その8
建物内に案内されたルコ達は都市の面々に一通りの挨拶が済むと恵那以外の三人は城壁の上にいた。恵那が来なかった理由は言うまでもなかった。
遙華はルコと瑠璃から離れてしばらく風景を眺めていた。
「感謝するのじゃ、みんな……」
遙華は二人の方を振り向いてそう言った。感動的な言葉だったが、すぐに、
「恵那のやつがいないのじゃがな」
とおどけてみせた。
遙華は再び振り返って目の前の風景を見出した。心なしか肩が震えていた。風景は同じでもそこは遙華の住んでいる街ではなかったからだろう。
ルコと瑠璃は遙華の両脇に経って、無言で両脇から肩を抱いて一緒にその風景を見た。
しばらく三人でそうしていたが、
「多分あそこじゃ。吾はあそこに住んでおったのじゃ」
と城壁の外を指差してそう言った。
指を指した場所は、城壁と川向こうの場所だったが、森林地帯で特徴あるものは何もなかった。それが何だか物悲しかった。
「今度、機会があったら行ってみましょう」
ルコは遙華にそう言った。
その言葉に遙華は黙って静かに頷いた。
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