295.湯之沢城防衛戦 2
第一海兵歩兵大隊が撤退を始めたその頃、湯之沢城内の二の丸ではレナ大佐とミセア大佐、さらに海軍特殊部隊チーム4の指揮官のエイノルド大佐の面々は緊急対策会議を開いていた。
「レナ大佐、ここは一旦湯之沢城に全兵力を集約して籠城すべきです!」
「ミセア大佐、それでは敵の思うつぼだと思わない?エイノルド大佐はどう思う?」
「私もミセア大佐の言う通り、ここは一旦籠城し、そして本隊の来援を待つべきと考えます」
かなりの犠牲が出てしまい本隊とも通信が取れない以上、下手に動かず籠城して耐えるしかないとエルノイド大佐とミセア大佐は言う。
「たとえそれが最善だとしても、どうやって連絡を取るつもりなの?」
「それなら、我がチームから優秀な隊員たちに向かってもらいます、その方が確実かと」
エルノイド大佐が言うのはチーム4の隊員を徒歩で大和まで送り込み、直接本隊に伝言を頼もうというものだ。
通信状態が回復しない今ではこれが最も早く、そして確実な方法だ。
「わかったわ、その作戦はエイノルド大佐に任せていいかしら?」
「はい、お任せください」
「それと、もう一つ」
「何?まだ何かあるの」
「ええ、というのは、表門で待機しているだけの車両を大回りさせて敵の背後から強襲させるという案なのですが……、如何でしょう?」
今のところ一切被害を受けていない、表門の部隊を何とか山越えさせて裏門側に来てもらおうというものだ。
こうすることで、味方歩兵への直接火力支援が可能となる。
「そうね、その案はとてもいい案だわ、でもそうなるといざ敵が表門側から攻めて来た場合はどうするの?」
「それは……」
「会議中失礼いたします、連隊長報告がございます」
会議が侵攻する中、突然二の丸にボブ中尉がやって来た。
「ボブ中尉、どうしたの?」
「はっ!本部との通信状況の件ですが、調査の結果敵の電波妨害の可能性が濃厚という結論に至りました」
「それは敵がジャミング装置でも持っているということなの?」
「いえ、そこまでははっきりとしておりません」
「ではなぜその結論に至ったのかしら?」
「まず、調べている最中の出来事で無線通信は出来ないが野戦電話は使えるということがありました、そしてその野戦電話を使って我が通信隊の中継基地にかけたところ通信機器自体は正常に動いているということがわかりました、このことから電波妨害のようなものを受けているという結論に至ったわけです」
「なるほど、ただ、どういったかたちで妨害されているかまではわかっていないのかな?」
「エルノイド大佐のおっしゃる通り、そちらの調査はまだ行っていません」
「中尉、すぐにその妨害元の特定をしてもらえるかしら?」
「はっ!直ちに」
報告を終わると一礼しすぐにボブ中尉は元の場所へと戻っていった。
「失礼します!」
ボブ中尉が部屋から出ていってすぐ、今度はミスティア隊の女性隊員が息を切らして部屋に飛び込んできた。
「何事?」
話が何度も中断され少し不機嫌気味のミセア大佐はその女性隊員を軽くにらみつける。
「報告!表門に向かってくる敵が急接近中!同時に第一海兵大隊が再び敵の奇襲を受けている模様!」
「了解、すぐに迎撃させて」
「はっ!失礼します」
「敵がここを攻めて来た以上ここを死守するしかないようね」
「そのようですね」
「我々も配置につきますか」
「当面の間、連絡手段は全て野戦電話でいたしましょう」
「そうね、全ては陛下の為に!」
「「全ては陛下の為に!」」
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