第35話

元気がやたら怒気を生み出すならば、活力なくいようと歩みを遅めてみれば、何枚も開いた球根植物どころか、サボテンも全て落っことす、美しく立った緑はへしゃげて、まるで今の自分を体現するようだ、とはいえ球は大丈夫だから、輪ゴムとストローでどうにか仕立てる。


一世代前の携帯電話に拘泥する、嘘偽りなしに旧弊と偏見を持ってこだわる、亀の島などと呼称される画面にラインが入る、ぶつけたわけでもなく、目を離したほんのわずかにだ、タッチパネルにすればいいものを、わざわざ中古サイトで探すのだから、六年後までしがみつくだろう。


うまいことを言ったなんて思ったなら、うぬぼれじがじさんのつたなさを持った自己満足だろう、自分のうまさは他人のまずさで、幸不幸も同じことだろうか、ならば反面らしい鏡を手に持つように、かしこを見直してみようか。


落とした緑はミルクと異なり、ボウルに戻ることもあるようだ、トカゲの尻尾と同質の再生力は、へたった部分に活を入れて、しゃんとまではいかなくても、支えなしに葉を広げている、たった一日と日光でこの様だ、杞憂は喜びと変わり、経験は純真な発見として身についた。


花壇はすでに耕されて、あれだけ茂っていた草花も消えている、この空漠の中にでも、奥に丈の低い芝が現れて、川はこれほど穏やかに流れている、やけに山の緑が三角に目につき、人の歩みも風も、みなが緩やかとなっている、心が景色か、今日の自分は悪くない。


睡眠の深さが夜の雨に目を向けさせない、朝方の雨音でおぼろげに知るも、それがいつから降り出してラジオで述べられるのか、昨夕のベンチに座る人は、まるでこの潤いを予期して風にあたっていたのか、足を伸ばした小さな姿が、大きくない山と対照していた。


数百年前と今と、夏が違うのは知っている、それがどのように異なるのか、暑いと寒い、乾いたと湿気た、入れ替わるのだがいつといつか、天の川が秋の歌に出れば、とても信じられない、今日のじとじとした空気も、肌はなんだか見分けがつかないようだ。


気がつけばすでに昼過ぎとなっていて、忙しいわけでもないのに、暇な時の作業を忘れていた、朝の雨は干上がってしまい、いるだけで汗が溢れるものすごい熱帯となっている、アスファルトをなでる風があるので、あまりの光を浴びるべく、路上で影の境界に目を置く。


一時の幻灯のように戻っていく、数ヶ月読んでいる本だけでなく、その前から知っていた事を感じるのみだ、無ともいえる全が頭にある、借り物はたやすいようで、昨晩の映像を着れば、自分自身なんて性格はあまりに偽りのよう、本物などなく、あれやこれやのまがい物の接合で、本人が成っているのだろう。


わずかな時間がある、日が暮れる中でトンネルのように射し込む、形象がはっきりする、おかしなことに酩酊状態であればあるほど、物事がよくわかるようだ、用件の入ったクリアファイルをどけて、メモにもならない事を記す、明日が休みだからこそ、落ち着いている今を体現する一週だっただろう。


継続を文章内に書けば、今日の休日は続けている読書を行えていない、昨夜を言い訳にしたいが、そもそもそのような状態に仕上げたことが原因だろう、そういえば別の読書も休みがちだ、気づいた時に改める、それこそ継続だとしたり顔気分。


畳に新聞紙を広げて、バスターミナルで買った太刀魚弁当や昆布の煮付けを広げる、こんなことは特別でしかない、音楽が始まることをそれほど待っていたわけではないのに、こうして構えるのだから、それが明かしているだろう、異国のように、滅多にない鑑賞は、心をおおいに広げている。


雨が降ったり止んだり、そんな一声で外のベンチの雨露を拭いてくれたコーヒー屋の店員は、女性なら大喜びする男前さんだ、さっきまで観ていた韓国映画が頭をよぎり、日本男児よりも韓流男子の方がはるかに格好良いと思ったが、どうもそうではないらしい。


もう夕方、一日が早い気がする、午前をちょっと過ごして、映画を観てハンバーガーを食べたら、もう今だ、明日も休みだからいいけど、これで仮に仕事だったら、おののいてしまう、とはいえこのあとも映画だから、きっと、満足して夜の眠りにつくことだろう。


モーニングが少しだけ広げるよう、読書を捨てての映画鑑賞が休日の導線の方向を変える、地下にあっては臭いは避けられない、背丈のあるアンスリウムは太陽がなくていいのか、コーヒーとモーツァルトで香りは立つが、冬の方が乾いてよいか、いや、ワインセラーのようか。


映画に片寄せて思い出を語ることは、卑劣なやり方かもしれない、とはいえ触媒はまぎれもなく必要だから、事実だろう、一時の夏が呼び起こされて、夢で女性が三人混在する、今、春、そして夏のサンバ、男性は変わらないから安心らしく、いつも魅力の対象は変わっていない。


待ち時間約三十分、案内までの時間も同じ程、それで隙間時間での機種変更は変更になる、まったく来ない所だから、そんな待機時間に面食らってしまう、まるでタピオカのよう、一体何の用事があってそんなに携帯屋に来るのかと、自分の都合だけで出直すことにする。


昔のような三輪操業ではないが、一回のミスでブラックなんてレッテルがつくことを知っているのやら、知らないやら、今は濯がれたと、まるで自動車免許のように取り戻したが、減るべき預金に残高があり、暗雲が湧く、頭は巡るも、はやばやとあきらめて、黒い人間だと自身そのものを自覚する。


茫然自失のような状態で、やはり午後の映画も観に行けばと思っている、そうしなかったからこその空き時間で、それがあるからこのあとの予定も気ままに行えるのに、あらかじめの計画はしつこいものだ、もう済んだことはしかたないのに、どうしてこうも考えてしまうのか。


頭に酸素を与えようとコーヒーを飲み、店内の音楽で落ち着こうと思うも、まるでまな板に対して鍵盤楽器の練習のように、キーではなく、ボードを打っている、似たことをところかまわずの自分だからこその耳は、それを厭い、わざわざ席を移してイヤホンするから、神経質は閉じない限り休まない。

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