている、時に慣れを断ち切る浪費も、今は引けの時期といえるだろう。


今日もフェイントが動力を操っている、ねずみも罠もよそ見して、もはや木立と変わらない風物の、入れ物につかまることもない、ハゲにデブ、ナイーブにヒステリー、いつまで続くかわからないが、今はユーモアを目線に眺めながら。


首を寝違えて血流を巡らす、集中して働くのは月に一度か二度か、人員不足によって底が持ち、すこしでも減らそうと体は動く、そんな時はたいてい元気が良い、細かいことは気にせず目的へ向かい、たらたら頭をとろかす、ねたみそねみはいるまもない。


肌がざわつく朝に規定を調べる、偶然は何を意味させるか、推敲完了日に締め切りが重なっていた、もちろんその一日に終えることも可能だった、しかし来年までの期間は焦らしとなり、歯がゆさを肥料とした育みにもなる。


年末への計画に倹約が始まり、健康診断の結果に地盤が固まる、忍耐を力に四十歳の節目は大いに欲する、蓄えてきた栄養の発芽を、合間合間に六百枚を越し、駄弁と駄文の連続とはいえ、基礎としての体力だけは身についた。


毎日晴れていたら、常時頭は晴れやかにいられるだろうに、雨と汚れがぼやけさせるくもりガラスから人通りを見ている、午前のサングラスにもはや出番はない、光が足りないだけで寒さを覚える、もしかしたら単に首が痛いだけかもしれない、暗く淀んだ休日の午後。


うどんが力だと、ぶっかけ食ってにわかに活気づいた、しょせんパンでは馬力が出てこない、知ったかぶったコメントだ、ネギとショウガは醤油と一緒に腹へ入り、額に浮かばせる汗ほど体を元気づけた、ただし十五分、今はもう冷たくやってられない。


舞台でも映画でも、出だしは受け手になじみにくく、いささか退屈な思いをさせる、それはエンジンのかかり出しの重さに違いないが、作り手の踏みこみの迷いが隠れることなく重きをおいているから、その理由を半分以上終わって休日に気づく。


冬前の太陽が地に隠れ、風が早早と寒さを吹かせる頃になって、ようやく目と頭は合致して対象を体にとりこみ出す、かけがえのない人生のより貴重な休日にあって、やって来るのが遅くないか、そんな余裕を口に吹き出して映画前の予定にぼやく。


つまらないつまらないとぼやき笑いつつ、積み重なった分量に地力を目にする、他の事はその何十倍と束ねていても、誰かを語ると自分で言うでは働きが異なる、懸念していた底力だけでも基礎が固まったら、あとは細部と仕組みに集中できるだろう。


上目づかいにナーバスがにらむ、顔の中心に癇癪が起こる、額は洗濯板となり、口はだらしなく開く、病気と疑って慌てはしないが、台車の響きに脳は遠のきそうになる、それでも体は健康だ、心にそれは求めない。

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