その3
昼に出発したので、都市
翌朝の朝食後、遙華以外の三人は研究所で得た情報の検討に入った。遙華を除いたのは命の危機はないものの、安静が必要な状態だったからだ。
メインコンピューターからダウンロードが出来た文献が348件で検索結果を全てダウンロード出来たわけではなかったが、金杉のコンピューターからは彼がまとめた映像と文章、詳細なデータ付きの文献が約600件が圧縮されていたデータが手に入った。とは言え、文献のいくつかを見てみたが、素人のルコにはまるで分からず、専門知識が必要なため、ルコには役に立たないものばかりであった。そこで、途中まで見た映像を見る事となった。ただ、この映像を見たからと言ってこの世界の全てが分かるはずもなかった。
「結局の所、猪人間って人工的に作られたものって考えていいの?」
恵那は映像を見終わって溜息混じりにそう聞いた。嫌な話だし、とても想像ができないでいた。
「そのようね」
ルコは恵那の問いに短くそう答えた。映像を見終わってどっと疲れが出てきた。
「妾にはとても理解し難い事ばかりでしたわ」
瑠璃はいつものおっとりした口調だったが、表情は何とも言えないやり切れなさが滲み出ていた。
「私もどうしてそうなったのかが理解できなかったわ」
ルコはどんよりした気持ちになっていた。
金杉が言うには、原種の猪人間は人工的に作られた可能性が高く、秘密裏に研究が進められているうちに制御不能になり、世界に溢れ出したと言っていた。研究の目的は、屈強な兵士の生産やより高品質な臓器の生産、テクノロジーを使った人類の進化など色々考えられるが、今となっては分からないと言っていた。
いずれにしろ、おぞましい事であり、衝撃的な事であった。
「それで、前の人類が自分達で作った猪人間に滅ぼされてしまったという訳ね。なんか救いようがないわね」
恵那はやれやれと言った感じだった。人間の業の深さに呆れていた。
「そうですわね。どうしてそうなったのかが、やはり理解ができませんでしたわ」
瑠璃はおっとりした口調でそう言うと、溜息をついた。
「まあ、良かれと思ってやった事なんでしょうね」
ルコは少し擁護するような感じで言った。多分滅亡の切っ掛けの一つになるとは思っていなかったのだろうと感じたからだ。
「それにしても、これだけ文明が進んでいたのに不思議ですわね」
瑠璃は腑に落ちないという感じだった。
「まあ、文明の発展により、生物の種としての力は必ずしも強くなるというわけではないようね。実際の所、猪人間が出現する前に人口が減っていているわけだし。前の人類が滅亡した主要因は子孫を残せなくなりつつあったという事じゃないかしら。もしかしたら、それを解決しようとして失敗してしまったのかもね」
ルコは金杉が言っていた事を思い出しながら言っていた。
「それにしても納得できないと言うか、やるせない事よね」
恵那はもどかしそうにそう言った。
「まあ、そうね。文明が進化したからと言って、人そのものも進化できるというわけではないようね」
ルコは恵那のもどかしさに同意した。
「進化と言えば、猪人間は進化のために、妾達を捕まえようとしているのでしょうか?」
瑠璃はルコの言葉を聞いた後に、そう聞いた。
「そうかもしれないわね。人と猪人間の間に子孫が残せるわけだし、それによってよりよい子孫を残そうとしているのかもしれないわね」
ルコはそう言うと、自分の言った事に戦慄を覚えた。
「なんかとっても嫌な話になってきたね」
恵那は率直に今の感想を言った。
「妾もそう思います」
瑠璃も恵那に同意した。
「そうね。これ以上、話し合っても利益があるとは思えないので止めましょう」
ルコがそう言うとここで映像に関する話し合いを打ち切った。
考えさせられる内容ではあったが、現状の打開には何ら寄与するものではなかったので、ルコは内心がっかりしていた。そして、自分達の世界に帰る方法は見つかりっこないのかも知れないと感じていた。
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