その2

「ルコ、湯浴みのやり方教えてくれる?」

 あたしは改めてルコに頼み込んでみたの。


 だって、助けてくれないとあたし死んじゃうかもしれないもの。


「分かったわ。ちょっと待っててね」

 ルコは何だか諦めたような表情をしてと溜息混じりに承諾してくれたの。


 ルコは一旦脱衣場に戻り、髪の毛をまとめると、なんか帽子みたいなものをを被っていたの。そして、もう一つ同じものを手に取ると戻ってきたの。

 ルコの様子を食い入る様に見ていた遙華と瑠璃の目の前で、湯浴み室の扉をガラガラと閉めたの。遙華と瑠璃は閉め出したのではなく、開けっ放しにしておくと、脱衣場が大惨事になってしまうので閉めただけだったみたいなの。


「さてと……」

 ルコは濡れ鼠のあたしを見て、上手い方法を思案しようとしたが、すぐにいい案は浮かばないと思ったらしく、

「髪の毛をまとめましょうか」

と普通の手順でやる事としたらしいの。


「うん、わかった」

 あたしはそう言うと、濡れた髪をまとめようとしたの。


「後ろ向いてくれる。手伝うから」

 ルコはあたしに後ろを向かせると、濡れた髪を軽く絞りながらまとめるのを手伝ってくれたの。そして、後ろから帽子を被せてくれた。


「今度からここに入る前に髪をまとめてね」

「うん、分かった」

 あたしは素直にルコの言う事を聞いたのよ。


 ルコはふわふわゆるゆるなものを手に取ると、液体石けんを垂らして泡立てたの。そして、

「はい、これで体洗って」

と言って、ルコはそう言うと泡立てたものをあたしに渡してきたの。

 あたしはそれを受けてると前から洗い始めたの。


 ルコはあたしが洗っている姿をしばらくじっと見守ってくれたの、何故か食い入るように。


「ルコ、背中がうまく洗えないよぉ」

 あたしが甘えるようにルコにそう言うと、

「はいはい」

と言って、あたしから泡々を受け取り、ごく自然にあたしの背中を洗い始めてくれたの。


 あたしはなんだか気持ちよくてうっとりしてしまったの。

 ただ何故かルコも洗いながらうっとりしていたの。


「なんかとっても気持ちいい」

 あたしはルコに背中を洗われながら素直にそう言ったの。


「はい、終わり」

 ルコは一通り背中を洗い終わると泡々をあたしに渡してきたの。


「ええ、なんで」

 あたしは不満だったの。これからだって感じだったし。


「なんでも何も洗い終わったからよ」

「でもぉ」

「でもじゃなくて、後がつかえているんだから、早くしなさいよ」

「ちぇ、分かったわよ」

 あたしは不満だったけど、言われたとおりに下半身を洗い始めたの。


 でも、本当に気持ちよかった。

 背中を流してもらうのは癖になりそうね。


「はい、洗い終わったなら泡を流して」

 ルコはあたしにそう言って、長い管を外してあたしに渡したの。あたしはつまみをゆっくりと回してお湯を出して泡を流し始めたの。


「これも気持ちいいね」

 あたしは嬉しそうに言ったの。


 うまく使えるととてもいいのものね、これは。

 すごくとても気に入ったわ!


「はい、流し終わったらお湯を止めて。今度は髪を洗うわよ」

 ルコは優しくあたしに言ったの。


「うん、分かった」

 あたしは素直にそう言うと、お湯を止めて長い管を元の場所に戻したのよ。


「それでは今から髪の毛を洗います。まず、この帽子を外して、お湯で髪を濡らします。そして、髪用の石鹸で泡立てながら洗います」

 ルコはお姉さんぶってそう説明したの。


「ルコ、まりぃもそう言ってたけど、うまくできなかったのよぉ」

 あたしはルコの方を振り向いて泣きそうに言ったの。ちょっと不安だったのよ。


「ええ、じゃあ、一から順番にいきましょうね。まずは帽子を外して、髪を濡らしてみて」

 ルコのそう言われたあたしは恐る恐る帽子を外して台に置き、お湯で髪を濡らしたの。


「はい、じゃあ、次、髪用の石鹸を手に取って下さい」

 ルコは次に優しくそう言ってきたの。

 あたしはまだ不安だったけど言われたとおり石鹸を手に取ったの。


「はい、それを髪に塗り、両手でゴシゴシして泡立てて髪を洗って下さい」

「目に染みない?」

 あたしは明らかに先程の大惨事を思い出していたよ。


「えっと、洗う時は目をぎゅっと閉じてね」

「うん、分かった」

 あたしは意を決して目をガッチリ閉じると髪を洗い始めたの。だけど、すぐに、

「これ、うまく洗えているの?」

と言ったのよ。だって、うまく洗えていないのだもの。


 さっきよりだいぶましだけど、なんか、これは気持ちよくない……。


 ルコはしばらくあたしの洗いっぷりを見ていたけど、

「はい、じゃあ、ちょっと手伝います」

と言って、一緒に髪を洗い始めてくれたの。


「お客様、かゆいところはございませんか?」

 ルコはあたしの髪を洗いながらなんか変な事を言ってきたの。


「え?何それ?」

「ああ、これ、私の世界の定番のセリフ」

「何、それ」

 あたしはちょっと笑ってから、

「でも、こうやって髪を洗うのもいいものね」

と言ったの。


 だって、ルコに洗ってもらうと、とっても気持ちいいわ!


「はい。それじゃあ、流します」

 ルコはそう言うと、お湯を出して石鹸を洗い流してくれたのよ。


「もう、目、開けて大丈夫?」

「大丈夫よ」

 ルコにそう言われてあたしは恐る恐る目を開けたの。


「さて、次は仕上げ剤を髪に塗り込みます」

 ルコはそう言うと仕上げ剤を手に取り、あたしの髪に塗り込んでくれたの。

 これ塗ると、髪がさらさらになるんだって。なんかうれしい。


「はい、余分な仕上げ剤を流しますので、目を閉じて下さい」

 ルコはそう言うと、あたしはまた目をぎゅっと閉じたの。

 そして、ルコはお湯を出してゆっくりと流してくれたの。


「はい、これで終了ね」

 ルコはそう言うと、お湯を止めて長い管を元に戻してくれたの。


「ありがとう、ルコ。とっても気持ちよかったわ」

 あたしはとびっきりの笑顔でそう言ったの。


「はい、じゃあ、脱衣場に大きな手拭いがあるからそれで、髪と体をよく拭いてね」

 ルコはそう言いながら湯浴み室の扉を開けてくれたの。


「うん、分かった」

 あたしはそう言って湯浴み室を出ていったの。


 こうして、あたしは湯浴みの時にはいつもルコに手伝ってもらう事にしたの。

 遙華と瑠璃も同じくルコに湯浴みを手伝ってもらっているみたい。

 ルコって、とっても頼りになる。お姉さんみたい。

 ルコって、優しい!とっても大好き!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る