その2

 妾達三人がスカートを履き終わるのを確認なさったルコ様は、ご自分の上着をお手に取り、

「今度は上着です」

と仰いましたわ。


 何だかとってもルコ様が生き生きなされていましたわ。

 もう緊張は解けたようですわね!


 この上着は手に取ってみれば、確かに上着だと分かりますわ。


 それは、スカートと同じ色の茶色を基本としていて、上着の襟には白で茶色の3本の線が入っており、袖口も白で茶色の3本の線ありましたわ。


「ええっと、これは……」

 ルコ様はそう仰いながらまた何かを探しているようでしたわ。そして、

「このボタン、いえ、留め金を全部外しまて来ます」

と言って、3つある丸い留め金を全て外しましたわ。


 それからルコ様は上着を着て、今度は逆に留め金を全て止めていましたわ。


 妾達三人もルコ様に習って上着を着ましたわ。


 最後にテーブルの上に残ったはかわいらしい結び目がついたものでしたわ。

 ただ、これは明らかに実用性があるものではありませんね。

 恐らく装飾品の類だと思われますわ。


「最後に残ったものはリボンと言います」

 ルコ様はそう仰ると、そのリボンをお手に取りましたわ。


 そのリボンは服の茶色より明るめの茶色でしたわ。そして、何やら白い紐状のものが付いていましたわ。


「これはまず襟をこう立てて、この白い所が伸びるので首に掛けながら伸ばして留め金を留めて、襟を戻します」

 ルコ様はそう仰りながらリボンを付けて見せてくれましたわ。


 そのご様子を手本に、妾達三人もリボンを付けたましたわ。


「これ、可愛いわね」

 恵那様はリボンを触りながらそう仰いましたわ。


「そうですね。これを付けると、服装が一層映えるような感じがしましわ」

 妾はなんだか嬉しくなってきましたわ。


「そうじゃな」

 遙華様は妾の意見に同意して下さりました。


「最後は履き物ね。これは靴と言います」

 ルコ様はテーブルの下にある茶色の長い靴を取り出しましたわ。

 これも不思議な形をしていますわね。


「これは紐を緩めて、履いて、紐で絞めて結びます」

 ルコ様はそう仰りながら右足、左足と長い靴を履いてみせてくれました。


 妾達三人もルコ様の真似をして靴を無事履きましたわ。

 ただ、妾は遙華様と恵那様と違って少し苦戦しましたわ。このような形の履き物は初めてでしたから。


「これで完成よ」

 ルコ様はやれやれと言った感じで大きく溜息をお付きになっておられましたわ。


 仕方がありませんわ。慣れない妾達のお気遣いで大変でしたもの。

 でも、ルコ様のお陰で無事妾を含めた皆様がちゃんと服を着る事ができましたわ。


「姿見で見てみない」

 恵那様はそう仰ると、ルコ様の前を通って一番に鏡の前にお立ちになりましたわ。

 それに妾と遙華様も続きましたわ。


「うぁ、これ可愛い!」

 恵那様は鏡を見ながら満足そうにそう仰っていましたわ。


「そうじゃの、可愛いのじゃ、吾」

 恵那様と入れ替わった遙華様も嬉しそうに仰っていましたわ。


「ええ、とっても可愛いですわね」

 妾もお二人に負けずにかわいく着れたので嬉しかったですわ。


「しかし、この腰巻きはなんの意味があるのじゃ?」

 遙華様はそう仰るとスカートをたくし上げましたわ。


「そうね、短すぎるしね」

 恵那様もそう同意なされながら同じくスカートをたくし上げましたわ。


 スカートの中から二人の白い下履きが丸見え状態になりましたわ。


「そんなはしたない真似はよしなさい」

 ルコ様は慌ててお二人に注意なさいましたわ。


「何がはしたないのじゃ?」

 遙華様はルコ様の言っている意味が分かりませんでしたわ。


 当然、恵那様も妾もよく分かりませんでしたわ。


「スカートを捲って自らパンツを見せる事よ」


「すかぁと?ぱんつ?」

 遙華様は首を傾げながら仰いましたわ。


「えっと、確か腰巻きと下穿きの事じゃなかったかしら?」

 恵那様は思い出すように仰っていましたわ。


「はあ、ぱんつを見せる事ははしたない事なのか?」

 遙華様は真面目な顔をして仰いましたわ。


「そう、はしたない事なの!」

 ルコ様はちょっと上ずった声になっていましたわ。


「うーん……」

 恵那様は唸るような声をお上げになってから、鏡に映っているご自分を見ながら、

「そう言われてみると、なんか、こう、いやらしい感じがするわね」

と仰ると、スカートをたくし上げるのを止めましたわ。


「そうかもしれんなのじゃ……」

 遙華様も鏡に映っているご自分の姿を見て少し恥ずかしくなったのか、スカートをたくし上げるのを止めましたわ。


 確かに下履きが見えてしまうのはとてもはしたなく見える行為でしたわね。

 妾はやらないで良かったと思いますわ。


「でも、こんなに短いとすぐに見えてしまいそうですけど、どういった意味があるのでしょうか?」

 妾はスカートの裾を見ながら真面目にそう聞いてみましたわ。


 四人のスカートの丈はちょうど裾が膝に掛かる程度でしたわ。

 見えないようにするにはもっと長い方がいいのではないかと思いましたわ。


「そうじゃな、短いと見えてしまうのじゃ」

 遙華様は妾に同意しましたわ。


「えっと、それはそのぉ、見えないように動くとか、スカートの裾を押さえるとか、そのぉ、なんと言いますか……」

 ルコ様はしどろもどろになっていましたわ。


 ルコ様にもその意味がお分かりにならないのでしょうか?


「歩きやすくするためじゃない?長すぎると歩きにくいし」

 恵那様は閃いたようにそう仰いましたわ。


「成る程ですわね。妾の世界では、上下一体ですが、足元まで布がありますので、とても歩きづらい服装がありますわ」

 妾は恵那様の意見に納得しましたわ。


「確かにこの長さがちょうどいいのやもしれんのじゃ」

 遙華様も納得したようでしたわ。


「でも、何でみんな同じ格好なのかしら?なんか意味があるのかな?」

 今度は違う観点から恵那は不思議そうな顔をなさっていましたわ。


「ああ、これって、学校の制服なのよ」

 ルコはそう答えになりましたわ。


「学校?制服?」

 恵那様はそう聞いてきましたわ。


「えっと、学校は子供を集めて勉強するところで、制服は皆が学校に着ていくものよ」

 ルコ様はそう答えになりましたわ。


「寺子屋の事ね」

 恵那はそう仰いましたわ。


「吾の世界では、村塾と言うのじゃ」

 遙華はそう仰いましたわ。


「妾の世界では、そういうものはありませんわね」

 妾はそう言いましたわ。


 妾達四人の世界は大きく異なるものなのですね。

 ただ子供達に勉強する場を与えるというのは良い考えかもしれませんね。

 これは見習うべきかもしれません。


 以上、色んなやり取りがありましたが、着替えを通してとても仲良くなった気が致しますわ。これも親切に教えてくれたルコ様のお陰ですわね。

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