僕は押入れの中

印象 秀人

第1話 僕は非リアに思われがちだが毎日楽しいよ

 僕は勝毎(かちまい)りょう 26歳。彼女いない歴、否、彼女いらない歴=年齢。平凡な高校生活はしっかり3年間、帰宅部を経てなんとなく卒業しました。卒業後は高1の頃からやってる養鶏場のアルバイトをしています。


 アルバイトの主な作業内容は、ベルトコンベアに乗って運ばれてくるヒヨコたちをオスとメスに仕分けるかんたんな作業です。かんたんって言っても誰にでもできることじゃありません。

 瞬時にオス・メスを見分ける能力と、掴んで投げる手首のスナップ技術が要求されます。新入りはたいてい、ベルトコンベアのスピードについて来れませんし、手首を痛めてリタイアするのが当たり前の世界です。

『誰でもできるかんたんな仕事』がウリ文句だけど、実際は選ばれし者しか全うできないのです。

 

 そんなヒヨコの仕分け作業を16歳から初めて、今日で10年目。気がつけば古株だ。しばしば『正社員にならないの?』と聞かれるが、正社員になると拘束時間が増えて、アルバイトの方が時給の割りが良い。


 養鶏場のみんなは僕のことを名字で呼ぶが、それはカタカナで、ニックネームっぽい言い方で呼ばれている。広末涼子を『ヒロスエ』と呼ぶ感覚に近いと思う。


 パートのおばちゃんは僕を下の名前で『りょうくん』と呼ぶが、おじさん正社員たちは『カチマイ』と呼ぶ。僕的にはどちらもシックリきている。

 周りは26歳で彼女もいないから勝手に心配しているが、僕は別に恋愛といったものに興味がない。


 さて僕の自己紹介はそんなところにしておいて、世間一般的な非リアの条件をガッツリ満たしている僕だけど、それなりに人生を楽しんでる。そんな物語です。

 

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