その4
都市
既に日が沈み、辺りが暗闇に包まれようとしていた。
「村20に動きあり、兵が出撃している模様です。方向は北東側と推察されますが、それ以上の事は不明です」
マリー・ベルから急報が持たされていた。
ルコは座席に座りながら前の周辺地図を確かめた。
「ああ、ここに向かったのね……」
ルコは猪人間達が向かったと思われる地点を指差し、呟くように言った。表情は困惑とともに苛立ちが入り混じっていた。
「今回の敵は異常に頭の切れるやつなのじゃ」
遙華はルコが指差した地点を睨みながら忌々しそうに言った。
ルコ達は現在の進路で大きく村を迂回しており、この先の十字路から北進して更に北西方向に転進して回り込むように村を避ける予定だったが、その通り道を塞がれた格好になった。
「突破するにもこちらには余力がありませんね」
瑠璃は珍しく疲れているようだった。
無理もない、2日で3戦戦った後だったので、四人とも疲労の極みにあった。ここで、突破を試みても失敗する確率のほうが高かった。
「いかが致しましょうか?」
マリー・ベルは曲がるはずだった十字路で一旦車を止めた。
「うーん……」
ルコは地図を見ながら決断に迷っていた。しかし、ふと右に目をやると、
「これは何?」
とマリー・ベルに聞いた。
「それは廃都市と呼ばれるものです」
マリー・ベルはルコが指した市街地みたいな地点に関して答えた。
「廃都市?」
「前人類が滅亡する前に人口を集中させるために無人となった都市の事です。市街地は放棄されただけで、破壊はされませんでしたので市街地は残っております」
「建物とかも?」
「はい、仰る通りです。建物自体は現都市に比べて低層ですが、あらかたは残っていると推察されます。ただし、現都市のような都市機能を有していません」
「潜伏は可能?」
「建物内に入るのは難しいと推定されます。ただ建物のように偽装する事は可能です。ただ、これまでのように建物内に潜伏するよりは遙かに発見されやすいと推察されます」
「そう、分かったわ」
ルコは質問を終えると、他の三人の方に向き直って、
「色々問題はありそうだけど、今は私を含めてみんなに休息が必要よ。だから、ここに向かう事にするわよ」
と宣言した。
「それが正しいと思いますわ」
「了解なのじゃ」
「休めるのはうれしいな」
瑠璃・遙華・恵那が口々にそう同意すると、車は十字路を曲がらずに真っすぐ進み、東北東方向にある廃都市へと向かっていった。
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