真幌のソフト!!

九条晴彪

第1話 高校生

「あんたなんていなくなればよかったんだ!!」

その一言で私の歩みは止まってしまう。怖い、憎い、悲しい、さみしい。様々な感情があふれ出て止まらなくなってしまう。

人は何故体を動かすのかと中学生の女の子に質問された事がある。その子は様々な所に痣や傷ができていた。

「それはね、人が生きていく中で必要な物だからだよ」

私は模範的な解答をした。大人が答える様な答え。子供には分からないままにする魔法の言葉。


――

入学式が終わり、私は高校生になった。無難で浮かないように気をつけなければならない。

「じゃあ真幌。母さん真梨達を迎えに行ってくるから。まっすぐ帰って来いよー!」

「分かってるよ」

真梨とは私の姉だ。プロのテニス選手で世界の人達と戦っている。私には兄もいて名を真澄という。こっちもNBAの選手だ。NBAとは日本のプロバスケ選手ということだ。

私は中学からとても遠く、私が通っていた中学の人間が通っていない高校に入学した。理由は様々あるがその原因は全てソフトボールのせいだ。

「じゃあ、クラス表見たら教室に入ってねー」

えっと、私のクラスは……A組か。

クラスに向かった。そして黒板に名前順の紙が貼ってある。私は窓側の一番後ろだった。

静かに座ると、いきなり大きな声で前にいた人が立ちあがり、私の顔を見た。

「もしかして、いや、もしかしなくとも、球谷真幌たまやまほろさん!?」

「え、うん。そうだけど。ていうか、名前書いてあるし……」

「あ!ごめんね!!そうじゃなくて、北野尾中のソフト部でピッチャーだったでしょ!?一年生の時から!!」

嘘……。なんでこの人それを知っているの。ここはソフト部ないからソフト関連の人はいないと思っていたのに。

「ひ、人違いじゃないの?私はソフトなんてしてない」

「えー!そんなことないよ!私、人の顔だけはしっかり覚えてるんだ!!」

知らないし、そんなん聞いてないから。もうお願いだから黙ってよ。

「でも、まだ続けてるって思ってたけど。なんで稲郷高校とか行かなかったの?」

なんなのこの人。いきなり話しかけて来たと思えばソフトの話ばっかり……。私はもうソフトなんてしないのに。

「ソフトの強豪だし!!推薦来てたんでしょ?ここ受験しなくてもよかったんじゃない??それに……」

「うるさい!!」

私は思いっきり机を叩き立ち上がった。多分教室の中で一番注目を受けていたんだと思うが、その時はそんなの気にしていなかった。

「うるさいんだよ。私がどこの高校行ったっていいでしょ?ソフト続けなくてもあなたには関係ないよね。私のいる前で二度とソフトの話しないで。聞いてるこっちが不快だから」

私は名前を知らない女の子を怒鳴り付けた。そして視線を交わさず、私は教室を出た。

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真幌のソフト!! 九条晴彪 @harutora_suki

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